第24話 決断

 ルルたち姉弟の号外は大陸全土に広がりほぼ全ての人が知ることとなりました。もちろんスラム街に住むような人たちも例外ではありません。

「ルル、アート・・・」

 そう呟くのはふさふさの毛を身に纏った背の高い犬の獣人。ドルです。彼もまたルルたちの号外を手にしています。姉弟と一緒に暮らした狭い家という名の小屋は、二人が士官学校に行ってからは少し広く感じます。しかし、今は隣に座るガタイのいい男のせいで狭く感じます。

「ドリィ、どうするつもりだ?」

 ガタイのいい男がドルに訪ねます。その男は、旅人のような服装で鼠色をした布を上着のようにして羽織っています。フードが付いていますが今は被っておらず見えている額からは一本のツノが見えています。

「アバン、聞かなくても分かっているだろ? お前の力がいる」

 ドルにアバンと呼ばれた男は、少し口元を緩め笑うと立ち上がり家から出て行きます。

「任せとけ」



 大陸各地にて。

 

「ふふ、いい情報を持ってたじゃない。 褒めてあげるわ」

 豪華な装飾のついた黒のドレスをきた女が隣に立つ騎士を褒めています。

「ありがとうございます」

 嬉しそうな表情はせずただ返事を返します。

「でもいいの? 元のお仲間さんなんでしょ?」

 ドレスの女が手に持った扇のようなものをひらひらとさせながら言います。

「問題ありません。 今は貴方様に使える身ですから」

「ふふ」

 笑った女の口の端には鋭く尖った牙が見えました。



「なんだぁこりゃ? 特級の二人に子供がいたのかぁ?」

 着物をきた男が大きな庭の見える縁側に座り号外を見つめています。

 額には二本のツノが見えます。

「そうみたいっすねぇ どうします? 親方?」

 縁側の男に付き人と思われる男が後ろから話しかけます。

「あのやろぉが出てきやがったら絶対に見失うな、なんとしてでも俺が叩き潰す」

 縁側の男が手に持っていた号外の新聞をくしゃくしゃに握りつぶしながら言います。

「了解です」

 


「あの罪人はさらに罪を重ねるというのですか」

 背中に白く潔白な翼を生やした中性のような見た目のものが臣下と思われる二人を後ろに引き連れ長い通路を歩いて行きます。

「そのようです」

「許せません」

 後ろの二人がタイミングを合わせたかのような話し方で言いました。

「お二人は彼らにどのような罰を望みますか?」

「「死を」」

 今度は二人同時に言いました。

「そうですね。 彼らは許してはなりません。彼らに主神の裁きを」

「「主審の裁きを」」


姉弟の処刑まで後、一日。

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