8. ファンネル攻撃:犬笛を吹く
A:私は死刑に反対だ。
B:ここにこんなバカがいるぞ!
相手をうんざりさせる、応答コストを上昇させるのにもっとも簡便な方法は、とにかくこちらが多数派に立つことである。「戦争は数だよ兄貴!」というわけである。「議論」にビグ・ザムはいないのだから。
冒頭に詭弁屋が仲間を集めると書いたが、ここでは単なる承認を与えてくれる支持者ではなく、攻撃手段として彼らが役に立つことになる。
詭弁屋の支持者たちは詭弁屋の議論に「進んで騙される」ことで、あたかも自分自身が「議論」に勝利したかのような錯覚を得、それを承認として味わう。その最終段階として、趨勢の決まった(と自分が思う)議論にちょっかいをかけ、相手を言い負かす「ふり」をする。
詭弁屋はこのような支持者の本能を知ってか知らずか、利用する。十分に悪魔化した人間を取り上げ、こいつは愚かだと「晒す」ことで犬笛とする。笛の音を聞いた支持者が一斉に襲い掛かり、相手がうんざりして「議論」から降りたところで勝利宣言する。
もちろん、ここで挙げた例はいささか単純すぎてアホっぽすぎる。実際には以下のように、もう少し巧妙になされるだろう。
A:私は死刑に反対だ。
B:この人は殺人犯を守れという。被害者の権利はどうでもいいのでしょうか。
注目すべきは、BはAの主張を「晒し上げる」と同時に曲解しているということだ。まともな主張を取り上げたところで犬笛にはならない。できるだけ相手が愚かで、自分は相手に「議論」で勝ちかけていることを示さなければいけないから、BはAの主張を捻じ曲げて悪辣なものにするのである。
このような場合、誠実な討論者は2つの選択肢から1つ選ぶことを迫られる。ファンネルを適当にあしらって終わらせるか、全てに誠実に対応して疲弊するかである。どちらにせよ碌なものではない。
ちなみに、こういうファンネルは主要な詭弁屋をさっさとブロックしてしまうとあまり来なくなる印象がある。アカウントをブロックしてしまうとリンクを張れなくなり、容易に相手へ殺到できなくなるので犬笛を吹いてもファンネルが集結しないのかもしれない。
詭弁屋が怠惰なら支持者も怠惰ということだろうか。
ネットで「議論」に勝つ方法:詭弁のカタログ 新橋九段 @kudan9
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