第4話 奴らを私は許さない
「ルル、何もあそこまでしなくてもいいんじゃないのかのう?」
こめかみの辺りを指でかきながらドルはどこか言いにくそうにしています。
「あいつらは絶対に許せない、父さんと母さんを殺したようなもんじゃないか!」
スラム街近くの路地裏での喧嘩(ルルが一方的でしたが)から数時間がたちルル、アート、ドルは三人が住むスラム街の家のような小屋のような場所にいました。
「さっきの子が何かをしたというわけではないじゃろう。確かに純血戦争を起こしたのは半種族と言われておるが・・・」
純血戦争。それはアルト大陸で15年前に集結した、大陸全土を巻き込んだ大きな戦争です。その戦争で沢山の者が死に多くのものを失いました。ルルたちが住むスラム街も戦争の影響でできたものです。
「半種族《あいつら》は自分たちの都合のために私たち純血に戦争を仕掛けてきた。それなのに、簡単にあいつらを許せるわけないじゃん! 私たちがこんなに苦しい生活をしてるのも、ドルさんだって大変な思いをして、父さんと母さんだって・・・」
ルルの思いが溢れ出します。ドルもルルの気持ちがわかっていないわけではないのですが彼なりに思うところがあるようです。
「お姉ちゃんは、純血の騎士団に入るの?」
先ほどの戦利品であるパンなどを食べながらアートが聞いてきました。
「私は、騎士団に入ってハーフの残党を狩る」
純血の騎士団にはククスの治安を守る以外の役割があります。
正しくは、騎士団の本当の役割。騎士団の前身ができた理由です。
純血戦争が起こる原因となったのは半種族です。
ただ、半種族側もバラバラで戦争に挑んだわけではありません。
彼らは、半種族や半種族を庇護しようとする者たちで組織を結成しました。
組織名はありません。しかし、名前がなくては呼びにくいので騎士団側がハーフと名付け呼ばれることになりました。
ハーフは大陸中の国とぶつかりながら戦争を続け最後は不利になったハーフが崩れ去っていきハーフのメンバーは大陸の様々な場所に散っていきました。しかし、そんな彼らを許さなかった大陸の国々が協力しハーフの残党を狩る組織を結成しました。
それが純血の騎士団の前身となる組織です。
「そうか、決めたんじゃな」
寂しそうにドルは言います。
「15になったから、今年の入団試験を受けるつもり」
ルルの目からは覚悟を決めたような意思が伝わってきます。
「アートはどうするんじゃ?」
「お姉ちゃんが受けるならぼくも受けようかな」
どこか弱気なアートは全て姉任せで決めるようです。
「そうか、なら半年ほどは会えなくなるのぉ」
騎士団の入団試験は長く約三ヶ月あります。入団後もいろいろなことをしなければならないので半年はここに戻ってくることはできません。
「必ず戻ってくるのじゃぞ」
「うん!」
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