モルザミーク山



タッタッタッ


ユート達は王都を出発し北にあるモルザミーク山を目指して足早に進んでいた

モルザミーク山に行くにはケープ村を通り、ヴァイルの森を抜けた先とかなり距離があるので今日はケープ村に泊まり、明日の朝にドラゴン討伐を始める予定だ


「ユート君とパーティだなんてとても嬉しいよ!」


「俺もだな!」


アレックとマーキスがユートに声をかける


「俺も二人と組めるとは思いませんでしたよ

それにしてももっと速度出さないと間に合わなくなりませんか?」


「大丈夫だ!夕方には余裕で村に着くぞ!

無理して魔力消費してもいい事ないぞ?温存だ温存!」


マーキスの言葉にアレックも同意なのか頷いていた


「それにしてもユート君の腰の刀が増えてるね?」


「これか?これは前にガモンさんに依頼してた物だ

まだ完成では無いらしいがドラゴン討伐に必要だと思って昨日渡してもらった」


ユートは腰の刀をポンっと叩いて話す


「例の刀か!ガモンもかなり気合入れてたのか店まで休んで作ってたからな!」


「そうなんだ。今回が初陣だね!」


「そうだな…頑張ろうな赤月。今日も頼むぞ黒夜(こくや)」


ユートは二つの刀を交互に見ながら刀に話しかけた









日が沈みかける頃、ユート達はケープ村に辿り着いていた

宿屋でアレックと談笑しながら休んでいると村長に依頼の話をしに行ったマーキスが急いで戻ってきた


「おい!少し面倒な事になったぞ!」


「どうしたんですかマーキスさん」


「最近森から魔物が村によく来るんだとよ

多分山から逃げてきた魔物が森を通って村に流れて来てるんだろう

今は村の人でどうにか対応しているが俺達が山に行った後が恐いな」


「それはまずい事になりましたね……

さすがに僕達でも山から降りてくる魔物までは手が回りませんね・・・」




二人が考えているとユートが二人に提案する


「では俺が一人で山に行き、二人が村を護るのはどうですか?

さすがに一人では村全体は把握出来ないと思うのですが」


「お前が良いならいいが一人で大丈夫か?」


「ユート君なら大丈夫ですよ!なんたって僕達より強いんですから!」


「本来なら一人でやりたくないですが、村の人達が危険に晒されるなら仕方がないと思います」


ユートの言葉を聞いて二人は頷く


「よし決まりだ!今日は俺とアレックが交代で村を警護するぞ!

ユートは明日に備えて寝ろ!」


「わかりました。村の方はお願いします」


「僕達に任せて!ユート君はドラゴンを頼むよ!」


二人と別れユートは部屋に戻り就寝した










「よし行くか!」


ユートは夜が明ける前に目を覚まし出発の準備をする

宿屋から出るとアレックが外で待っていた


「やぁユート君。ちゃんと寝れたかい?」


「あぁ大丈夫だ。魔物はどうだった?」


「そこそこ来たかな?20〜30体位だけだしそんなに強くないから問題ないよ」


アレックが指を指しながら話すと広場に魔物の死体が積み重なっていた


「ワイバーンとロックバードが多いね

多分あれが山から流れてきた魔物だろうと思うよ

後は森から一緒に出てきたのはアサシンスネーク、ブラッドハウンドかな?

マーキスさんと群れを壊滅させたから当分村には来ないだろうね」


「さすが銀狼と強固の二つ名持ちだな」


「ははっ!まぁユート君も気をつけてね」


「わかった。後は頼んだ!」


ユートはアレックに別れを告げると黒夜を抜き森の中に入っていった









ダッダッダッ



スパッ



「これで何体目だ?数が多い」


ユートは走りながら魔物を切り倒していく

山に近づくにつれて魔物の数が徐々に増えている


「ん?誰かが襲われているのか?」


魔力感知を使用しながら進んでいると魔物が何かを取り囲んでいるのを感じた


(こんなとこに人か?魔力が少なくなっているからまずいな!)


ユートは魔物の群がる方に急いで向かった











「ギャウ!ヴーー!!」




小さな竜が周りを囲む魔物に対して威嚇をしている

身体中に傷を負いながらも必死に抵抗していた


何故ここにいるのかというと、知らない人間に捕まり馬車で運ばれている途中、魔物に襲われたタイミングで運良く逃げ出したのだが、何処か分からずひたすら森の中を彷徨っていた所、魔物に囲まれたのだった



「グルル〜ケポッ・・・」



炎を吐こうとしたがもう魔力が殆どなく小さい煙を吐いただけ



グゲゲゲ!


ギャギャ!


シャーー!



魔物達は威嚇しながらジリジリと距離を詰める








ギュン



ズパッ


ザシュ


ドシュドシュドシュ



「邪魔だ」



突如現れたユートは竜の前にいる魔物を一気に切り伏せる


「囲まれていたのはドラゴンか?まあいい、とりあえず周りを全部蹴散らす!」


ユートは赤月を抜き二刀流になる








「神崎流刀術二刀:乱風(らんぷう)」




ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン





スパスパスパスパスパスパ




ユートが刀を振るうと目には見えない刃が飛び、魔物達の身体中が切り飛ばされていく



ビチャビチャッ



魔物達は音を立てて次々に倒れた



「ふう、終わりだ「キュー!」」



ユートが振り返ると同時に子ドラゴンが顔にくっついてきた


「ぐっ苦しい・・・ぷは!」


子ドラゴンを無理やり引き剥がすと今度はお腹に突進してきた


「キュー!」


「ごふっ!こっ・・・こいつ強い!」


だが敵意は無い様なのでそのままにすると肩に乗り顔を擦り寄せる


「キュ〜♪」


「わかったわかった。仕方ないからこのまま連れてくか」


ユートは子ドラゴンを簡単に治療した後、肩に子ドラゴンを乗せ森を抜けて遂にモルザミーク山に辿り着いた


「これからが本番だな。お前も危なくなったら逃げろよ?」


「キュ!」


「俺の言葉を理解してるのか!?」


ユートは綺麗な敬礼をして返事をする子ドラゴンに驚いた











「はぁはぁ、結構キツい山道だな…

魔物はいないが道が荒れてて進み辛い」


「キュ?」


「お前は肩に乗ってるだけだから余裕そうだな……」


ユートは肩に乗るドラゴンに話しかけながら歩く

すると急に周囲が暗くなり風が吹き荒れる





【貴様!我が娘に手を出した人間か!!】




上を見上げると大きく翼を広げたドラゴンがユートに向け殺気を放ち飛び込んできた

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