2. 同義語でないものを同義語のように扱う
A:犬や猫を虐待するのはやめるべきだ。
B:じゃあ雑草を抜くのも動物虐待だな。植物だって生きている。
突拍子もなさ過ぎて、おかしいのはわかるが何がおかしいのかよくわからないという感覚を抱くかもしれない。それが詭弁の狙い目である。説明不能な言葉をぶつけることで、相手を呆れさせるのである。
この詭弁は、前の節で説明したニュアンスの無視に似ている。この例文がおかしいのは、Bが植物=動物と認識しているからである。
確かに、植物も動物も生きている。だがその2つの差は大きい。ヴィーガンだって自然破壊を肯定しないだろうが、とはいえそれは植物と動物の間にイコールで結べるほど近さがあることを意味しない。
つまり、二者間にある差異というニュアンスを無視して同じものであるかのように扱うのが、この詭弁である。
いささか極端すぎる例だったが、こういう例にすればもう少し現実味がある。
A:あの表現が批判されるのは当然だろう。
B:表現が燃やされた言論弾圧を肯定するのか。
ここでは、Bは批判を「燃やす」や弾圧と同じものとみなしている。もちろんこの2つは別種のものだ。双方とも表現への否定的な意味合いはあるものの、それ以上の共通点はない。批判は正当な言論活動だが、「燃やす」や弾圧には暴力的かつ不当なものであるという意味合いが込められている。
このような言葉の混同は、単に議論を混ぜっ返すだけではなく、相手の行為を悪いものだとする印象操作にも用いられる。先ほどの例で言えば、正当な批判を暴力的で不当な意味を持つ言葉でラベリングすることで、相手の行為がまるで不当なものであるかのように扱うことができるようになる。
中身を見れば当然、その評価が不当であることは自明である。だが詭弁屋の支持者は中身を見ないので、ラベルさえ張り替えれば誤魔化しはいくらでも効くのである。
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