5-2EX
「あの」
私は勇気を出して、そう声をかけた。
話す事ってあんまり得意じゃない。
「先輩も、ウェザーズ、好きなんですか?」
でも、こんな私でもみんなの役に立てる可能性があるから。
「ええ、もしかして、あなたも?」
私はゲームも詳しくないし、話しも上手くないし、友達も少ない。
「はい。先輩、机にペン飾って、ますよね」
こんな見た目なのに英語も話せないし、得意な事もない。
「よく気付いたわね。あれ置いてからしばらく立つけれど、気付いたのはあなただけだわ」
だから、少しでも舞草先輩と仲良くなって、情報をもらいたい。
「サニーとレインです、よね?」
「ええ」
先輩はなんだか嬉しそうに見えた。
私も、ウェザーズを知ってる人がいて嬉しいから、きっと先輩もそうなんだと思う。
「私は、クラウドが好き、なん、です」
教室から持ってきてた筆箱を開けて、ペンを先輩に見せる。
お兄ちゃんが買ってきてくれたペン。
先輩はペンをじっくり見る。
なんだか、緊張する。
先輩があんまりクラウドを好きじゃなかったらどうしよう。
先輩が好きなサニーとあんまり仲良くないし、嫌いかも。
心配してると、先輩の視線に気付く。
「クラウドと?」
先輩は私の筆箱を見てた。
他のペンが出てくるのを待ってるんだ。
先輩はペンを二本持ってたし、それが普通なのかもしれない。
急に恥ずかしくなる。
ウェザーズ好きだけど、何回か最後までやっただけだし、ペンだってお兄ちゃんが買ってきてくれただけだし、乃愛ちゃんとかねみい君みたいに本当にゲームに詳しい人たちが知ってるルールがあるのかもしれない。
きっと、そういうのを知らないと、好きとか言っちゃいけなかったんだ。
「えっと、クラウド、だけ、です」
話しかけなければよかったと、思う。
いつもこう。
私が話しかけると変な感じになる。
先輩と仲良くもなれないし、やっぱり私は役に立たない。
「クラウド、いいわね」
先輩の声がした。
「寡黙で格好いいわよね」
「あ、はい」
そう言う先輩は微笑んでいた。
間違えてなかった?
「あ、あの、サニーとレインも格好いいですよね」
先輩は小さく笑って頷く。
「ありがとう」
話してもいいのかな?
「私、サニーのお話好きです」
「サニールートは熱いものね」
はじめて他の人とウェザーズの話ができた。
先輩とも少し仲良くなれた気がする。
でも、情報はなんにも手に入らなかった。
私が先輩と話をしているだけの間に、乃愛ちゃんとねみい君は頑張ってて、どんどん話が進んで行った。
予鈴に急かされて生徒会室を出るとき、なんとなく振り返って、後ろを見る。
先輩と目が合った。
会釈をすると、先輩は少し寂しそうに私に手を振ってくれた。
クラウドとサニーはあんまり仲良くない。
レインとクラウドなら仲が良いのに。
先輩はどっちの方が好きだったんだろう?
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