第5話 悪友

「おい! ルル! アート!」

 ルルとアートはスラム街を歩いていました。先ほドルとの話し合いの後少し気まずい雰囲気になり家を出てスラム街を二人で散歩中です。そんな時二人は聞き覚えのある声に話しかけられました。

「今朝のあの騒ぎ、お前らのせいなんだろ? あれのせいで市場に盗みに行きにくいじゃねーか」

 今声をかけてきたのがダット。ドワーフの少年で背丈はルルやアートよりも低いのですが、態度だけは誰よりも大きい男です。スラム街に住むルルとアートの数少ない友人で悪ガキです。ルルとアートも今朝のように食べ物を盗んだりしますが、こいつはさらにひどいです。人のものまで盗み、金になりそうなものは全て売り捌く。そんなやつです。

 そして、もう一人。

「本当に、どうやったらあんなに騒ぎを大きくできるんですかね?」

 こちらの、頭が良さそうな話し方をしてきたのがマール。ウィッチと言われるとても珍しい種族。種族としては人間とほぼ一緒なのですが、過去に魔術の才能がある人間が集まり生活していた集落があり、そこの子孫がウィッチと呼ばれています。ダットと合わせてスラム街悪ガキ二人組です。ルルとアートも合わせるとスラム街問題児四人組。不名誉なレッテルが貼られています。

「知らないわよ、あっちが勝手に魔術まで使ってきただけ」

「魔術!?」

「そうよ、びっくりしたわよ。まったく」

 普段スラム街の悪ガキを懲らしめるためだけに魔術を使うことなどあり得ないのでみんな驚きです。それほど、ルルたちが問題視されているのかただ単に追うのがおっくうだったのか。真実はあの二人しかわかりません。

「そうだ! そんなことより私たち騎士団の入団試験を受けることにしたわ」

 ルルにとって街中で魔術を使われたことはその程度の扱いです。

「本当か!? 俺も受けようかな。 マールはどうする?」

「僕はどちらでもいいですが、あなたたちのいつも追われている騎士団に入ろうとする度胸には驚きです」

 確かにルルたちはかなり肝が据わっています。騎士団に顔を覚えられてないということはまず考えられません。もしかしたら、士官学校前で門前払いされてもおかしくはありません。

「大丈夫でしょ!」

 ルルのどこから来るか全くわからない自信にマールはため息をつきした。

「よし、俺は受けるぞ。マール」

「わかりましたよ、僕も行きますよ」

 これで、スラム街問題児四人組の入団試験挑戦が決まりました。

「今年の入団試験は確か一月後ぐらいでしたか」

「うん、そのぐらいだったはず」

 今まで黙っていたアートも合わせて四人は入団試験までの計画を立てていきます。

「試験って準備するものとかあるのか?」

「別にいらないんじゃない? やる気と気合よ!」

「皆さんゆるすぎませんか?」

 ルルとダットでは全く話になりません。この二人は基本的に何かを深く考えるというのが苦手なようです。

「お姉ちゃん、勉強苦手だけど試験が勉強だったらどうするの?」

「うっ! な、なんとかなるでしょ」

「ははははは、ルルには無理だな!」

「「「ダットもな!」」」

「へ?」

 どうやら、スラム街悪ガキ四人組の息はぴったりのようです。

 


 

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