1-EX
アパートに帰り着いた彼女は玄関を開け「ただいま」と言ってから靴を脱ぐ。
狭い玄関から洗面所に向かい、手洗いうがいを済ませた後、荷物を持って短い廊下を抜けて、ドアを開ける。
「あっ、お姉ちゃんお帰り。今日も遅かったね」
二人暮らしには少し狭い1DK、居間では既に風呂から上がって寝間着に着替えた妹がくつろいでいた。
「ただいま」
ソファーに仰向けで寝転がり、スマートフォンから視線を外さない妹を一瞥し、彼女は荷物を置く。
「大変だね、生徒会長」
その声に彼女が振り返ると、ゲームをスマホを置いた妹が身体を起こし見ていた。
「この時期はどうしてもね」
意図せず彼女は小さなため息を吐く。
「今日も変な子たちが来て大変だったわ、新しい部活を作りたいって」
「どんなの?」
「確か、リアルワールドゲーム部って、現実をゲームみたいにするとか、よくわからないこと言ってたわね」
「へぇ、ゲーム好きな人たちだったんだ。それならゲーム部に入ればいいのに」
「木乃羽が勧誘してくれると助かるわ、結局よくわからない理屈で押し通されちゃったし」
「お姉ちゃんが言い負かされるって相当だね」
「本当に変な子たちだったわ、でも」
そこでふと彼女は首を捻る。
「でも?」
「一人男子が居てね、その子はどこかで見たような記憶があるのよね」
「知り合い?」
「って程でもないと思うけど、ねみい君だったかしら、あれはあだ名だったのかもしれないわね」
「ねみい?」
妹が無意識にスマホに目を落とした。
「まぁ、ともかく疲れたからお風呂に入ってくるわ」
「いってらっしゃーい」
妹の声に送られて彼女は部屋のドアに手をかける。
「それはそうと、ゲームもいいけど勉強もしなさいよ」
去り際にそう残し、彼女は部屋を後にする。
「はーい」
再び仰向けに寝転んだ妹はゲームを起動させながら気のない返事をした。
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