4. 概念の極端な狭義化
A:カモノハシは哺乳類である。
B:哺乳類は胎生であるから、カモノハシは哺乳類ではない。
前の節では概念の無限拡大を扱ったが、今度はその逆である。概念を極端に狭く扱い、本来その概念に含まれるものを取りこぼすという詭弁である。
例文で言えば、本来哺乳類は生物の進化の過程による分類であり、まぁ専門の話はさておき少なくとも必ず胎生である必要はないらしい。にもかかわらず、Bは哺乳類の条件に勝手に「胎生であること」を付け加え、哺乳類であるはずのカモノハシを外してしまう。
このような詭弁は自説の補強ために積極的に用いられるというよりは、主に言い逃れに使われることが多いように見える。以下のような、私が実際に見た例がそれにあたる。
A:女性だけが歩きにくい靴を強要されるのは女性差別である。
B:男性もネクタイなど動きにくい服装を強要されている。故に靴の強要は女性差別ではない。
もちろん、ネクタイが強要されがちというのは事実であろう。だがそれは、靴の強要が女性差別に当たらないことを意味するわけではない。
差別というのは本来、ある属性間の取り扱いに差があることだ。だから男性が-3で女性が-10という状況も女性差別と表現すべきである。女性差別において、必ずしも男性の状態が0以上である必要はない。
だがBは、差別かどうかという判断基準に勝手に「優遇されているほうが不利益を全く被っていない」ことを付け足し、靴の強要を女性差別から外してしまう。こうして、問題の本質を隠し女性差別という非難をかいくぐろうとしているのである。
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