タイトルからして不穏な本作品。でも待ってください、化け物といっても色々あります。猫耳が生えているとか種族がサキュバスであるとか、ヒロインが化け物であることが大きな魅力となるラブコメもたくさんあるじゃないですか。
というわけで、本作はメインヒロインが赤黒い巨大な肉塊で、その妹は全身のあちこちが腐り落ちたゾンビです。……これでラブコメをやるのはいくらなんでも無理だよ……ラブコメどころか通常の学校生活だってきついよ……。
しかし、関わり合いになるを避けようとしても彼女たちはラブコメのヒロインらしく主人公の化野曜に積極的にアプローチをしかけてくる……! しかも彼女たちは化野以外には美少女に見えているせいで邪険に扱うわけにもいかない。
この時点で完全に詰んでいるのですが、さらに困ったことに地の文を無視してセリフだけ読むとどのヒロインも実に可愛らしい! のんびり屋で少し天然の入った肉塊と姉想いでツンデレなゾンビ! それ以外にも外見以外は愛らしいヒロインが盛りだくさん! こんな個性的なヒロインたちと校外活動を共に過ごしたり、デートに行ったり、時には痴話喧嘩に巻き込まれたりと、化け物たちとともにラブコメの定番イベントをこなしていく狂気の作品。
漫画やゲームの形でこの設定をやるとビジュアルのインパクトに全てを持っていかれそうなので、ある意味小説という媒体でしか成立できない異形のラブコメと言えるでしょう。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)
ルッキズムと呼ばれる差別が社会問題となっている。
外見や容姿を根拠に行われる差別であり、平均からの逸脱を嫌い排他しようとするものである。ルッキズムは第一印象が見た目に大きく左右される社会性動物である人間が抱えている、根源的な違和感を伴った感情でもある。
他人とほんの少し違った、特徴的な見た目の美少女ヒロイン達に囲まれた主人公。
彼はその些細な特徴を念頭に置きながらも彼女達を決して忌避せず、理由を付けながらも真正面から対応している。
差異は差異として消化し、忌避や違和感を表に出すことなく対応していく彼の精神性は非常に成熟したものだと考えられる。
主人公は人がいかにして差別に打ち勝つべきなのか、それを教えてくれる存在なのかもしれない。だからはよ妹ちゃんとくっつけ!はよ!