第13話 対話
カナタと別れた帰り道、雨は降り止むどころかその勢いを止まることを知らず、とうとう周りの景色すらおぼろげになるほどの土砂降りとなっていた。
だが彼女と別れ、ささくれ立った今の僕の心と頭を冷やすにはちょうどいい。
僕の頭の中では、何度も何度も彼女に対しての後悔が頭を埋め尽くそうとしては、雨水がそれを洗い流してくれているように感じた。
そんな風に考えていると僕はいつの間にか自宅である第一区の豪邸の一つに着いていた。
僕の出迎えに来た使用人たちの心配するような声を僕は無視し、僕は彼らからタオルも受け取らずに自分の部屋のベッドに倒れた。
雨水でシーツが濡れていくのもお構いなしに、僕は目を閉じて独りでぼやく。
「…………何で会ってしまったんだろう」
カナタと会わなければ、こんな気持ちになることはなかったはず。
そもそも、低レベルの生徒と共学と知っている母の学校に行かなければ。
そもそも、僕らがお互いに夢を見なければ。
止めどなく溢れ出る後悔。
それらが僕の頭の中を巡っては交互に積み重なっていく。
『そんなこと言って、今日はむちゃくちゃ楽しんでたように見えたが?』
そんな時、昼間に聞こえたあの浮かび上がるような声がどこからともなく聞こえてきた。
「そんなことはない。むしろ彼女に会わなければ、僕達は自分達の平穏を今日以上に楽しんでいたはずなんだ」
だが僕は昼間とは違いその声に特に脅えることはなく、自然と会話ができた。
今は幻聴でも何でもいいから誰かと話したい気分だったからだ。
『そんなのやってみなきゃ分からんだろうが。お前はただ自分の都合や立場を正当化させて、あのカナタとかいう女を遠ざけたかっただけだろう?』
「……違う……そんなことはない。適当を言うな……」
『適当なんかじゃない。そしてお前はこう考える。やっぱり住む世界の違う奴とは付き合える訳がない。だから仕方ない、僕は悪くないと、自分自身に言い聞かせてそう思い込むんだろう?』
「…………違うって、言ってるだろ…………幻聴なら幻聴らしく、僕に都合の言いことだけ言ってろよ…………」
体が冷えてきたのか、だんだんと気分は悪くなり自分の言葉の節々にイラつきを感じるようになってきた。それでも幻聴は僕に対して言葉を荒れげて話し続ける。
『そうやって物事と正面切ってぶつかって来なかったことが今のお前の現状だ。今更後悔しても遅いことを知れよクソガキ。その道を選んだのは、あの女が言う約束を破ったのは他でもない、お前自身という事実と向き合えよっ!!』
「うるさいっ!!」
ここで僕ははっとして正気に戻る。
気付けば僕は脳力で右手から活力を衝撃波として撃ち出していたことに気付いた。
その衝撃波に当たった机は爆ぜ、引き出しに入っていた書類の束が床のあちこちに
散らばっていた。
「……………………」
しばらく無言で考えてから、そのまま散らかしたままにする訳にも行かないと結論付けて平らばった書類を集めようとベッドを降りた。
僕が散らばった書類を集めていると一枚の書類を手にして動きを止めた。
その書類はある計画の立案書の一枚で、その計画の名前と立案者の名前が記載してあった。
《低脳力応用成長化計画 立案者 レイジア・A・ガレアス》
その計画とは、《救世連盟》の『救世者』として、僕が五年の月日を掛けて作った計画の立案書だった。
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