神様、生まれ方を間違えた私たちはどう生きていけば良いですか?

みつやゆい

プロローグ

 火薬の鼻を突く匂い。木が焼ける匂い。血の匂い。人が死ぬ匂い。

 朦朧とする意識の中で私が感じることができる数少ない情報。

 もう、私が誰なのか。何をしているのか。それさえも曖昧な意識で私が最後に思うこと。


「ミル!!意識をしっかり保て!!もう少し耐えてくれ!!」

 誰かの声が聞こえる。

 ミル?私の名前なのかな?

 私に呼びかけるこの人は誰?


「アルマ!このままだと逃げられない。いずれ追いつかれる」

「わかってる!だけど、彼女を置いていくわけには」

 私は置いていかれるの?

 こんな嫌な匂いがする場所に?

 けど、それも良いかもしれない。

 もう指先が全く動かないし。目も霞んでよく見えない。

 正直もう、休みたい。


「アバン、ドリィさん、すまない。俺たちの子を頼む」

「何をするつもりじゃ、アルマ!」

「ドリィさん、俺があいつらを止める。その間にその子たちを連れて逃げてくれ」

「それなら、俺が残って」

「すまない、彼女の最後には一緒にいてあげたいんだ」

 やっぱり私はもうダメなんだ。

 でも、最後の時に一緒にいてくれる人がいるなんて私は幸せなのかもしれない。

 私の人生に心残りがあるとしたら一つだけ。


「その子たちは、幸せに育ててあげて欲しい。一度も父親らしいことはできなかったけど」

 あの子たちの、成長を見届けてあげられないのが唯一の心残り。

 みんなでご飯を食べて。たくさんお話しして。喧嘩もして。いっぱい笑って。

 そんな普通の幸せを一緒に感じたかった。


「ミル、守ってやれな......」

 もう、何も聞こえない。匂いも感じない。何も見えない。

 ただ私の中で私の意識だけが存在する。



 あぁ神様、いるのならどうか教えてください。

 正しい行いをするものには、正しく生きる道が。

 罪を犯したものには、罪を償って生きる道が。

 なら、

 生まれた時から存在を悪とされたものは、どんな生きる道があるのですか?


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