第45話 4人でやってみたいこと

 相変わらず梅雨が鬱陶しいある6月の朝のこと。


「おはよー」

「おはようございます」


 2教室に入って、友達に挨拶をする。


「おはー、えにし。なんだかもう、すっかり夫婦だね」

「ほんとに、羨ましいものだ」


 ヲタ友である内野茂うちのしげること、しげっちゃんと、郷野努ごうのつとむがそう返す。


「だ、そうだけど?」

「少し恥ずかしいですけど、悪い気はしませんね」


 照れつつも素直にそんな返事をするこいつ。


「あー、もう、ほんと仲がいいことで。からかう気も起きないよ」

「いい加減結婚したらどうだ?」


 結婚、か。こいつらは冗談を言っているだけだろうけど、以前、母さんが入院してたときは、少し意識したな。ふと、悪戯を思いつく。


「悪くないな。どうだ、紬?学生結婚とか」


 きっと、慌てるだろうと思ったのだが。


「まだ先ですけど、いいかもしれませんね」

「……」

「……」

「……」


 なんて素で返されてしまう。おいおい。


「あの、冗談なんだが」


 しーんと場が静まる。


「あ、は、はい。もちろん、わかっていましたよ!?」


 ようやく我に帰ったのか、紬が今更慌てている。


「いや、絶対、素だっただろ。何想像してたんだ?」

「それは秘密です」


 ぷいと顔をそむけられてしまうが、やけにニヤニヤしてた気がするんだよなあ。


「おはよう、縁。相変わらず仲がいいね」


 挨拶してきたのは、親友のタカ。


「そういうおまえも、土曜日は姫といちゃこらしてたんだろ?」

「イチャコラって……」


 言いよどんだ様子に何かあると直感した俺は、教室の端っこまで連れて問い詰める。ついでに、紬も着いて来た。


(で、姫とはどこまで行ったんだ?)

(どこまでって……)

(姫から、キスまではしたって聞いたが)

(え?姫ちゃん、そんなことばらしちゃったの?)

(やっぱりな。そうかそうか。早くもキスはしたかー)

(ちょっと、カマかけたね?)

(別にいいだろ、それくらい)


 先週の土曜日でかなり進展したのではないかと踏んでいたが、正解だったようだ。


(姫ちゃんもグイグイ来ますねー。ひょっとして、一貴かずたか先輩からですか?)


 普段ならストッパーになる紬も気になっているらしい。ノリノリだ。


(さすがに、これ以上は勘弁してよ……)

(わかった、わかった。幸せにな)

(お幸せに、一貴かずたか先輩)


 あんまり追い詰めても悪いかということで、退散。


「一貴と端っこで何してたの?」

「いや、こっちの話」


 適当に返して着席する。何はともあれ、こうして無事に2人がくっついたわけで、紹介した俺としてはほっと一息だ。


 しかし、こうなると、以前から、4人である事が俄然現実味を帯びてくる。それは―

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