2-EX

 武藤雪子はいつも通り門を潜り、庭を歩く。

 何気なく右手に視線を送ると、見事な枯山水とそれを整備する数人の「お弟子さん」たちが目に入った。

 雪子に気付いた「お弟子さん」たちは手を止めて会釈をする。それに雪子も返した。

 その光景は彼女の金髪碧眼美女という外見も相まって、特異なものに見えるかも知れない。

 しかし、雪子にとってはごく日常の光景であった。

 広い庭を通り抜け、ようやく玄関へと辿り着く。

 これまた広い土間で靴を脱ぐと、直ぐに家政婦が出迎えに来た。

「お帰りなさい」

「ただいま」

 彼女は雪子が幼少の頃よりこの家に来ている。

 毎日真っ白に洗い上げられた割烹着には僅かに水の跡が付いていた。

「お手伝い、ある?」

 雪子が聞くと彼女は嬉しそうな微笑みを向ける。

「もちろんありますよ」

 この時間、夕餉の準備は終盤に入り、程なく配膳がはじまる。

 住み込みで働く「お弟子さん」たちを含め二十名弱の料理を毎食用意するので配膳だけでもなかなかの仕事となる。

 猫の手も借りたいような忙しさの中、雪子は小学校に上がる前からその手伝いをしていた事もあり、料理の腕はなかなかのものだ。

 長い廊下を歩きながら、家政婦は今日の出来事を話す。

「今日はいい筍を貰いましたので、大奥様が筍ご飯にしましょうと言うことで炊いたんですよ」

 それに対して雪子は言葉少なに相槌を打った。

 この家でいつも流れる光景が過ぎる。

「ところで、なにかいいことでもありましたか?」

 ふと、家政婦がいつもはしない質問をした。

 彼女の言葉に雪子は少し考えるような顔をして、頷く。

「変な、部活に入ったの」

「あら、どんな部活かしら?」

 なんと説明していいか、迷うように雪子ははにかんだ。

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