エピローグ

エピローグ 続いていく縁

「姫ちゃんたち、綺麗ですね」

「タカの奴も様になってるな」


 披露宴の会場で囁き合う俺たち。今は、昔からの親友である結城一貴ゆうきかずたか三条姫さんじょうひめの結婚式だ。


「そういえば、姫の名字も結城になるんだよな」

「私達、下の名前で呼んでるから実感湧きませんけどね」


 高校2年生の時に付き合い始めた2人だが、それぞれの大学に進学して、順当に就職した社会人2年目の春に、無事結婚式にこぎつけたというわけだ。


「姫が「いつプロポーズしてくれるのかな」とか愚痴ってたよな」

「結局、姫ちゃんからプロポーズしちゃいましたけどね」


 顛末を知っている俺たちは苦笑いだ。


「タカとしては、社会人生活が軌道に乗るまで待ちたかったらしいけど……」

「そういうところ、男性は慎重なんですかね」

「俺はかなり昔にしたつもりだが」

「なんせ、高校生の時ですもんね」


 高校生の時の結婚式ごっこを思い出す。


「でも、見ていたら、結婚式したくなってきました」

「あれ、もう一度やるのか?めっちゃ疲れたの覚えてるだろ?」


 高校生の時の俺たちのなんと浅はかだったことか。本物の結婚式といったら、指輪はもちろん、挙式の会場や費用の計算、誰を呼ぶか。披露宴のプログラム、二次会の手配などなど。さらに、結婚祝いのお返しなどなど、あげればキリがない。


「それでもですよ。やっぱり、ウェディングドレスはまた着てみたいです」

「じゃ、ウェディングドレスを貸してくれるとこでも行ってみるか」

「それいいですね。じゃあ、来週、どうですか?」

「いいけど、少し、お腹大きくなってきてないか?」


 まだ臨月というのには遠いが、目で見てわかるくらい、妊娠した事がわかるようになってきた今日この頃だ。


「確かに、ちょっと不格好ですね。子どもが産まれてからにしますか」

「子ども産まれたら、そんな余裕もないって聞くけどな」

「毎日、寝不足で大変だとか、色々聞きますよね」

「ま、いざとなったらなんとかするからさ」


 なんて偉そうな事を言っているが、いざとなったら母さんが多少協力してくれることになっている。俺たちの両親は当然、紬の妊娠を喜んでくれたが、なかでも俺の母さんは一際大喜びだった。 


「あ、姫ちゃんたち来ますよ」


 今は、新郎新婦がそれぞれのテーブルを訪れる流れだ。


「姫ちゃん、一貴さん、おめでとうございます!」

「おめでとう。タカ、姫」


 俺たちのテーブルを訪れた姫とタカが足を止める。


「照れるね、姫ちゃん」

「ね。カズ君」


 視線を交わす二人は、長年付き添ったという感じがして、もう高校2年の頃の初々しい感じはしない。


「あーもう、アツアツなことで」

「縁ちゃん、無粋ですよ」


 むず痒くて、口をついて出た言葉を注意されてしまう。


「その言葉はそっくりそのままお返ししたいな」

「ね。もう子どもまで出来てるし」


 さらに、2人からは余裕のツッコミ。余裕で弄れた頃の2人はどこに行ったのやら。


「でも、ここまで縁が続くのも不思議な気分だね」

「縁、か」


 ふと、俺の名前の由来を思い返す。


「どうしたの?」

「俺の名前の由来さ、子どもの命名のために、母さんに聞いてみたんだ」

「それで?」

「人と人のえんを結べるような子になって欲しい、て話らしい」

「それは、なんともピッタリだね」

「昔から、お節介だったよね」


 なんて笑われてしまう。


(無理やりいい話風味にしなくてもいいんですよ?)

(こっ恥ずかしくて、言えるかよ。この名前を前から意識してたなんて)

(そういうところ、未だに照れ屋さんなんですから)


 なんて、頬をつんつんとされてしまう。


(それはお前もだろ)

(う。それはそうですけど)


 そう、名前に恥じないように、なんて、こっ恥ずかしくて、とても言えなかったが、昔から俺が思っていたことだったのだ。そして、こいつの名前の由来も。


 何はともあれ。


 親友同士の縁を結べて-


 そして、最愛の人との縁が結ばれた今に感謝だ。


☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆


 これにて、「恋愛相談に乗ってみたら、真面目で可愛い後輩女子に告白されていた。」は終了となります。本編で語れなかった色々はありますが、とりあえず無事一段落となってほっとしています。


 感想で、まだ終わってほしくない旨のコメントを頂いたのは本当に嬉しい限りですが、彼らの物語はこれからも続いていくんだ、と作者的にも思っています。それでは、また。

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恋愛相談に乗ってみたら、真面目で可愛い後輩女子に告白されていた。 久野真一 @kuno1234

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