第19話 親友からのお礼
あれから数日後。
「結局、
俺は
「ああ、それね。僕が勝手に独り相撲してたみたいだ」
自嘲気味に言うタカ。
「独り相撲?どういうことだ?」
「こないだだけどさ。僕、感じ悪かっただろ?」
大丈夫といいつつ、妙に沈んでたあの時か。
「そこまでは言わないが、落ち込んではいたな」
「やっぱり、ばれてたか……」
「そりゃな、何年の付き合いだと思ってるんだか」
あんな暗い顔をしてわからないわけがない。
「それで、詳細は省くけど、僕が姫ちゃんの気持ちを誤解してたみたい」
「そっか。良かったな」
何を伝えたのかは知らないが、少しは前進したのだろう。
一応、気を回したかいはあったということか。
「ありがとう。ほんと色々」
頭を下げてお礼を言われる。は?
「おいおい。俺は何にもしてないだろ」
「姫ちゃんが言ってたんだ。君のおかげだって」
は?まさか……
「姫の奴、何勝手に裏事情ばらしてるんだ」
そういうのは言わぬが華だろうに。
「ほら。やっぱり」
「カマかけたな」
普段カマかけなんてする奴じゃないから、罠にはまってしまった。
「急に姫ちゃんの態度変わったから、君のせいかなって思ったんだけどね」
図星なだけに言い返せない。
「それでも、お前らが自力で解決したんだろ」
俺がしたのは場のセッティングくらいだ。
「とにかく、今回はありがとう。
そう言って、タカは去って行った。
◇◆◇◆
俺の部屋にて。事の次第を紬に打ち明けたのだが。
「良かったですね。縁ちゃん」
何故だか俺の頭を撫でてくる紬。
「何してるんだよ」
なんだか無性に腹が立ってくる。
「落ち込んでたから、良かったなあってだけですよ」
「にしても、頭撫で撫ではないだろ」
「ちょっとしてみたくなったんですよ」
楽しそうに頭撫で撫でを続ける紬。
「それなら、こっちにも考えがあるぞ」
紬を追い回して、ベッドに追い詰める。
「ちょ、縁ちゃん。何するんですか?」
「何をすると思う?」
「エッチなこと……とか」
頬を赤らめながら言う紬。
ベッドの上で言われると洒落にならない。
だけど―
「なんで頭撫でてるんですか!?」
予想外だったようで、びっくりしているのが面白い。
「そりゃ、お礼の気持ちだよ、お礼」
「何かしましたっけ?」
不思議そうな顔をする紬。
「こないだ気晴らしに付き合ってくれただろ」
「別にあれくらい何でもないですってば」
言葉の通り、別に特に気を遣ったわけじゃないんだろう。
でも、なんとなく嬉しそうにも見える。
「とにかく、潔く受け取っとけ」
そう言って、頭をひたすら撫で続ける。
「キスとかの方が嬉しいんですけどね」
ぷくっと頬を膨らませて抗議の意を示しているのが可愛らしい。
「そういうのは、また今度な」
「約束ですからね、約束」
「わかった、わかった」
キスしても良かったんだけど、もっとちゃんとした流れでしたいしな。
「姫ちゃんからもお礼言われましたよ」
「あいつは、なんて?」
「気づかせてくれてありがとうって」
お礼を言ってくれるのは嬉しいが。
「それより、これでうまく行けばいいんだが」
「これ以上、心配しても仕方ないですよ」
紬も苦笑いだ。
「早く、俺を安心させて欲しいんだよ」
「おじいちゃんですか!?」
「親友同士の恋路だ。似たようなもんだろ」
「私も姫ちゃんには幸せになって欲しいですけど」
ま、こうやって余裕ぶってられるのも、隣にこいつがいるからだが。
――
※第2章はこれで終わりです。
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