第42話 賭博を愛する者

「「かんぱぁーい!!」」

 グラスのぶつかる音が鳴り響きました。先ほどまで、お湯の中で宴会を繰り広げていたアバンとバイスですが温泉から上がって部屋に戻ると再び宴会が始まりました。

「二人とも、まだ昼過ぎですよどんだけ飲むんですか」

 普段あまり注意などはしないクフリも二人のあまりの羽の伸ばしように呆れてきています。

「うるへぇ今日は休みなんだよ」

「そうらそうら今日ぐらい飲ませろ」

 二人とも呂律が回らなくなってきています。

「二人とも別に働いてないよね? いつも休みじゃない?」

 アートのなにげない一言が二人の心に深く刺さりました。それを忘れるためにも二人の飲むスピードはどんどん上がっていきます。

 そんなことをしていると、部屋の扉が勢いよく開き温泉から上がってきた女性陣が入ってきました。

「もぉわたしのいないところで始めないでよねぇ」

 部屋に入ってすぐにミーアは席につき宴会に参戦します。このメンバーで一番お酒の強いミーアが入るといつも宴会が大騒ぎになります。おそらく今日もうるさくなるのでしょう。

「どうしたんですか!? ルナさん!」

 ミーアの後ろから部屋に入ってきたルナを見てアートは驚いていました。みんな温泉からリフレッシュして上がってくるのに、一人だけやつれてような顔をしています。

「しぬかと思った」

 声にも元気が感じられません。アートとクフリは何があったか聞きたいようですが、ルナを隣で支えているルルは静かに首を振っています。空気を読んで何も聞かないことにしましょう。

「さてさて、四人はどうするかね? ここはしばらくしたら戦場になりそうだが外に出て観光にでもいくか?」

 一人ゆっくりと温泉に入っていたドルが部屋に入ってきて酒を飲んでない四人に観光を提案します。

「そうだね、ここは危なそうだしせっかくだからね」

「何か美味しいものでも食べにいきますか」

「賛成!!」

 ルナも急に元気を取り戻し宴会組を置いて観光に行くことにしました。


「うっまーい!!」

 謎のふわふわした食べ物を頬張りながらルナははしゃいでいます。

「それ何でできてるの?」

 どんな味がするのか想像ができずルルは聞いてみますが聞いたのが間違いでした。

「んー? 何でできてるかは知らないけど、酸っぱくて甘くて辛いよ!!」

「何それ美味しいの」

「美味しいよ?」

 味はよく伝わりませんが、とにかく美味しいようです。

「ルルも食べてみな」

 少しちぎったその食べ物をルルに分けます。少し抵抗はありますがルルも勢いのまま口に入れました。

「うっまーい!!」

 口に入れた瞬間同じように叫びます。

 何を食べているか理解できてはいないようですがおいしければなんでもいいようです。

 そんな気ままに観光を楽しんでいととあるお店から通りまで聞こえる騒ぎ声が聞こえてきました。

「っしゃ〜い!! 俺のかちだな」

 とても大きな声なので通りを通る人たちの目線はそのお店に集まっています。

「あの店は何?」

「賭博屋だな」

「賭博屋?」

「ああ、賭け事をして遊ぶとこだな。 そして今の声はカイだな」

「カイさんが?」

「いくぞ」

 声を聞いただけでわかるなんてさすがと思いましたが、よく考えると賭博屋にいて叫んでいるのは一人しかいません。アートはなんとなく察しました。

 観光をしていた五人は一時中断し、賭博屋に入りました。四方八方から悲鳴やら歓喜の声やらが聞こえてきますが入って真っ直ぐの場所に一際大きな声で叫んでいる人がいます。

「もしかしてあの人?」

 ルルはその人物を見つめながら少し引いています。

「あぁ遊んでいるときのあいつは周りから見れば頭がいかれてるとしか思わん」

 クフリにそこまで言わせるカイは相当な人物です。一喜一憂が激しく感情がコロコロ変わり一人で大騒ぎしています。何がそんなに楽しいのか知りませんがとにかくはしゃいでいます。

「あぁくっそ負けちまったぁ」

 そう言ってはしゃいでいた人物は後ろ向きに倒れると逆さまのクフリと目が合いました。

「あ! 久しぶりじゃねぇかお前ら」

 幸せそうな笑顔を作りながら手を振ってきます。



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神様、生まれ方を間違えた私たちはどう生きていけば良いですか? みつやゆい @mituya-yui

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