主人公

 ジン視点




 設定した時間になり目を覚ます。


 身体をほぐしてから、リディアと見張りを交代する。


 焚き火に薪をくべながら、見張りをする。


 眠っているリディアについ目が行ってしまう。



 この世界で「生き延びる」事を第一としてきた。生き延びるだけなら、もう十分に出来る。



 俺は自分がアバターであり同時にプレーヤーであるという感覚を強く意識する。


 そしてこの世界に来てから何度か体感した独特の感覚になる。


 自分を中心として、この世界が創られているという独特の感覚。



 リディアを見つめる。


 俺と同じ、この世界とは別の世界の主人公。


 この独特の感覚を、リディアは判るだろうか?



 そして俺は思い出す。



 本当は、世界が主(中心)ではなく、自分が主(中心)である。という事を。



 「しなくてはならない」(Should)は世界を主とする視点だという事。


 「したい」(Will)という「意志」こそが、自分を主とする視点だという事に。



 アバターでも無くこの自分を中心とした「意志」こそが本当の主人公だと言うことを。


 気づいたのではなく、思いだした。



 「生き延びる」を目標としていた事は間違いだったと気づく。


 「生きなくては」ではなく「生きたい」というように「Should」を「Will」へ。


 そしてこの「意識」を強化するモノが、「自由」と「楽しい」という感覚。



 だから、この世界を「自由に楽しく生きる」と決めた。


 それは「目標」でもあると同時に「過程」そのものでもある。



 リディアを見つめる。この創られた世界の中で特別な存在を。



 風の音、焚き火の匂いを感じる。



 空が白んでくる。夜明けの空気。



 時間を確認。そろそろリディアが目覚める時間。



 焚き火に薪をくべ、鍋で湯を沸かす。



 リディアが目を覚ます。



 挨拶を交わし、お茶の準備をする。



 お茶を飲みながら、今日の計画の話をする。


 周辺の獲物を狩り尽くしたようなので、東よりで狩りをする事にする。



 リディアの魔法の訓練を兼ねつつ、狩りをする。



 リディアがレベルアップ。


 隠密と弓のデメリット分は、昨日の分で消えたので隠密にパークを振ることにする。



 狩りを続ける。



 グラスウルフ六匹のグループを発見したので、回避する。


 俺達がしたいのは狩りであって、戦闘ではない。


 その後も狩り。



 今日は拠点から離れた場所で狩りをしたため、夕方前に拠点へ戻り拠点を中心に周囲を索敵した。



 拠点へ戻り食事を取る。


 リディアから睡眠の設定についての話を聞く。


 俺はその危険性に気づいていなかった。


 リディアは一人で居たときに、睡眠時に襲われかけた事があるから、特に不安なのだろう。


 ここで夜営せずに、夜を徹して街へ向かうかを話しあう。


 拠点の周囲は狩り尽くしているから、今夜はここで夜営をする事にした。


 街へ戻った後、睡眠時の検証をするため二人部屋を取ることに決めた。


 念のため「起こそう」という意図をもって起こす。という検証は今夜する事にする。


 宿に戻ってから、エネミーからの襲撃等を想定した「起きても構わない」という意図の場合や意図を持たずに、刺激を与えた場合にどうなるかを検証する事にした。



 今夜は先にリディアから睡眠。


 四時間時間設定で睡眠。


 三十分後に起こす約束。


 見張りをしながら、時間まで待つ。


 時間になりリディアを起こす。



 リディアは目覚ます。ただ時間設定で起きるよりも、少しぼんやりとするとの事。


 お茶を飲みながら、少し話をしてから、リディアが睡眠。四時間。



 自分がアバターであり同時にプレーヤーである。という感覚を強く意識する。


 自分を中心として世界が創られている。という独特の感覚になる。



 リディアを見つめる。


 自分と同じ、別の世界の主人公。


 リディアが俺に好意を持っている事はわかっている。


 この世界に来てから、色々とあった事もわかっている。


 俺への想いには、つり橋効果もあるだろう。


 だがリディアが中心の世界では、俺も世界(外界)の一部。


 世界(外界)が中心の視点では、主人公としての「意志」は薄れてしまう。



 リディアに世界が中心の視点ではなく、リディアが中心の視点で、主人公としての「意志」で俺と共に「居たい」と思って欲しい。



 俺達はまだ成長の途中。


 リディアが本当の意味で「意志」に気づいた時に、どう判断するかはリディアの「自由」


 俺はその時、リディアが俺と共に「居たい」と思える存在で在りたい。


 これが、俺の「意志」


 

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 SOEとEOS共通のエンジン。


 プレーヤーアバターの位置情報パラメーターを元に、オープンワールドの地図データを参照して、画面にCGで世界を再現する。


 その画像処理のためプレーヤーアバターが世界の中を移動しているように感じる事が出来る。



 主人公 もとは禅語

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