学園授業【戦闘学2】
「さて、とりあえず作戦を考えましょうか」
眼鏡をクイッと上げ話す生徒の名はローグ・ディ・ディアス
ディアス家の長男で今年の学年首席
特に頭脳が優れており、母親が王国一の参謀をしている
幼い頃から戦略、戦術、用兵等の兵学を叩き込まれて育った
剣の腕も中の上程で細剣を得意とする
「そそそそそうだね!最初から負ける前提でも少しは頑張らないとね…ハァ……」
少々テンパりながらも最初は元気良く発言をしていたが自信が無いのか徐々に話す声が小さくなり最後にはため息を吐く生徒がセオドア・ディ・コフィン
コフィン家長男にして今年の実技試験でトップの成績を取った(ユートが入学するまでは)
見た目は小柄で優男、母性本能をくすぐるような幼い顔立ちをしている
基本的に消極的な発言をするが実力は本物
ユートと会う前のクリスが負けた程である(今はユートに指導してもらっている為今戦うとわからない)
得意な武器は長剣、槍
「流石に四人いりゃ多少は食いつけんじゃね!?とりま俺も頑張るし〜」
軽いノリで話す生徒はジェイス
見た目はチャラ男で真面目そうな雰囲気はまるで無いが7歳の妹がおり、両親が夜遅くまで働いているので毎日妹の世話をしている
ちなみに実家は王都で有名なケーキ屋さん【天使の休憩】
学校が休みの日は家の手伝いをしている
得意な武器は弓、短剣
「とりあえず俺が突っ込む!!後は後ろから三人が突っ込む!それでどうだ?」
アホな発言をし、他の三人が呆れた顔をして見つめる先にいる生徒がウィリー
ガタイがいい、凄くガタイがいい、よく鍛えられててガタイがいい……以上!!
実家は大工屋で両親共にガタイがいい
得意な武器は斧
(座学の成績は普通に良い)
「ふむ、ウィリーが突っ込むのは良いとしてその後はどう布陣して戦うかだね
ジェイスは弓で牽制しつつウィリーの援護する後は…」
ローグは全員の得意分野を活かしながらいくつかの案を出すとジェイスとセオドアが質問をする
そしてその話をうんうんと聞いているウィリー
(あれが青春ってやつだな。俺にはなかった時代だな…そういえば学生時代に唯一仲が良かったあいつは今は何をしているんだろうか)
ローグ達の話し合う姿を見ながらそんな事をふと思うユートであった
十数分後…
「よし!それじゃあ男子の試合を始める!・・・・はじめ!」
ブレナンの合図で試合が始まった
ユートは刀を下段に構え相手の出方を見る
するとウィリーが勢いよく突っ込んでくる…が武器は装備していない
ウィリーはタワーシールドのような大きな盾を前に構えながらユートに突っ込んできている
ウィリーから少し離れた左右にローグとジェイスが弓を構えユート目掛けて矢を放つ
「なるほど。接近するウィリーは囮で遠距離で勝負か」
ユートはそう言いながら飛んでくる矢を木刀で叩き落とす
「ジェイス!手を止めるなよ!試合が終わるまで打ち続けろ!打ちながらゆっくり展開だ!」
「ちょ!これまじできちぃ!」
ローグがジェイスに指示を出しながらユートを囲む様にゆっくりと展開していく
ローグはジェイスの打つタイミングに合わせたり、たまに少しずらしながらユートに矢を放つ
さすがのユートも叩き落とすだけでは耐えられなくなり、前後に動いたりしゃがんだりしながらかわしていく
しかし矢に気を取られている間にウィリーはユートの近くまで迫ってきていた
「ユート覚悟おおおおおおおお!!」
ウィリーは大声を上げるとローグとジェイスは矢を放つのを止め、ジェイスはユートの後ろに回るように走り出す
「中々良い作戦だ。だが真っ直ぐに突っ込むだけなら避ければいいだけだ」
ユートはウィリーから見て左に避ける
すると避けるのを分かっていたのか、避けた先に矢が放たれていた
「これでしゅ〜りょ!」
