クリティカル

 ジン視点


 リディアと話をした後、それぞれのベッドで眠ることにした。




 ベッドに横になりながら、リディアとの会話を思い返す。



 リディアのさっきの言葉と笑顔。アレ反則だよな……

 不意討ちで完全にクリティカル食らったぞ……



 今夜『睡眠の検証』が無くて本当に良かった。

 こんなクリティカル食らった状態で眠っているリディアに触れたら、自制出来る自信なんて正直言って無い。


 意識の無いリディアにいろいろするのはフェアで無い気がするんだ……

 意思を尊重するべき・・だからな。


 なんにせよ、倉庫アンロックしてからじゃないと……

 甲斐性を持ってからにするべき・・だと思うし、倉庫にある「謎のゴム風船」も必要だよなぁ……



 ……隣のベッドでリディアが「ジンに『いたずら小僧』をさせるには?」等と考えている事には全く気付かないジンであった。





 翌朝になり俺はリディアと共にギルドへ向かう。

 明日からまた狩りに出かける事を伝えておくため。

 こういった連絡は義務ではないが、しておいた方がいいとの事。



 ギルドで報告をすると、アリシアさんから「連絡が欲しい。」という旨とアリシアさんの宿を教えられる。

 ギルドにはこういった「伝言板」的な役割もある。


 「伝言板」そのものもあるんだが、まだこの世界の文字が読めないからチェックはしていない。


 「伝言板」に『XYZ』とかあったら絶対に転移者がらみだけどどうするよ?等とリディアと話たりして、伝えられた宿に向かう。



 宿でアリシアさんを呼び出してもらう。

 アリシアさんは俺を確認すると、込み入った話があるからギルドの会議室で話をしたいとの事。

 同意してアリシアさんとギルドへ向かう。




 ギルドの会議室でアリシアさんにリディアを「同じ民族の者」で大切な人だと紹介した。




 以前伝えた、魔石を少額通貨として使うアイデアについての話だとの事。



 領都のギルドで報告したところ、領主に話が上り、さらには国の財務大臣にまで話がいったらしい。

 魔導師が使い魔を使って連絡を取りあって、思っていたよりも早く話が進んだとのこと。

 



