第40話 姫の誕生日プレゼントとバカップルかもしれない俺たち
「姫ちゃんだと、ティーカップなんかは鉄板ですけどね」
デパートの中を歩きながら、紬が言う。
「しかし、既にその手のはさんざんプレゼントしてるだろ。飽きられないか?」
「姫ちゃんなら喜んで受け取ってくれると思いますけど」
「それはそうなんだけどな。もう一工夫したいところだ」
姫は紅茶通なので、紅茶関係がいいのではないかとこうして話し合っている。
「タカはどう思う?」
「可愛い系。ぬいぐるみとかどうかな」
「姫なら、それもありだな。目当てのものがあるのか?」
俺たちが紅茶関係ので、タカがぬいぐるみというのはいいかもしれない。
「こないだデートした時に、欲しいぬいぐるみがあるって言ってたんだよ」
「おお。それは鉄板じゃないか!」
既に姫が手に入れてなければ、ちょうどいい。
「でも、それってこの場にあります?
言われてみれば、デパートにそのぬいぐるみが売っているとは限らない。
「確か、クマのぬいぐるみだったんだけど……専門の店に行かないと無いかも」
「よっし。じゃあ、俺達のプレゼント買ったら、トイズルス行こうぜ」
トイズルスはおもちゃ専門店だ。普段、俺や紬はあまり行かないが、姫が好きなものがあるので、たまに一緒に見て回ることがある。
というわけで、俺は今までプレゼントしたことの無い柄のティーカップ、紬は紅茶のお茶っ葉を買って、プレゼント用に包装してもらう。
「君たち、決断が早いね」
「まあ、今回の本番はおまえが渡すプレゼントだからな」
「それに、姫ちゃんには無難なプレゼントですから」
別に適当に選んだわけじゃないけど、あいつならいつも通り喜んでくれるだろう。
さっさと出て、トイズルスへの道を歩く俺たち。
「当日の計画だが、いい感じになったとこで、俺達が離脱するのでいいよな?」
俺たちがいる前で告白も何もないだろうし。
「君の事だから、まだ何か企んでそうだけど」
「失敬な。今回は真っ向勝負だぞ」
「今回はって、普段がそうじゃないの、認めるの?」
苦笑するタカ。
「
「工夫してると言って欲しいな」
「回りくどい工夫してますよね」
「同じ意味だろ!」
性分なので、いい加減諦めて欲しい。
「で、告白の言葉とかは決めてあるのか?」
「さすがにそれは秘密だけど、一応ね」
照れくさそうに頬をかくタカ。
「聞いてみたいですね。一貴先輩の告白」
普段、抑えに回る紬までが、乗って来る。
「ICレコーダーでも仕込んでおくか」
「それ、犯罪ですよ!?」
「冗談だ」
なんて、じゃれあっていると、
「君たち、本当に仲がいいね」
またも羨ましそうに言うタカ。
「おまえも、その内平気でやれるようになるって」
「平気でやらなくていいですからね!?いつもの誠実な先輩で居てください」
「俺が誠実じゃないとでもいうつもりか」
「変な企みをしたがるからですよ」
そんなやり取りを見たタカは、
「僕は普通にお付き合いをしたいな」
なんてつぶやいたのだった。まるで、俺達のお付き合いが普通でないようだな。
そして、トイズルスにて。
「ああ、あった、あった。これだよ、これ!」
タカが叫ぶ。入り口から入って近くのところにある、ぬいぐるみコーナーにそれはあった。可愛い子熊のぬいぐるみで、いかにも姫が好みそうなやつだ。
「あって良かったな、タカ」
商品名が分かれば通販で探せるが、そうじゃないと、実店舗を探さざるを得ない。
「姫ちゃんらしいですね」
と、紬がコメント。
「でも、僕がぬいぐるみとか変じゃないかな……」
「別に大丈夫だろ。変じゃないって」
「そうそう。姫ちゃんなら、気にしませんし」
「ほんと、君たちには助けられてばかりだね。わかったよ」
ぬいぐるみをレジに持っていくのを尻目に。
「タカが好きな奴を前にすると、こんなになるとはな」
一目惚れをした事を相談された時からそうだったが。
「こんなにって?」
「ああ。紬はタカとの付き合いが浅かったか。なんていうか、姫の事以外で、こんな風に自信なさげなタカはあんまり見たことがないんだよな」
「確かに、穏やかですけど、言うことはちゃんと言いますよね」
「だろ?恋は人を変えるとはホントだな」
なんて思ってしまう。
「
「おまえを弄るのが楽しくなったし、他にも色々変わったぞ?」
「そういう事じゃなくて。というか、あんまり人で遊ばないでくださいよ」
「それはできない相談だな」
「そういう表面的なところはともかく、根っこの部分ですよ」
「そんなもんかね」
「そうですよ」
紬と付き合って結構変わったと思うのだが、紬から見るとそうでもないらしい。
「お前は、結構変わったな」
「ど、どういうところですか?」
「なんていうか、凄い甲斐甲斐しくなった」
そう正直にコメントしたのだが。
「うう。好きな人に喜んで欲しいって思うのは自然な事じゃないですか!?」
「落ち着け」
顔を凄く赤らめて動揺しているので、髪をなでて落ち着かせる。
「こういう風に、動揺してくれるようになったのも、嬉しいな」
「うう。完全に遊んでますよね」
恨みがましい目を向けてくる紬。
「嫌か?」
「嫌じゃないですけど……その内、また反撃しますから」
「楽しみにしてるよ」
こいつの事だから、また可愛いことをしてくれるに違いない。そんな風にじゃれていると、気がついたら、タカが後ろから見ていた。
「やっぱり、君たち、バカップルだよね」
「じゃれあってるだけで、「バカ」ップルは心外だな」
「そうですよ。縁ちゃんが弄ってくるだけです」
俺たち、バカップルじゃない、よな?
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