時計あわせ

 「拠点」といっても木が生えているだけなんだが、ウルフに囲まれても樹上に登って遠距離攻撃が出来る。(樹上で睡眠を取れるほど大きくは無い)


 という事でマーカーを設置した場所を拠点と呼ぶ事にした。



「知覚力」を鍛える意識を持ちながら、スニークで拠点を中心に、周囲を半時計周りに索敵。


 範囲を広げながら周回。


 グラスウルフを発見。


 一匹だけ。


 弓を持ちスニークで近づく。


 弓の射程はライフルよりも短い。


 弓の射程に入るギリギリで止まる。


 リディアを見る。事前に決めておいたハンドサインで、もう少し近づく事を決める。


 スニークで近づく。


 ウルフはこちらには気づいていないようだが、違和感を感じた様子。動きが変わった。


 ハンドサインで射撃の準備。


 リディアと同時に射てるように、呼吸を合わせる。


 リディアの射撃のタイミングに合わせて射つ。


 矢は二本とも命中。



 ウルフがこちらに向かってくる。



 俺はインベントリに弓をしまい、槍を構えリディアの前へ出る。


 リディアは左手に弓を持ったまま、魔法の準備。


 俺に飛びかかろうとしたウルフにリディアの魔法が命中。


 怯んだウルフに槍を突き立てる。


 銃を使わずにウルフを倒せた。


 倉庫アンロックするまで、銃を使わずに倒せるようなら、使わずに倒そうとリディアと相談した結果だ。


 もちろん危険なら銃を使う。



 夕方まで狩りをして、拠点に戻る。



 ホーンラビットの肉に塩を付けて、焚き火で焼いて食べる。



 もちろん「知覚力」のトレーニングという意識を持ちながら警戒は続ける。



 焚き火をする時に、リディアにライターを見せて


 「これフレーバーアイテムだからオイル無くならないんだ」と言うと


 「地味だけどチートよね」とリディアが笑う。いい笑顔だ。


 食事をしてから、焚き火の前でリディアと話をする。



 楽しい時間だ。



 この世界の時間は1日24時間なんだろうかと話をした。


 マップに時間の欄があるが、この世界に来てから時間の欄は空欄。


 リディアも時間は空欄。


 1日の時間が元の世界や、ゲームの世界と違うから空欄なのか?などと話あう。


 「別に同じ時間じゃなくても、便宜上1日を24時間にして、それを分割した位で判ればいいのに」とリディア



 「確かに、秒を基準で時間を決める必要はないよな」



 二人同時にピンとくる。



 1日を分割して、時間を決める事で、時刻をこちらで決められるのではないか?



 この世界の人が使う時間とは異なるかも知れないが、二人にとってはそれで構わないのでは?と。



 太陽が一番高い位置にある時間を12時として、それを起点として1日を24時間と決めれば、マップの時間欄が埋まるのではないか?


 何故か、そう出来る。という確信がある。



 ただ、分までは分割出来そうに無い。


 1時間を四分割か六分割がせいぜい。


 リディアも同じように感じるとの事。



 俺はリディアの手をとって


 「誤差が出る予感もするから、お互いの時計を合わせる意識を持ちながら、時刻を設定しよう」



 「手を繋いでいた方が時計合わせしやすい直感があるんだ」




 リディアは驚いた様子でもあるが


 「そうね、時計合わせをしましょう」



 手を繋いだ状態で、


 二人の時計が合いながら、この世界の太陽を中心に時刻を設定する。という意識を持つ。



 マップに時刻が表示された。


 一時間を六分割されたところまで判る。



 リディアと時刻が揃っている事を確認。


 SOEとEOSでも、システムが微妙に違うから、同期できて安堵した。




 この世界の時間の基準とは違うかも知れないけど、慣れた1日24時間の基準が出来たのはありがたい。



 リディアに時刻の事でつい興奮して、急に手をとった事を謝る。


 リディアは笑みを浮かべた。



 夜が更け睡眠をとることにする。



 リディアから睡眠。5時間づつ。


 4時間でも大丈夫だと思うが、余裕をもって5時間にした。



 マントを敷き毛布にくるまり5時間の睡眠をリディアが取る。


 睡眠時間の設定を寝る前に出来て、そのとおりに起きられるのって、元の世界で欲しかったチートだよな。



 時刻が空欄だった時は、このぐらいって感じで大雑把な感じだったから、時刻がわかるようになって良かった。



 リディアの横で焚き火にあたりながら、警戒しつつ今日を振り返る。



 狩りは上手くいった。


 幾つか検証も出来た。


 時刻がわかるようになったのは大きい。地味だけどチートだと思う。



 でもなぁ、システムの事で興奮してついリディアの手をとっちゃったけど、嫌な思いさせちゃったかなぁ……


 驚いた様子だったな。


 笑みを浮かべて、許してくれた様子だったけど、失敗したかも。



 リディアはこの世界に来てから、襲われそうになった事多いみたいだから、こういうのデリケートだよなぁ……


 会話して判ったけど、中の人はどう考えても女性だから、バディ組んでる上で俺に襲われんじゃないか?


 っていう恐怖心は持って欲しくないんだよな。


 一人でいた頃、睡眠もろくに取れなかったらしいから、バディとして信頼されてるんだろう。



 リディアはアバターだという事を俺が知ってるから、余計信頼されてるんだろうな。



 俺もリディア以外の人とはチーム組んだり出来ないから、リディアとの縁を大事にしたい。


 アバターだけど美少女と言っていい程の容姿なんだよなぁ。戦化粧してるけど。


 見た目的には、守ってやりたくなる。って感じで庇護欲そそられるけどEOS8のアバターなんだよな。


 魔法特化という縛りプレイ要素あっても、主役キャラだから。



 「守る」なんておこがましい。


 レベルキャップも向こうの方が上だし。



 リディアの育成をサポートしつつ、俺自身も成長して背中を守り合えるように居続けないと。



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 リディア視点



 ジンと二人で狩りをした。


 もちろんそれも凄く楽しかった。




 でもね、楽しかった事いっぱいあったけど、もうね、時計合わせが幸せ過ぎ。



 だってね、ジンたら急に手をとるんですもの。



 不意討ちで凄くドキドキしちゃった。



 で、その後の時計合わせ。


 時刻がわかるようになったのは嬉しい。



 でもね、その時刻を使ってるの、この世界で、ジンと私の二人だけなんだよ!!


 二人だけのスケールで、同じ時を刻むの。


 は~幸せ過ぎて、にやけちゃったよ。


 お陰でジンが話かけてきたけど話聞き取れなかったよ。


 にやけ顔ジンに見られちゃったけど、平気だよね。



 ジンの隣で横になる。


 睡眠時間の設定する時にまた時計合わせの事思い出しちゃった。



 この場所につけたマーカー。消さないでおこう。



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 リディアにとって


 二人だけのスケールで時を刻む


 この世界に二つしかない特別なペアウォッチという感覚です。


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