第12話 試験終了

 クヤとセミスによる激しい戦いが終わった後、他の挑戦者はいないと皆思いましたが少しずつ増え最終的には50人近くが挑戦しました。挑戦しようと決めたものたちは自分の実力が足りないとわかりながらも勇敢にセミスへ立ち向かっていきました。残念ながら誰一人としてセミスに一撃をお見舞いすることはできませんでした。しかし、その勇気を認められ挑戦したものは皆、合格となりました。

「そこまで!!」

 ホークの大きな声が訓練場に響きました。試験終了の合図です。今回の試験では最終的に合格したのは53人でした。セミスへ立ち向かうことができれば合格のようです。

「今回の試験の合格者は53人だ! 今回合格できず、まだ騎士団に入りたいものは一年間自分を見つめなおせ! 何を持っていなくてセミスに立ち向かうことができなかったのかを。以上。解散!」

 解散の合図を聞き不合格となった参加者たちは、入ってきた門を次々とくぐっていきます。試験が始まる前の自信のある話し声はどこからも聞こえてきません。皆静かに門をくぐり士官学校を後にします。

「今年は少ないなぁ。参加者自体は多かったのに」

 セミスが運動後のストレッチをしながらつぶやきます。

 それを聞いてホークが残念そうに言います。

「仕方ないな、最初の二戦を見て挑戦しようと思うやつはなかなかいないよな」

 言葉の最後には大きなため息が付きます。


 不合格者となったものが訓練場から出て行った後、合格した53人は改めて訓練場に集められました。再びホークが前に立ちます。

「まず、試験合格おめでとう。お前たちはこれから三ヶ月間の訓練になる。厳しい訓練になると思うがついてこい。そして、三ヶ月後もう一度セミスと戦ってもらう。そこで何か成長することができていれば騎士団への入団を許可することとなる」

 三ヶ月後もう一度セミスとの決闘。それを聞いて嬉しそうな顔をするものもいれば、嫌な顔をするものもいました。当然です、誰もあんなに辛いことはやりたくありません。セミスが一番嫌そうな顔をしています。

 今、嬉しそうな顔をしているのはよほどセミスに恨みがあるか、一方的にやられるのが好きな特殊な人かのどちらかでしょう。

「早速、お前たちの歓迎の夕食と行きたいところだが。まずは風呂に入ってこい」

 訓練兵として認められた53人の少年少女は大浴槽に案内されます。騎士団が使う大浴場はかなり大きく、スラムに住んでいたものは衝撃的な光景でした。

「うわぁ」

 ルルがぽかーんと広い大浴場を見渡しています。中には誰もいない一人だけの風呂。もちろん男女別なので女風呂に案内されたルルですが、今回の試験合格者のなかに女性はいませんでした。一人巨大な風呂に案内されてしまったルルですが特に不満はないようです。むしろ独り占めできて嬉しいようです。

 一方、男組はというと先ほどの戦いの話で持ちきりのようです。特にアート、ダット、マール、クヤの四人は質問責めです。

「なんであんなに強いんだ?」

「あの魔術はなんなんだ?」

「本当に人間か?」

「あの竜、かっこよかった!」

 質問が止まりません。四人は湯船に浸かりながら質問に答えられるだけ答えていきます。すると、大盛り上がりの男湯の扉が急に開きました。

「俺も混ぜろぉぉ!!」

 今日一番の活躍を見せたセミスが入ってきました。彼には上下関係という概念が存在しないようです。風呂場を走って湯船に飛び込んできます。大きな水しぶきを立てて着水しました。

「「「うぉぉぉぉ!!!」」」

 男風呂はお祭り騒ぎ。なぜ風呂に入るだけでこんなにも騒げるのかわかりませんが、男とはこういう生き物なのです。

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