5-10 長いので表記はRWGとなります
「さて、リアルワールドゲーム部を認可するかですが」
僅かな静寂、この間も生徒会長の人となりを知ってからは態とやっているのだとしか思えない。
それでも、緊張するのは確かだった。
「月曜日、あなた方は私に今週中に成果を出すと言いました。部活動として認められる程の成果を」
そう、その成果を求めて、俺たちは奔走したのだ。
「サッカー部新入部員名簿紛失事件、敢えてこう呼びますが、その解決は確かに一つの成果と呼ぶことができるでしょう」
「では、部として認めてくれるのだな」
乃愛が食い気味に言う。
それに対し、生徒会長は首を振った。
「これだけでは部活動として認めるには値しません」
「なっ!?」
絶望的な言葉に、乃愛は絶句する。
「なぜだ」
「私が紛失した名簿を見付ける程度の事は態々部活動として動かなくても、私という人間を知っていれば可能な事です」
例えば、初めから真相の大半に気付いていた椎名副会長のように。
「しかしっ」
なにか言いたげな乃愛だが、それに続く言葉が出てこないらしい。
「サッカー部新入部員名簿紛失事件を唯一の成果として計上するなら、です」
そんな乃愛に助け船を出すように、生徒会長が言った。
「あなた方がこの一週間でした活動はそれだけですか?」
生徒会長は厄介と言うより、面倒な人なのかもしれない。
「いや、違うぞ」
一瞬で元気を取り戻した乃愛は意気揚々と顔を上げた。
「先ず、椎名副会長からの依頼で新入部員名簿の回収を行った」
火曜日、全ての始まりだ。
「その過程で、我々の部活動としての活動を剣道部、柔道部、サッカー部、ゲーム部に周知させる事もできた」
まぁ、最初は驚いたが、今となっては差して驚くほどの事でもなかった。
そう言えば、木戸と話したのもこの日だったな。
「次いで、紛失事件への初動協力。結果として東雲生徒会書記の介入により未達成となる」
水曜日、色々と大変な日だった。
「東雲生徒会書記の偽造を暴き、更に放送部のTRPGセッションに協力、放送を通してリアルワールドゲーム部の名を全校生徒に届かせた」
「あの放送には驚きました。琉依から事情を聞いて呆れましたが」
木曜日、椎名副会長に振り回された日だ。
「そして、今日、我々は真相に辿り着き、木乃羽を打ち破ってファイルを入手した」
今日、金曜日、久し振りのドラテは悪くなかった。
「この一週間で我々はクエストを達成するのと並行して、リアルワールドゲーム部の存在周知に努め、今後活動するに当たっての土台を築くことに成功した」
自信に満ちた表情で乃愛は俺たちを振り返る。
「先程、舞草生徒会長は今回の事件の解決が部活動でなく、親しい個人でも可能だと言ったな」
「ええ、言いました」
「我々はリアルワールドゲーム部として、全ての生徒の親しい個人になると宣言しよう。我々は主人公的プレイングであらゆる問題に首を突っ込み、親しい個人でも解決可能な問題を、部活動として解決していく」
堂々と、乃愛は宣言する。
「まあ、いいでしょう」
対する生徒会長は表情を崩した。
「今後に期待するという意味を込めて、リアルワールドゲーム部を部活動として認めます。私がこれまでに認可した部活はあなた方だけなので、その意味も忘れないで下さい」
「よっしゃー」
乃愛が右手を掲げ、飛び跳ねる。
「よかった」
終始息を呑んで見守っていた雪子も嬉しそうに頷いた。
俺はと言うと、いつかの時みたいに小さく拳を握り締める。
これがゲームならメインクエスト達成の文字が画面一杯に表示されていた事だろう。
さあ、主人公に戻る時だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます