第6話 入団試験
純血の騎士団ククス支部。
アルト大陸の南に位置するククスの中心にある大きな建物。
その隣に立つのは訓練場を備えた士官学校です。
ククスにいる騎士団はみなこの士官学校を卒業しています。
もちろん、ルルたちが入団試験を受けるのもこの場所です。
今日は騎士団に入ろうとしているものたちの試験の日。入団試験の試験のようなものです。
「うっわ〜でっけ〜!」
「ほんと、おっき〜!」
スラム街問題児四人組のおバカ担当の二人がククス支部を見上げています。
「二人とも初めてきたわけではないでしょう?」
スラム街に住んでいるとはいえククスで生活していれば騎士団の建物を目にしないというのは無理な話です。それほどまでにククス支部の建物は周りの建物と比べると大きいのです。
「見たことはもちろんあるけどよ、こんな近くで見るとなぁ。でっけ〜!」
ダットの語彙力は全くないようです。
「こんな真下まで来てみたらね、おっき〜!」
こちらも同じようです。
「それにしても、入団試験を受ける人多いみたいだね」
「確かに、多い気がしますね」
四人組の頭脳担当?の二人が士官学校の門をくぐっていく同年代の子供たちをみていいます。確かに、例年騎士団に入団するのは100人に満たないと言われています。しかし、士官学校の門をくぐっているのは今見ている限り300人はいました。
「あ!!」
頭脳担当の二人が真剣に話しているとルルが急に叫びました。
「どうした? ルル?」
ダットが横で叫ばれてびっくりした様子で聞いてきます。
「あの門の前にいる二人って」
「ん? 門?」
四人は士官学校の門の前に立つ二人組に視線を向けます。
「ん〜? お知り合いなんですか?」
「あ!!」
アートは気づいたようです。
「もしかしてこの前、市場で僕たちを追いかけてた騎士団の人たちじゃ?」
「うげぇ、絶対覚えられてるよ。どうしよう」
「ここまできたら、どうしようもないでしょう」
「行こうぜぇ」
ルルとアートは気が乗らないようですが、ここまで来てしまってはどうしようもありません。
「いくかぁぁぁ」
物凄い嫌な声と、顔をしながらも進む覚悟を決めたようです。
四人はなるべく目立たないように、静かに、前だけをむいて門を通り過ぎようとします。しかし、先ほどから危惧していた通り例の二人に止められてしまいました。
「ちょっとまった」
「そこの四人止まりなさい」
もし、ルルとアートが止められても黙って通り過ぎようとしていたダットとマールが自分たちまで止められてしまい驚いた表情をしています。
「はいぃ、なんでしょうかぁぁ」
ルルは慣れない敬語を使いシラを切ろうとしていますが、声がうわずってしまいむしろ怪しさ倍増です。
「久しぶりだな、市場では世話になったな」
犬の獣人が話しかけてきます。
「何のぉぉことでしょうかぁぁ」
ルルはまだ変な声でとぼけています。
「まったく、俺の魔術をかわすなんてやるな」
魔術を使ったと思われるエルフの男が急にルルを誉めてきます。
「えへへ」
「「「「あ!」」」」
四人の声が重なりました。まんまと誘導尋問にかけられ、自白してしまいました。
「まさか、お前ら入団試験を受けにきたのか?」
「そうだよ」
「そうだよって、とんでもねぇ奴らだな」
「えへへ」
「誉めてないぞ」
二人の騎士団は四人の肝の座り方に呆れてしまっています。
「もしかして、入る前に捕まったりする?」
ルルが聞きます。捕まってしまえば入団試験以前の問題です。むしろ捕まらない可能性の方が低いではと思える状況です。
「お前らが騎士団に入ろうとするなら捕まえはしない。騎士団でも手を焼くお前らがこちら側に入ってくれるなら騎士団としてもありがたいからな。」
「ほんと?」
「あぁ」
何と捕まるかと思っていましたが、むしろ歓迎ムードです。ルルは心配して損したと思いました。
「だがその前に」
「ん?」
門をくぐる許可をもらい完全に気が抜けていた四人の頭に拳骨が飛んできました。
ゴン!!
「痛ってぇぇぇぇ! 何すんだよ!」
理不尽に殴られダットは怒ります。
「これは、今までの盗みの分だ!」
「これからは、盗んだ分もしっかり働いて行け! ルル、アート、ダット、マール」
今のは今までの悪行に対するものなのでしょうが頭が割れるかと思うぐらいの強さでした。
「しかも、俺とマールの名前まで覚えられてるし」
「お前ら二人の方が苦情が多いんだよ!」
いろいろ問題はありましたが何とか切り抜けることができた四人は士官学校の門をくぐります。中には500人ほどの人がいてみんな入団試験を受けるようです。ここで三ヶ月の長いような短いような入団試験が始まります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます