エルシュタット学園編
エルシュタット学園
ユートは持ち帰ったグラウディンの素材の交渉事に無理やり出席させられ、バタバタとした毎日を過ごしていた
それから少し日は流れ、ユートは国王からの依頼で王都屈指のエルシュタット学園の推薦入試を受けにきていた
「校舎がまるで小さい城だな」
ユートはそびえ立つ学舎を見てぽかんとした表情で呟く
入試は月一で行われているらしく、門の前には自分と同年代の受験生が多く集まっていた
てってれてーてってれてーてててててー!!
みんな〜何話ぶりだろう?おしえて!アヴェルくんのおじかんだよ〜♪
久しぶり過ぎてみんな忘れてない?ぐすん
アヴェルくんのコーナーはえいきゅうふめつだよ♪
久しぶりの今回はエルシュタット学園について教えるよー
エルシュタット学園は王都の中にある唯一の学園だね
エルシュタット王国には四つの学舎があるんだ〜
昔はエルシュタット学園卒業って言えば箔がつくって言われてたんだけど近年は他の学校が伸びてきて落ち目なんだよね〜
毎年行われてる魔闘武祭(まとうぶさい)でずーっと三位をキープしているんだ
今年はユートくんが入る?予定だからどうなるか楽しみだね!
ボクは地球産ポテチとコーラを広げてゴロゴロしながら観戦する予定だよ!どやあ
そろそろ時間だね
では忘れた頃にまたやるかも?ね!
またねーノシノシ
ユートは受付で国王から渡された推薦状を職員に見せると驚いた表情を見せ、急に丁重な対応で試験会場に案内される
国王からの推薦がある為か試験らしい試験は無いみたいだが、推薦状の最後に【教師達や生徒達に今の実力を見せてやって欲しい】と書かれていた為、ユートは学園内の練習施設に黒夜を持って立っていた
ユートの後ろには学園の生徒や教師達が噂を聞きつけたのか溢れかえっている
「ではユート君、まずは君の技を見せて欲しいの」
白髪で長い髭を生やした男性がユートにそう話し掛けるとユートの目の前に身長の二倍はあるゴーレムが現れた
「これは儂の土魔法で作ったクレイゴーレムじゃ
強度を増すようにブーストを付加しておる
ユート君の好きに攻撃してみなさい」
(この人は・・・強いな)
白髪の男性がニコリと微笑みながら話す
ユートはふぅーと深呼吸をし、黒夜を鞘に納めて下半身に体重を掛けゴーレムの正面に一気に踏み込む
「神崎流刀術:絶一刀」
ズパン!と音がするとゴーレムの体がお腹から真っ二つに割れる
ユートはゴーレムの方を振り帰りながらブーストを足全体に付加し、ゴーレムだった物体を上に蹴りあげる
「ついでにもう一つ 神崎流刀術:火花」
宙に浮いたゴーレムだった物体を次々に刀の峰でガンガンと叩き粉々にしていく
黒夜を鞘に納めるとパラパラと宙から小さい土の塊が降ってくる
「とりあえずこんな感じでよろしいですか?」
ユートは白髪の男性の方を見て話すと男性は目を大きく広げゴーレムだった物体を見つめている
その周りにいる人達も一同に同じ様子で見つめていた
少しシーンとした状態が続き白髪の男性が我に返る
「さっ流石は国王様から推薦を受けるわけじゃな!
では次は魔法を見せてもらえんかの?」
少し青ざめた顔をしながら違うゴーレムを作り出す
「先程のゴーレムじゃ強度が足らなさそうじゃからこれは儂のオリジナル魔法で作ったゴーレム、名はクレイアースゴーレムじゃ!
体自体は土じゃが鎧代わりに粘土を纏っておる!どうじゃ?凄いじゃろう!」
新たに作られたゴーレムを自慢しながら話す
前のゴーレムと大きさは変わらないが、確かに前のゴーレムよりも厚みがあり硬そうなイメージ
魔力操作が上手なのか外側の粘土にブーストを付加し、中身には魔力を多く注いである
ユートは眼で魔力を見ながら分析する
「では得意な魔法を使うんじゃ」
白髪の男性がそう言うとユートは少し考え始める
(複合魔法はまずいだろうな…ただあのゴーレムは見るからに硬そうだ・・・爆発系…いや、周囲に被害があったらまずい……さてどうする?)
