恋愛相談に乗ってみたら、真面目で可愛い後輩女子に告白されていた。

久野真一

プロローグ 親友の縁結びを始めてみた

第1話 親友に恋愛相談を受けたがどうすればいいだろうか

「相談って何だよ、タカ」


 10年来の親友に尋ねる。


 ここは、某有名ファーストフードチェーン店。

 俺たちと同じくらいの年代の男女をはじめとして、若者がひしめいている。

 中にはカップルもちょくちょく。イチャコラしやがって。


 俺は鈴木縁すずきえにし。平凡な男子高校生だ。趣味は映画観賞に、洋ゲー(海外製のゲームのこと)、漫画、などなど。洋ゲーは最近後輩とよくプレイしているのだが、それはおいておこう。


 まあ、インドア系オタクといったところだ。学校内のトラブル解決を請け負うことがあるので、「相談屋」と呼ばれることもあるが、勘弁して欲しい。


 向かいに座るのは、結城一貴ゆうきかずたか。小学校以来の親友で、中学と高校まで同じだ。親しみを込めて、タカと呼んでいる。バスケ部のエースで、イケメン。気遣いもできる奴で、大変モテる。


 そんなタカから、相談があると言われたのが今朝。

 こうしてファーストフード店で続きをすることになったわけだ。


「縁はさ、一目惚れの経験ある?」


 親友から発せられた言葉に、一瞬意味がわからず、フリーズする。


「別にないが。いきなりどうしたタカ。熱でもあるのか?」


 タカは大変モテるが、今まで告白してきた女子を全て振っている。

 曰く「お互いのことをよく知らないのに付き合うのは違う」らしい。

 贅沢な事だと思うが、気持ちはわからないでもない。


「恥ずかしい話だけど、一目惚れしたんだ。見知らぬ女の子に、さ」


 そう告白するタカは熱に浮かれたようで、本気なことがよくわかった。


「……マジか?」


「うん。本当。縁は僕がそういう冗談言わないの知ってるでしょ?」


 大真面目な顔で言われてしまう。確かにそういう奴だった。


「すまん。そうだな」


 少し考えをまとめる。


「一目惚れをしたのはわかった。で、どうしたいんだ?」


 そこが問題だ。できるなら手助けをしてやりたい。


「そこで悩んでるんだよ。僕はさんざん、よく知らない相手と付き合うのは違うと言って、相手を振ってきたわけだよね」

「まあ、そうだな」

「そんな僕が、一目惚れをしただけのよく知らない相手にお近づきになりたい、なんてよこしまなんじゃないかって」


 タカは本気で悩んでいるようだ。難儀な奴だ。

 好きな相手に近づきたいなんて、普通だろうに。昔から変わっていない。


「タカは考えすぎだ。別に、好きな相手とお近づきになりたいなんて普通だろ?」


 少し割り切り過ぎた言い方だったか。。

 ただ、そうでも言わないと、こいつは自縄自縛に陥りかねない。

 俺以外にはおくびにも出さないが、繊細な奴だしな。


「そうだね。そうかもしれない。気が楽になったよ」


 幾分ほっとした様子のタカ。


「その女子の情報とか無いのか?力になってやれるかはわからんけどさ」


 タカにはずっと前から借りがある。

 こういう時にこそ力になってやりたい。


「成女っていえばわかる?」


「ああ、あのお嬢様高校か」


 成風女学園せいふうじょがくえん(成女)は、俺たちの通う成風高校せいふうこうこうから歩いて10分くらいのご近所にある女子校だ。

 偏差値も高くて、俺たちの間ではお嬢様高校として知られている。


「成女の制服を着てたから、そこの子だと思う。2年みたいだから、同い歳かな」


 一目惚れの割によく観察してるなと、俺は感心する。


「漠然としてるな。もっと情報無いのか?成女は知り合い居るから、聞けるぞ」


 小学校の頃に知り合った女友達に、成女に通っている奴が居る。

 そいつとは今も交流があるので、話を聞くことができる。


「それ、初耳なんだけど」


 驚いた様子のタカ。


「そりゃ、聞かれなかったからな」


 その女の子とは、通っていた塾が同じだったのがきっかけで知り合った。

 塾に行って無かったタカが知らなくても無理はない。


「で、何かないのか?」

 

「うーん。背が結構高めだったかな。髪は染めてなくて、ロングヘア―で……」


 思いつく限りの特徴を挙げて行くタカ。

 特徴に当てはまる奴を知っているんだが、まさかな。


「そうそう。星型の髪飾りをしてたんだ。あまり見ないから、印象に残ってる」


「マジか……」


 そこまで当てはまる奴といえば、もうあいつしか居ない。

 偶然もここまで来ると凄い。

 

「どうしたの?」


「いや、なんでも。とりあえず、知り合いに聞いてみるわ」


「ほんと、助かるよ」


「気にすんなって。俺の方が借りが多いくらいだし」


 本音だった。昔から、こいつには色々助けてもらったからな。

 これくらい、大したことじゃない。


「いや。絶対、僕の方が借りが多いって」


 そう言うと決まってこいつは反論する。

 まあいいや。


 夕方になって、タカと別れた俺。

 さっさくスマホを取り出して、電話をかける。

 さて、どう切り出したものか。

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