その矢を放ったのはユートの後ろに回り込んでいたジェイス
ユートは少し驚いたが楽々と木刀で矢を振り払う
「マジかよ…ここまで読んでんのかよ……」
驚いた様子でユートを見つめるジェイス
だがローグの作戦はまだ終わりではなかった
「……僕もいる…よっ!!」
ユートが声の聞こえた先を見るとウィリーの背中から飛び、ユートの頭上に剣を大きく振り下ろしているセオドアいた
そう!ここまでがローグの作戦であった
ローグの作戦はこうだ
まずは突進!突進!と言っているウィリー
何の考えもなく突進してはただやられるだけ
ならばそう簡単に倒れないように防御力を上げる為に身体を隠す程大きな盾をウィリーに持たせた
そしてウィリーの背中に小柄なセオドアを隠す
ローグ、ジェイスは弓矢でかく乱し、ユートの目からセオドアの場所を悟らせない様にする
最後にセオドアでユートを倒す。簡単に説明するとこんな作戦だった
誰もがユートの負けだと思っていた
しかしユートは、ふっと少し笑いながら「予想はしていた」と言いながら矢を振り払った勢いそのままに上半身を捻り持っている木刀を加速させセオドアに向けて振る
「グッ!」
セオドアは渾身の一撃でユートを狙うもやはり冒険者として常日頃魔物達を相手に戦っているユートとは地力の差があり押し負けてしまいそのまま弾き飛ばされた
ローグは弾き飛ばされたセオドアを見て弓をカランっと落とす
ジェイスは既に座っており両手を上げこうさ〜んっと言っている
ウィリーは方向転換し、ユートに突進しようとするが既にユートが後ろから首筋に木刀を当てているのに気づき盾を離す
パンパン!
ブレナンが手を叩き試合終了!と合図する
ブレナンはセオドアに近寄り体力ポーションを飲ませる
セオドアはゆっくり立ち上がりユートに近寄ってくる
「ユート君は英雄って呼ばれるだけあって流石に強いね。僕なんて詰めが甘くってダメだなぁ…」
「いや、良い一撃だった。俺も久しぶりに純粋な剣技のみのぶつかり合いができて楽しかったよ」
ユートは右手を出しセオドアと握手する
「こうも私の作戦がことごとく潰されるとは思わなかったよ
ユート君に一撃は当てられると思っていたんだがね」
眼鏡をクイッと上げながら近寄ってくるローグ
「良い連携だった。後一人増えてたらまずかったかもしれないな」
「ふむ…今回の試合をサンプルにまた新しい作戦を考えてみよう」
ローグは再び眼鏡を上げながら話すとその後ろからウィリーが現れる
「俺にもっと突進力があれば!!!!」
「・・・確かに良い突進だった。ぶつかる前に止まってフェイントをかける、または盾の中に武器を隠して不意打ちをするとか…」
「なるほど!!ならばその為には更に筋肉を鍛えて突進力を上げねば!!!!」
「「「・・・」」」
三人が無言で苦笑いをしていると遠くから微かに声が聞こえてきた
「・・・・たし!・・めっっっちゃ!・・・・・わ!」
疲れているのか一部分しか聞こえない声で叫ぶジェイス
ユートは周りを見回し中々面白いクラスだなと思いこれからの学園生活が楽しみになっていた
ドガーーーーン!!
その音と共にユート達がいる建物の壁がガラガラと崩れる
その場にいた全員が音がした壁の方を見ると一人の男が飛び込んできた
ズサーーー!!
「ほんっっっとにすいませんでした!!!!この件に関しては父上には何卒何卒〜」
綺麗なジャンピングスライディング土下座をして謝る生徒を見てブレナンが頭を掻きながら声をかける
「はぁ…またですかグレイグ殿下」
ユート達の目の前で伏しているのはエルシュタット王国王位継承者であるグレイグ・ディ・エルシュタット王太子であった
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