第31話 三種混じり
「天使って・・・」
アートが驚きのあまり干し肉を噛むのを忘れ口が開きっぱなしになっています。
「おぉ〜い、口が空いてんぞぉ」
アバンが指摘しますが閉じないようなので、仕方なくクフリが手動で締めてあげます。
「天使って本とか物語の中だけじゃなかったんだ」
ルルが存在自体を疑っています。それもそうです、大陸に住むほとんどの人は天使は御伽噺として語り継がれてきた存在で、神に最も近い種族と話の中では言われています。そんな種族の血を引いていると言われても簡単に信じることなどできません。ただ、からかわれてるだけではとも思います。そんなルルの心の中を読んだかのようにアバンは話し続けます。
「別にからかってるわけじゃないぞ、確かに普通の奴らは見たことがないかもしれないが」
アバンもどう説明したらいいのか悩んでいるようです。すると、横からクフリの助太刀が入りました。
「二人とも北の国はどの種族が収めているかわかりますか?」
「人間!」
「士官学校で耳にたこができるぐらい聞かされたからね」
ルルが嫌な顔を浮かべています、彼女にとっては嫌な思い出のようです。
「それが大陸の常識とされています」
「違うの?」
「はい、実際は天使が国を動かしています。人間は天使の代わりに前に出ているだけです」
ルルとアートは固定概念をひっくり返された気分です。
「お前ら四帝四剣会合は知ってるよな?」
「大陸の四つの国の皇帝と四騎士の人が集まって話し合いするやつでしょ」
ルルは得意げに答えます。
「あれのときは北からは天使が来るぞ」
「ふぅ〜ん、そうなんだ。 って、なんでそんなこと知ってるの?」
「おっ! そろそろ着くぞ」
アバンが話を逸らしました、言いにくいことでもあるのでしょうか。
そこで、話が一時中断するかと思いましたがアートが思い出したように質問します。
「そういえば、人間と獣人と天使ってどう言うこと? 半種族なら二つなんじゃ?」
「お前たちの母親のミル・マキシスは人間と天使のハーフなんだ、だから三種類」
確かに両親のどちらかが半種族なら三種類です。二人ともそんな可能性は全く考えていませんでした。
「よし、ついたぞ」
そんな話をしているうちにどうやら例の隠れ家についたようです。周りには何もない草原なのですが。
「どこに隠れ家なんてあるの?」
どんなに周りを見渡してもただただ広い草原です。建物など見当たりません。
「まぁ見てろって。 クフリ」
そう言うと、クフリが地面に何か書き始めました。文字のような模様のようなルルたちからするとよく分からないものです。
書き終わったのか、立ち上がり口元に巻いていた布の位置を直すと詠唱を始めました。すると、何もなかった草原に大きな大樹が見えてきました。
「うぉお!!」
ルルが驚いていると二人はさっさと歩いて行ってしまいます。
大きな木の根本にはドアがついていて、中に入ることができそうです。ルルは木の中をくり抜いて隠れ家にしているのだと気づきました。まだ子供心を捨てていないルルは、一体一番上の部屋はどんなふうになっているのか? もしかしたら、頂上まで登れるのでは? そんな期待を胸にスキップしながらドアのところまで行きました。
アバンがドアを開けました。
「隠れ家はこのしただ」
「この下??」
どうやらルルの予想は外れたようです。
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