ユートは少し頭を悩ませながらも考える
するとふと思いついたのか白髪の男性に質問をする
「すみません、魔力を伴った攻撃方法でもよろしいですか?」
「ふむ?そうじゃな…魔力の攻撃なら大丈夫じゃろ」
男性から許可をもらいユートは黒夜を構える
見物している人達は皆、何故また武器を構えているのか不思議な顔をしている
(さて、こっちでは初めての実践だな。とりあえずやってみるか)
ユートは黒夜に魔力を通し始めた
それに応じてか薄暗く光っている刀身がみるみるうちに光を失い更に深い黒に染まる
その刀身を見た見物人達は唯ならぬ雰囲気を感じ一同に体を震わせ冷や汗を流す
刀全体に魔力を行き渡らすとユートは風魔法を刀身に付加し、足全体と腕全体をブーストし刀を振り上げる
「では放ちます」
その言葉に皆ゴクリと喉を鳴らす
「神崎流刀術:風絶(ふうぜつ)」
ユートが刀を振り下ろすとゴーレムにゴオオオと強い風が吹く
風はゴーレムに当たると左右に分かれ施設の壁に打ち当たる
風は壁を砕き巨大な穴を作る
しかしゴーレムの体には傷がほとんどない
「凄い威力の風魔法じゃな・・・確かに刀で魔法を飛ばすアイディアは良かった。じゃが儂のゴーレムは倒せなかったの」
白髪の男性がそう呟きユートに近寄る
「いえ、ゴーレムは倒せてますよ?」
ユートは刀を納めながら話すとゴーレムに近寄り手で軽く叩く
するとゴーレムの体が左右に分かれガラガラと音を立て朽ちていく
「見た目では分かりずらいと思いますが軽く衝撃を加えるとこの通りです」
ユートがそう話すと男性はゴーレムに近寄り確認する
「うむむ……強烈な風を体に浴びせ左右に引きちぎったって事かの」
ゴーレムの体を見ながら分析をしユートに確認をとる
「そうです。それに左右に引っ張られた状態でかすり傷でも負わせれば一瞬で引きちぎれます
風魔法を放ちぶつかった衝撃・・・風圧ですね。それでゴーレムの体に衝撃を与え小さな亀裂を作りました」
男性は淡々と解説をするユートを見てふむふむと関心し頭を上下に揺らす
「それに使用した風魔法は初級のウィンドブロウじゃな?
無詠唱で名も発しない・・・あれだけの威力となると込めた魔力も相当なもんじゃ」
ユートの使った魔法を的確に当て、魔力の消費量も当ててくる
ユートは(只者じゃないなこの人)と思いながら頷く
「なるほどの…国王様が推薦するのも頷けるわい
流石は英雄にして他のSランク者達をも認める人物じゃな」
男性がその言葉を発すると一同にザワザワと騒ぎ立て始める
あいつあの英雄ユートか?
アレックさんとマーキスさんが一緒にパーティ組んだのも・・・
あー!あのグラウディンと戦ったって話か!!
一同が騒ぎ始めると男性は土魔法で地面を揺らし騒ぎを止める
「やかましいわ!もう試験は終了じゃ!儂とユート君以外は教室に戻りなさい」
男性がそう言うと一同はぞろぞろと施設から出ていく
「さて、ユート君はちょっと話があるから学園長室まで来なさい」
ユートは男性に連れられ学園長の部屋まで案内される
「まぁそこに座りなさい。お茶でも飲みながら話そう」
部屋に入り男性はユートにお茶を出す
「では遠慮なく頂きます」
ユートが飲み始めると男性は自己紹介を始める
「儂の名はランダン、この学園長じゃ」
ユートはお茶を喉に詰まらせ咳き込む
「ゴホゴホッ!では今まで審査されていたのは学園長だったんですか?」
「驚いたかの?国王様から直々に推薦状を持ってくる者に他の教師じゃ点数は付けられんからのう
簡単な試験は後ろで見させてもらったわい」
ランダンは髭を触り思い出しながら話す
「あの気配は学園長でしたか…何かいるなとは思ってました」
「ほう、儂の気配に気付くとは…儂のまだまだじゃな」
ランダンは腕を組み頷く
ユートが気配に気付けたのはランダンの魔力が一瞬強く漏れていたため
しかしその後は距離もあってかそこまで感じられなかった
(魔力操作があれだけ上手ければ魔力の抑え方も一流だな)
ユートがそう考えているとランダンは机に用紙とバッチを置く
「ユート君は満点合格じゃ!むしろぶっちぎりでな!!
とりあえずこの用紙にサインをしてくれ。このバッチはエルシュタット学園の学生の証になる」
ユートは用紙にサインをしバッチを手に取る
バッチには大きな盾が描かれており、盾の中心に杖と剣がクロスされているデザインだ
「これでユート君は学園の生徒になる
後日、制服と簡単な説明会があるから忘れず来るように
日取りがわかり次第ギルドに連絡しておこう」
「わかりました。本日は学園長に試験して頂き誠にありがとうございます」
ユートは丁寧な挨拶をし部屋を後にする
「終わったの〜それにしてもユートか…何処ぞであれだけの技術を身につけたもんかの〜?今度の魔帝会議では話し合わんとな」
ランダンはスペースから茶色のローブを取り出しながら呟いた
ユートは学園を後にしたその足でギルドに向かい、マスコットキャラにされていたユエルを回収し自宅に帰る
慣れない料理をし夜ご飯を済ませ後、自分の体とユエルを洗いベットに横たわる
「学園生活か…どんな人達がいるんだろうな」
年甲斐もなくワクワクしながら寝床についた
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