第二章 異世界コミュニティ

スピーチスキル大爆発

街の門へ向かって歩いて向かう。ダッシュ&ランよりかなり時間がかかる。


 敵意が無いことを身振りで示して、門番に近づく。門番は20代の後半位の男。


 革鎧に槍、腰にはショートソードという出で立ち。顔立ちは美形ではないが、人の良さそうな感じ。



 「見慣れない顔だな、どこから来た?」と誰何される。



 カバーストーリーとして、森の中で祖父と狩りをして暮らしていたが、祖父が亡くなったので、獲物を売り、生活必需品を手に入れようと街へ来た。という設定にした。



 来た道の先を指差して


 「あっち、森から来た」


 ん、なんか口から言葉がたどたどしい。


 プレーヤーはコミュ障ではなかったんだが……


 アバターがチュートリアル終えていなくて、実質キャラメイク完了していない弊害?それとも長いこと言葉を口にしていなかったせい?



 「森から?何をしにこの街へ来た?」


 「森で獲物とった。獲物売って、塩とか買いたい」


 アレ?やっぱ、めちゃくちゃ言葉がたどたどしい。


 スピーチスキル、キャラメイク時でもそこそこあるハズ。「説得」とかで使うスキルで、こんな会話がたどたどしくなるのってオカシイ。


 世界の異なるシステムのせい?



 「森の中は魔物も居るから、森に住むというのは聞かないが……まぁ街に害はなさそうだな」


 「この街の住人かギルド登録して税金を払っていなければ、入町税で銅貨5枚だ。登録票はあるのか?」


 「登録票、持っていない」


 「じゃあ銅貨5枚だ。それと……こっちへ来い」


 銅貨を渡し、門番の詰所に案内される。


 門番は詰所の机の上にある、水晶球に手をかざし、何かモゴモゴと口にする。


 「よし、これでいい。この水晶球に手をかざして『犯罪歴はありません』と宣言してくれ」


 ゴブリンとか魔石とかある以上察しはついていたが、この世界は剣と魔法の世界なのね。それでこの水晶球はウソ発見器的な魔導具ってとこか。



 「犯罪歴、ありません」


 と口にすると、水晶球が青みを帯び淡く光る。



 「ん、青か、問題無い。疑うようで悪かったが、これも決まりなんでね。」


 「大丈夫、このお陰で、街安全」


 あー、たどたどしい、もっとこう気のきいたセリフあるだろーに、SOEではスピーチ上げて気のきいた言い回しするプレイスタイルだったのに……


 「獲物はギルドに卸せばいい。買い物は、市場があるからそこで、な」


 「あ、それから、ようこそリファールの街へ、快適な滞在とならんことを」



 うわーイイ感じだわこの門番。


 『あんたイイ感じだな、快適な滞在のために一杯奢らせてくれ』とか軽口たたきたい。



 「あ、ありがと」


 口から出た言葉はこんなもん。決して恥ずかしいとか、対人恐怖症とでは無いんだが……



 銃を扱ったことの無いプレーヤーが、アバターのスキルに引っ張られて銃を扱えたりするのと同じような感じか?


 スピーチスキルの問題?それともシステム違い、世界の違いのせい?



 世界違うから、言葉通じるだけで有り難いんだけど、もうちょっとこうなんとか……



 「自由に」「生き延びる」以外にも「きちんと会話する」可能なら「気取った会話」をする。っていうロールプレイしたいんよ。


 システム違いのアバターだけど、ゲームっぽいファンタジー世界に転移したんだから、そういうのも「楽しみ」たい。


 違う世界だから、スピーチスキルが0になってる。(言葉が通じるようにするために、消費した)って考えて訓練かなぁ。


 このあたりは、フレーバーっちゃあフレーバーだから、「自由に」「生き延びる」よりは優先順位低いけど、おいおいね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る