第7話 試験開始
士官学校の隣にある大きな訓練場。屋外にあるそこに500人近い入団希望者が集まっています。人間、エルフ、竜人に鬼。種族に一貫性はなく見た目がみんなばらばらです。
予想外の人数にスラム街問題児四人組も驚いています。
「すごい数だなぁ」
「ほんと、何でこんなに多いのでしょうか」
「スラム街で見るようなやつもいるね」
普段から口数の少ないアートは、人が多すぎるせいか全く喋らなくなってしまいました。
500人も人がいれば誰も話さず無言と言うのはありえない話で、訓練場のざわつきはかなりのうるささです。誰も止めに入らなければ止まらなそうです。しかし、そこへ一人の獣人がやってきて500人の会話を見事止め、試験開始の合図を出すのでした。
「静まれぇぇぇぇ!!!!!!」
士官学校の方からやってきた騎士団の制服に身を包んだ獣人が叫びました。
よく響くその声に訓練場にいた入団希望者全員が会話をやめ、一斉にその獣人の方を見ました。
「私の名は、ホーク! 純血の騎士団ククス支部所属、第一中級騎士である。今回お前たちの総合試験官となった!」
訓練場から見て少し高い場所から叫んだ男は、勢いのまま自己紹介まで済ませてしまいました。
「マール、第一中級騎士ってどのぐらい偉いんだ?」
「第一って付いてるんだから一番偉いに決まってるでしょ」
「そうなのか!」
「いえ、真ん中より少し上ぐらいでしょうか」
おバカな会話をする二人に、冷静にマールは答えました。
純血の騎士団は七段階の階級に分かれています。一番上に君臨するのは、四騎士と呼ばれアルト大陸にある四つの国の騎士団支部の支部長を務める者たちです。その下に、第一上級騎士、第二上級騎士、第一中級騎士、第二中級騎士、第一下級騎士、第二下級騎士。と、続きます。総合試験官となるのは第一中級騎士以上からです。ちなみに、上級騎士はほとんどいないので、試験官となるのは第一中級騎士がほとんどです。
ホークが続けます。
「これから、お前たちには入団試験を行ってもらう! 騎士団に入るための試験ではなく、士官学校に入るための試験だ! これを通らなければ話にならない!」
訓練場がざわつき始めました。それもそうです、みんな士官学校には入れるつもりできていたので初日から追い返される可能性があるなんて知りませんでした。
「早速だが、お前たちはこの男と戦ってもらう! こい!」
「はい!」
元気の良い返事でホークの後ろから一人の男が走ってきました。耳が長く整った顔立ちはエルフなのでしょう。ホークも決して小柄ではないのですが横に並ぶと身長の差は歴然です。
「自己紹介!」
「はい! 純血の騎士団ククス支部所属、前期士官学校主席卒業、第二上級騎士 セミスです」
そういった男の左腕には他の騎士団がつける青の紋章とは違う赤い紋章が輝いていました。
「こいつは、前年度の士官学校を主席で卒業しただけでなくいきなり俺の階級を飛び越え上級騎士になったやつだ! お前らにはこいつと戦ってもらう!」
騎士団でもかなりの実力がないとなれない上級騎士と戦わなければいけないと知り再びざわつき始めます。
「ホークさん、階級は気にしてないって言ってませんでした?」
「うるせぇ、気にならんわけないだろ」
「そんなぁ」
試験官と前年度主席の男は上下関係はありながらも冗談を言い合える仲のようです。
「そういえば今年も、強いやつらがいるんだろ?」
ニヤニヤと笑いながらホークは聞きます。
「そうですね、僕の弟分が四人います」
そう言って、セミスは今話した四人の方を向きます。
「それは、楽しみだ」
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