3. 端的すぎる、抽象的すぎる反応

A:犬は哺乳類である。

B:その主張は間違っている。

A:どこが間違ってるのですか?

B:犬が哺乳類ではないという研究がある。

A:それはどの研究ですか?

B:アメリカの研究。


 再三書いているように、詭弁屋は「議論」が成り立っているという見かけにこだわる。その見かけを最もよく演出してくれるのはやり取りの数である。リプライが連なっていればいるほど「議論」が成立しているっぽく見えるというわけだ。もちろん、例を見ればわかるように実際には成立などしていない。


 議論は普通、自分の主張を相手に過不足なく伝えられるように言葉を尽くすものである。別に議論に限った話ではないが、自分の発言を聞いた相手がキョトンとするような事態は何としてでも避けなければならないものである。


 だが、このような事態は詭弁屋にとってむしろ都合がいい。こうなると、誠実な討論相手であるAはBの言葉の真意を質さなければならないので、言葉を尽くすことになるからだ。そこへBはすかさず、またも端的すぎる発言をする。Aはまた聞き返す。こうしてAの応答コストが増大していく。


 このような手法は前の節で挙げたSealioningに似ているが、質問ですらないという点でより低次である。あまりにも低レベルすぎるので、このような反応はもはや無視する以外に対処方法がないだろう。

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