第18話 お節介の理由
「はあ。これでうまく行くといいんだが……」
部屋に戻るなり、どっと疲れが出た。
「これ以上心配しても仕方がないですよ」
溜息も漏れようというものだ。
「でも、
「らしくない?」
「やれるだけやったら、それ以上は悩まないって感じじゃないですか」
確かに、紬の言うことは的を射ている。しかし―
「他のことならそうなんだけどなあ」
昔のことを思い出してしまう。
「何か、理由でもあるんですか?
真っ先に思い浮かぶのがそれだよなあ。
「それもあるけど、ちょっと苦い思い出があってな」
「縁ちゃんにそういう思い出があるって意外ですね。聞きますよ」
急に真面目な顔をする紬。
「別にそれほど大した話じゃないんだが。ま、いいか」
隠すほどの話でもないし。
◆◇◆◇
それは、俺が中学1年生の頃だった。その頃の紬は小6だった。
中学1年生ともなれば、男女のお付き合いに興味を持つ奴もちらほらいる頃だ。
そんな当時、俺は仲の良かった女子と、同じく仲の良かった男子の仲を取り持つことになったのだった。
男子の方は、インドアで若干オタク気質。女子はアウトドアでオタク趣味には関心なし。まあ、女子の方はオタク趣味な男子にも理解がある方だったから、大丈夫だろうと思って、引き合わせた後、手を貸すことはしなかった。
結果として、二人は破局した。きっかけはささいなことだった。男子が大事にしていた何かのプラモを壊されたらしく、それに対して、女子の方はそんなものくらいでと言い放ったらしい。それがこじれにこじれて、あっという間に別れる羽目に。
そして、二人が破局した後なのだが、何故か両方から責められた。今になってわかるのだが、感情のはけ口が欲しかったんだろう。
そして、二人から責められる中で俺は思ったのだ。もうちょっと、大事にしてたプラモとか趣味のこととかを伝えられていれば、と。
◆◇◆◇
「それ、全然、縁ちゃん悪くないですよね!?」
話を聞き終えた紬が、青筋を立てている。
「自業自得じゃないですか。縁ちゃんが気にすることなんて別に……」
「そうなんだけど、思っちゃったんだよな。俺がちゃんとしてればって」
二人を引き合わせたという責任感もあったし。
「それは
「まあな。それは俺もわかってるんだが」
ほんとに下らないが、ふとした時にそう思ってしまうのだ。
「とりあえず、気分転換に遊びません?」
「気分転換?」
「何もしなかったら、悪い考えが浮かんでくるだけですよ」
「そうかもしれないな。よし、やるか」
紬は、ささっと自分の家に帰って、ゲーミングPCを取って戻って来た。
「またFPSか?」
少し苦笑してしまう。
「FPSは殺伐としてますから。今日はスローライフ系やりましょう!」
PCゲームでは主流ではないが、そういう系統のものも少なからずある。
「じゃあ、それやるか。ありがとな」
「これくらいお安い御用ですよ」
どんと胸を叩く紬。
いつもと違うが、今夜も二人でゲームをすることになりそうだ。
しかし―
「どうしたんですか?」
「いや、いい彼女を持ったなって」
「そんなこと言っても何も出ませんよ」
冗談めいた声色でそんなことを言う、俺の幼馴染で後輩で恋人な彼女。
そんな彼女に、心の中で改めて感謝したのだった。
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