5-1EX

 学生の朝は早い。

 起きて、朝食を作って、食べて、顔を洗って、目覚ましにドラテで何回か対戦して(ここら辺でお姉ちゃんはいつも家を出る)、学校に行く準備をして、着替えて、出発。

 朝のタイムライン細かすぎ。

 そんな所で本日。

「この前の朝ご飯で酷い目に遭ったんだからね」

 文句を言いながらお姉ちゃんは私の作った朝ご飯、レンチン目玉焼きとインスタント味噌汁、を食べる。

「あの時は私も大変だったからおあいこだって」

 普段から早食いなお姉ちゃんは今日も私より先に食べ終わって、顔を洗いに行く。

 私はいつも通りゆっくり食べながらドラテを起動した。

 なんとなくローテーションのカードたちを眺めるのが日課で、こうしてると思いがけないコンボとか活用方法が見つかる事がたまーにあるんだよね。

「早く食べないと遅刻するわよ」

 お母さんみたいな事を言うお姉ちゃんはすっかり着替えも終えて、家を出る体勢。

「こんな時間にそれ言うのお姉ちゃんくらいだよ」

 今日は特に早いみたいで、私が顔を洗っている間にそそくさと出て行った。

 本当にお姉ちゃんは学校が大好きなんだから。

 時間的にはまだまだ余裕がある。

 二回くらいランクマッチできるかな?

 そう思って、ドラテを起動した。


 二連勝♪

 今日はツイてるかも。

 朝の占い代わりのドラテも終わったし、私もそろそろ学校に行く準備をしないと。

 リビングから部屋に移動して、時間割を見ながら教科書を鞄に詰めていく。

 ふと、お姉ちゃんの机を見る。

 驚くほど綺麗に整頓されているお姉ちゃんの机の上には、なぜか一冊のファイルが無造作に置かれていた。

 らしくないなぁ。

 黒いファイルを手に取って、そのタイトルを見る。

 生徒会長としてのお姉ちゃんについて詳しくは知らないけど、たぶん必要そうなものだと判断した。

「もう、お姉ちゃんったら」

 普段滅多に言う機会のないセリフを呟いて、ファイルを鞄の中に突っ込む。

 

 お姉ちゃんが忘れ物なんて本当に珍しい。

 学校でのお姉ちゃんの評価はだいたい予想できるし、実際、その評価に違わない人だと思う。

 学校の人たちが想像しないような趣味があることも一応知ってるけど、それも含めて私はお姉ちゃんらしいと思うし、そんなお姉ちゃんを尊敬している。

 まぁ、面と向かっては絶対に言わないけどね。

 それで、今日の忘れ物についてだけど……ま、いっか、取り敢えず持って行ってあげようっと。

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