第52話 ダブルデート(6)~その後~
「はい。お茶」
「これ、お茶っ葉の種類、わかる?」
姫が問いかけてくる。
「むむむ……さすがにわからん。お手上げだ」
以前に、お茶の銘柄について多少は勉強したが全然嗅いだことの無い香りだ。
「勝った!これはね、『ファンファーレ』っていうんだよ」
得意げに解説されると妙に腹が立つ。
「それ、初めて聞いたな」
「あんまり知られてないからね。私もこないだ初めて知ったもの」
「それを出題するのはズルだろ」
「ズルじゃないよー。紅茶専門店に行けば、ちゃんとあるし」
「いやいや、マイナーなの含めればどんだけ種類あるんだよ」
なんて意地の悪い奴だ。
「ま、いいか。で、先週の熱い夜はいかがでしたか、姫さんや」
ちょっと探りを入れてみる。
「熱い夜って、何想像してるの?普通だったよー」
手をパタパタと煽って、苦笑いした様子の姫。さすがに、これだけでしっぽは出さないか。何か無いかなと周囲を見回すと、ベッド脇に何かが落ちている。
「ん?これって……」
落ちている何かを手に取ると、その小さな袋には、「0.01mm」と記載がある。
「ははーん。やっぱり、熱い夜だったんじゃないか」
拾ったソレの袋を見せつけると、みるみるうちに顔が赤くなっていく姫。
「あ、あれ?それは、ちゃんと、ゴミ箱に捨てた、と思った、のに……」
動かぬ証拠を見つけられて、表情がころころ変わる姫が実に面白い。
「まあまあ。照れなくていいだろ。姫もタカも健全な高校生だし」
からかってて楽しくなってくる。それにしても、紬の予想が当たっていたか。
「もう。そこまで言うなら、こっちにも考えがあるんだから。紬ちゃんから聞いてるんだからね。「縁ちゃんがXXXで○○○な感じだった」とか……」
伏せ字にしたくなる言葉を連発して、何やら俺とあいつの間にあったあれこれを暴露してくる姫。おいおい、紬。そんなことまで話してたのかよ。
「あー、悪かった、悪かった。こういう話は、お互い知らない方がいいよな」
「そうそう、だから、これ以上踏み込まないでね?」
顔は笑っているが、目は笑っていない。
「わ、わかったよ。まさか、紬がそんな事まで話しているとは……」
姫とアレコレ話したのは聞いていたが、そこまで色々話されているとなると、俺の羞恥心が大ダメージだ。全く、これだから、昔からの付き合いというのは厄介だ。
「……それより、二人きりでこうしてて大丈夫?」
気を取り直して、という感じで姫が聞いてくる。
「
「
姫は、どこか微笑ましげにそう言う。
「そういうところはって何だよ。そういうところはって」
「誤解受けそうなところには釘差しておくところ?」
「どうでもいいところで人間関係潰れるのは嫌だしな」
「別に、紬ちゃんだったら大丈夫だと思うけど」
「それでもだよ。念のため」
信じていないわけじゃないが、万が一はあるし。
「とにかく、そっちも順調そうでほっとしたよ」
「ひょっとして、それを確かめるために?」
「まあ、それもあるな」
「ほんとに、お節介なんだから。でも、ありがとうね」
唐突にお礼を言われてしまう。
「なんで、急にお礼?」
「そもそも、縁君が一貴君と引き合わせてくれたでしょ?」
「ああ、そういうことか。ま、成り行きだしな」
親友同士の恋とあっては、気になったのもあるし。
「ひょっとして、照れてる?」
姫は悪戯めいた微笑みでからかってくる。
「そりゃな。別に、俺がお節介焼きたかっただけだし」
「感謝くらい素直に受け取ればいいのに」
「性分だから勘弁してくれ」
勝手に焼いたお節介であんまり感謝されると正直むず痒いのだ。
「お返し、期待しててね?」
「お返し、何がだ?」
「今度は、私達が、お節介してあげようかなって」
「要らん要らん。だいたい、紬とは至って順調だぞ」
「紬ちゃんを、もっと喜ばせてあげたくない?」
にやりと笑いながら、姫が言う。
「わかった。とりあえず、話を聞こう」
そうして、聞かされた計画は、いかにもお嬢様な姫らしい、なんとも豪勢で派手な企画だった。確かに、これなら喜んでくれそうだ。
「なんつーか、色々と姫らしいな、ほんと」
「私らしいってところに含みがあるのが気になるけど」
「気にするなよ。でもまあ、少し気が早い気がするけどな」
「別に正式にするわけじゃないから、いいでしょ?」
「そうだな。しかし……」
紬はどんな反応をすることやら。
☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆
第6章はこれにて終わりです。ご覧いただきありがとうございます。
次の第7章か、第8章でそろそろ終了予定ですが、それまでお付き合いいただければと思います。
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