5. 統計が示す以上のことを言う
B:統計によれば、犬を好きな人が6割もいる。これは忠実なしもべが欲しいという現代社会の病理である。
統計を使った詭弁の最大のものは、統計が示す以上のことを勝手に言うことである。例でいえば、「犬を好きな人が6割もいる」というのは、回答者の6割が犬好きだったという意味でしかない。
もちろん、数字から様々なことを推測するのは妥当な営みである。だが、過ぎれば詭弁である。また、いくら推測が妥当そうであっても、それは結局推測の域を出るものではなく、事実にはなりえない。
推測が妥当であると示したいのであれば、複数の根拠からそれを裏付ける必要がある。そうしなければ、飛躍の誹りをまぬがれないだろう。
だが詭弁屋はそうしない。前に述べたように、統計を神格化しているので、1つの統計で全てが証明されるかのように理解しているのである。
この手の神格化は、詭弁屋とその支持者がシンプルな主張を好むという側面からも来ているのだろう。「5つの証拠は部分的な証拠にしかならないが、すべて組み合わせると完全な証拠になる」という物語より、印籠が如きデータ1つで決着がつくことを好むのである。これは、以降に解説する「唯一の研究の絶対視」にもみられる。
B:アイスクリームが売れるほど溺死者が増える。アイスクリームは危険だ。
そして、この手の誤りで最も著名なのが、相関関係と因果関係の混同である。2つの数字に関連があるということは、1つがもう1つの原因であることを意味しない。わかりきった誤りのようで、実はよく引っ掛かりがちなものでもある。
例はやはり極端すぎて馬鹿みたいだが、こうすると見たことあるものになるだろう。もちろんこれも、疑似相関であって因果関係ではない。
B:このデータによればポルノが売れるほど性犯罪が減る。故にポルノには性犯罪抑止効果がある。
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