アビスオーガ戦後・・・



「ではユート様お大事に!」


ユートは街の治癒院に来ていた


ユートはアビスオーガとの闘いで意識を失い、三日間寝ていたとアレックから聞かされた


そこから一週間、治癒院に入院しつい先日退院したのだ


たが、無事に退院はしたが、身体を酷使し過ぎた為か、体が思うように動かなくなっていた


(まだまだ本調子じゃないな

気配も魔力も前程感じられない)


ユートは軽く体を動かしながらそう思った







ユートは冒険者ギルドに来た


中に入ると多くの冒険者達に話し掛けられ

ユートは少し苦笑いをして受付に向かった


「アマリさんこんにちは?ギルドマスターがお呼びとの事で来ました」


「はい!お待ちしておりましたユート様!」


「もう様は止めて下さいよ……」


「ブランの英雄が何を言うんですか!ユート様はユート様ですよ!!」


頬を膨らませ尻尾を振るネコ獣人受付嬢のアマリ


「英雄ならアレックさんの方が英雄じゃないの?」


「アレックさんも確かに英雄ですけど、アレックさんが

「僕は殴り飛ばされてだけさ!最後だけ弱ったオーガを倒しただけで、そこまで弱らせたユート君こそ英雄の中の英雄だよ!」ってほぼ毎日至る所で言ってましたよー?」


目をキラキラさせたアマリはそう話す


(だから治癒院でも様を付けられたのか!?

街中でも視線を感じるし・・・くっ!アレックめ!!)


ユートはそう思っていると2階からギルドマスターエストレアがやってきた


「やあ!ユート君!いや、ユート様かな?」


エストは少し笑いながら話し掛ける


「ギルドマスター!冗談はもう止めて早く用件を聞かせて下さい!」


「ふふっ。では私の部屋についてきたまえ!」


「わかりましたよ……」








ギシッ


部屋に着き、エストが椅子に座る


「さて、早速用件を話そうか」


「頼む」


「うむ。ユート君に指名依頼があってね」


「指名依頼?」


「ああ、指名依頼は基本Bランク以上からなんだが、この間の魔物の氾濫でユート君の名前が知れ渡ってね」


「なるほど。だが俺はCランクだぞ?」


「それは分かっている。そこでだ」


エストは机から手紙を取り出す


「これは冒険者ギルド本部への推薦状だ

これを持って王都で昇格試験を受けてもらいたい」


「そんな簡単に受けられるのか?」


「君は銀狼や私達ブラン支部の皆から信頼されている

功績も氾濫の活躍で充分お釣りがくる」


「そうか?まあ王都にはいつか行くつもりだったから問題ない」


「よろしく頼む」


「分かった。それで王都まではどう行くんだ?」


「それはこちらで準備する

出発日は・・・四日後の朝だな」


「了解。帰ったら準備をする

それはそうと、指名依頼の内容は?」


「ああ、商隊の護衛依頼なんだが、ガレット商会を知ってるかな?」


「すぐ近くにあるデカい建物がガレット商会だよな?」


「そう。そこの支店長からのご指名だ

なんでも君を前から知ってるそうだけど」


「ガレット商会に知り合い?」


ユートは考えた


(商人のツテなんてないよな?

……あっ!もしかしてジョーイさんか?)


「もしかしてジョーイさんが支店長?」


ユートはボソッと呟くと


「ああそうだ。ジョーイからのご指名だ

やはり知り合いだったか。あいつも早く目を付けていたって事か」


「一応知り合いだな。この街に来る時に乗せてもらってな

エストも知り合いなのか?」


「私は仕事上の付き合いでな

あいつはブランの商業ギルド支部長でもあるからその腐れ縁だ

なるほど……ユートのあの話に出てきた行商人か」


エストはぶつぶつと何か考えながら話す




「それじゃ俺は帰って出発の準備をする」


そう言って出て行こうとするユートをエストは止めた


「待ってくれ!もう一つ話しがある

氾濫の魔物の話なんだが……」


そう言うとエストは魔物の話を始めた








「なるほど。魔石が無いか…

そして親玉の魔物は【ただの】オーガ

襲ってきた魔物は全部意思がなかったと」


「そのようだ。ダネルが解体して報告してきた

全ての魔物に魔石は無かったとな」


「魔物は魔石が無かったら生きていけないんだろ?なら何故森からブランまで移動出来たんだ?」


「魔石が無くとも多少は生きていられるがな

何故移動出来たか、魔石が無いのかだが、恐らくこれが理由だろう」


エストは机の上に真っ黒な石を置いた


「これが魔石の役割をしていたんだろうと私は考える」


「これは!?あのオーガの胸にもあった石だ!

この石から他の魔力を感じた

俺はこれを砕いたからあのオーガを追い詰められたんだ」


エストは考えながら話す


「うーむ、やはりか。

ティアもその様な事を話していた

すると、やはり元は魔石だった物という事か」


(ティアってあの受付嬢がか!?

確かに何かあるような気配はあったけど

あの人がか……)


ユートは少しびっくりしながらも話しをする


「……誰かが操っている?」


「ユート君もそこに辿り着いたか

私達もその考えをした。だが証拠が無いのでな

その他にも変化、進化した案が出ている」


「なるほど。進化か

確かにそれは有り得るかもな

ただのオーガにしては大き過ぎるし強過ぎるってアレックも言ってたしな」


「そのようだな。素材自体は普通の大きなオーガと普通のワイルドボアだったようだからな

ただあれ程の数が自然に増えるとは考え辛い」



二人の話は夜まで続いた













「今日も疲れたな……」


ユートは宿に着いてベットに寝転がる


(この世界に来てから刺激が多いな

目が見えるのもあるけど、この俺が英雄ねぇ…)






ユートはそのまま深い眠りについた


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