 試験的な意味も含めて、このリファールの街があるリスミラ子爵領で近いうちに実施する事になったらしい。

 子爵の寄り親の辺境伯もかなり乗り気で子爵領で運用して、特に問題がなければ辺境伯領でもすぐに実施する気とのこと。


 子爵領と辺境伯領での試験運用後、王国全土で実施されるらしい。


 補助通貨として小さな魔石が流通する事で小規模経済の活性化につながる事。

 通貨自体が貴金属なので、貴金属を貯めたまま流通する貨幣が増える事は経済全体の底上げになるだろうと予測した模様。


 さらに国全体で実施する事で、魔石を基準として他国に対しても基準通貨となる事が出来るのでは?と国の偉い人は考えてるらしい。




 魔石を基準にした魔石本位制で基軸通貨の地位を獲得出来るって事か。

 通貨自体が貴金属中心だから、基軸通貨になる事は、メンツの問題が中心なんだろうな。

 というか、国ごとで通貨の基準が違う事は今知ったな。




 アリシアさんが領都のギルドで報告して(報告書もしっかり書いたとのこと)実施されるにあたりかなりの報酬があったので、以前約束した報酬の山分けの話になった。



 「報償金として金貨50枚を貰えたから、まず半分の25枚を渡すわ。


 それと、現金としての報酬以外に領都に出店して商会設立をする権利も貰えたの。


 この報酬に関しては分けられないから、ジン君には後日別の形でお礼をしようと思ってるわ」

 と少し申し訳なさそうにアリシアさんは口にした。


 「俺、狩人、目立つダメ」

 と目立つリスクがある現金以外の報酬は受け取る気が無い事を伝えた。



 全国的にこの制度が広がった後、もっと報酬があるらしいから、領都のギルド経由で連絡して欲しいとの事。



 俺は領都以外のギルドで報酬を受け取れないか?と聞こうかと思ったが、リディアからの強い視線を感じて黙る事にした。



 うん。この世界『為替』の概念は無いっぽいからなぁ。

 『為替』から兌換紙幣への発展と魔石本位制のコンボとかアイデア出しちゃったら絶対に目立つよな。

 隠しておかなきゃマズイ事多いから目立たないようにしとかないとな……




 アリシアさんは商人として信用が第一なのと俺の視点とアイデアに特別なナニかを感じるから、俺とよしみを通じておきたいらしい。

 報酬を騙すような事はしないから、何かアイデアがあったら教えて欲しい。というような事を伝えてきた。



 ……あ、うん……アイデアあるけど、

アレはマズイから……

 レベル上がってパークアンロックのためのトレードスキルが足りなかったらアイデア伝えるかも知れないけど……

 俺一人の問題だけじゃなくてリディアもいるからさ……



 『前納』についても概ね評価が高く、王国の財務大臣にまで話がいったらしい。

 ただ、「前列が無い」というような反対意見も多くあり、実施するにしても時間がかかりそうとの事。


 魔石を少額通貨として流通させた後、変化に抵抗が少なくなってから実施する案を議論する流れらしい。



 まぁ変化する事自体への抵抗ってのはどこにでもあるよな。



 この『前納』についても実施する事になったら、報酬があるとのこと。


 アリシアさんは皮袋を差し出しながら


 「以前約束した報酬よ。本当はもっと渡したいんだけど、今は商会設立のために資金が必要だから……後日必ず埋め合わせはするから、今回はこれでお願いするわ。」


 皮袋を受け取ると独特の感覚があった。トレードスキルが大きく上がり、経験値も大きく入った気がする。



 受け取った報酬をアリシアさんの商会に出資して配当を受け取るとかも一瞬考えたが、株式会社(カンパニー)の概念の導入とかマズイ事になるの目に見えてるから黙っておく。

 リディアからの視線も感じるし……

 報酬もチームとして受け取るから俺の一存では使い道きめられないしな。



 現代知識チートとか絶対に目立っちゃうから、ゲームアバターであるが故の秘密が多い俺たちには、ちょっとした発言でボロが出るリスクの方が大きいよな……



 ゲームアバターとしての経済感覚だと、お金ってコーラの蓋で、SOE6から瓶ビールを飲んでもキャップが増えるようになったとか、ボトルキャップ地雷の材料にもなる。って感じで、プレイヤー視点だと所詮コーラの蓋じゃんっていう感じすらあるんだ。

 トレードスキルも値段交渉とかの自動補正って感じがメインみたいだし。



 この世界に来てアバターの感覚と混ざったような……それでいて自分の中の『意思』こそが本質という感覚から『お金』というモノを捉えると、元の世界にいた俺は『お金』を扱うのではなく、『お金』に扱われていた、支配されていた。という事がわかるんだ。


 この感覚はまだはっきりと言葉に出来ないんだけど、自分を中心に世界が創られている。という感覚に近いような気がしている。



 リディアがアリシアさんと二人で話をしたいと言うので会議室を出てホールで待つ事にする。

 女性ならではの相談をしたいらしい。



 ギルドのホールでしばらく時間を潰しリディアを待つ。


 リディアが会議室から出てきたので、アリシアさんに挨拶をしてからリディアが行きたいと言うところへ向かった。



 最初に向かったのは衣類を扱っている店。下着をいくつか買いたいらしい。

 うん、このカテゴリーはアリシアさんに聞いた方がいいよな。


 リディアが買い物を済ますのを待ち、その後神殿へ向かう事になった。


 神殿か、この世界の宗教とか関わらないようにしてたけど、リディアが行きたいと言うので付いていく。


 俺とリディアの出身民族の宗教的なカバーストーリーは、シャーマニズムとアニミズムの混ざった感じ。


 日本の古神道っぽい感じかな。


 元々八百万も神様いるんだから、一つ二つ神様増えても構わないじゃん。っていうクリスマスを祝って正月には神社に初詣にいくファジーさって大事だと思うんだ。



 リディアと一緒に神殿へ入り、案内をしてくれる神官にリディアが手紙らしきモノを渡す。

 

 リディアが奥に案内される。

 俺は待合室のような場合に案内された。

 しばらくしてから神官と一緒にリディアがやってくる。


 その後少し街を散策してから宿に戻った。

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SOEじゃない。━━ゲームアバター転移。システム違いの異世界へ━━ 荒崎まな @utuwa49

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