教育試験3



「って事だから責任は自分にあるんだと」


「中々リーダーシップのある人ですね」


ユートは朝からマーキスと昨日の件について話していた


「さすがにお咎め無しにも出来んから一週間街の掃除するようになった」


「それは仕方がないですね」


「それはそうとユートに提案があるんだが」


「はい、なんでしょうか?」


「昨日お前の戦いっぷりを見た新人冒険者達から自分達に指導して欲しいって言われてな」


「俺が全員教えるんですか!?」


「さすがに全員は無理だろ?だから色々と考えたんだが、受験者達で模擬戦を見せて後は各々教えるって事になった!

とりあえずお前だけに行かないように各自の得意武器別に別れて教える事にした」


「なるほど。それなら大丈夫そうですね」


「だろ?ただお前の得意武器は刀だから新人が来ない恐れもあるがな」


「確かにそうですね…」


ちょっとがっかりするユート


「ユートは他に使える武器はないのか?」


「一応使えるのはいくつかあります

槍、棒、剣と後は武器の二つ持ちですね」


「・・・お前かなり芸達者だな」


「そうですか?俺の祖父は武器全般使えたのでそれに比べたらまだまだですよ」


「・・・ユートの祖父に一度教わりたいな」


「はは…もうこの世にはいないのでそれはちょっと無理ですね」


「残念だな。ユートに会ってから戦い方の幅が広がってな

まだまだ上を目指せると思ったんだが」


「マーキスさんは充分強いと思いますが?」


「上には上がいるんだよ。うちのギルドマスターみたいにな」


「そういえば王都のギルドマスターってどういう人なんですか?」


「ああ、あいつは滅多にギルド顔に出さない

基本的には城で王様の護衛を兼ねてるからな」


「そんな凄い人なんですか!?」


「そうだな。昔は俺とあいつ、エストともう一人の四人でパーティを組んで色んな国を旅をしてたんだがな

その後俺達は実力が買われてエストとあいつはギルドマスターになったんだ」


「エストさんとパーティ組んでたんですか!?」


「ああ、俺達のパーティは結構有名だったんだぞ?」


「驚きましたよ!でもなんでマーキスさんはギルドマスターにならなかったんですか?」


「俺はやりたい事があったからな

だが今は夢を叶えてその仕事をしている!」


「夢ですか?」


「おう!王都でパン屋をする!それが俺の夢だったんだ!」


その以外な夢にびっくりするユート


「パン屋ですか!?ちょっと意外でした」


「やっぱりお前もそう思うか

昔の仲間もみんなびっくりしてたがな

でもな、今では王都でちょっと有名なパン屋になったぞ?王様御用達だしな」


王様御用達にさらにびっくりする


「そこまで有名なお店なんですか。今度是非伺わせて頂きます!」


「おう!待ってるぞ!!俺の店はメインストリートにある【夢のはじまり】だ!」


「わかりました!試験が終わったら行きます!」


その後ゆっくり起きてきたクリスを交え、三人で模擬戦の時間まで談笑をした










「それでは模擬戦を始める!

一応周囲には魔道具で防御壁を作ってあるが攻撃魔法は威力を抑えて使うように!」


マーキスの合図で受験者達が二人ずつ前に出る

怪我をしないよう、刃の潰された武器が二人に渡されている


ユートは刀がない為、今回は長剣と短剣の二本持ちで模擬戦を戦う








試合が進み俺の番になる

他の受験者とは力量の違いがある為、ユートの相手はマーキスになった


「また戦える事になるとは嬉しいぞ!」


自前のプレートアーマーで全身を覆いながら喋るマーキス


「本気じゃないですか!!」


「今回は魔法ありだからな!

前みたいに軽い装備だとすぐにやられちまう!」


「はぁそうですか……わかりました」


ユートは呆れながら話す


「じゃあ始めるぞ!!」


審判役の受験者の合図で試合が始まる







「今回は最初から本気で行かせてもらうぞ!」


開始と同時にマーキスは鎧に魔力を流し出す


「ユートはこの鎧について知らないよな?」


「はい。全く知らないです」


「フェアじゃないから先に教えておく

この鎧はミスリルで作られたマジックアーマーだ!魔力を流す事により鎧の強度が上がる!

さらに、この鎧には魔道具が埋め込まれていてな」


「魔道具ですか?」


「まあ見せてやるから魔法を打ち込んでみろ!」


ユートはマーキスにファイアランスを打つ


ボッ


ジュ


するとマーキスの鎧の当たった後すぐに消えてしまった


「わかったか。この鎧にはシャインバリアの魔道具が付いている!さらに!!」



ドォン!



その音の後、マーキスは一瞬でユートの前に現れる


「!?速い!」


「まぁこういう魔道具も足に付いている

コイツはフレアブーストって言う魔法でな

足から小さな爆発を起こして加速する魔法だ!」


マーキスは解説をしながら元の位置に戻る


「説明は終わりだ!そろそろ本番を始めるぞ!!」


「良くわかりました!ありがとうございます!」



その言葉を最後に二人はブーストを使いお互いに前に出る



ギィィーン



マーキスの盾と剣がぶつかる


「マーキスさんが前に出るとはな!」


「お前の戦い方は前に見たからな!

防御に徹しても攻撃出来ないと思ってな!!」



シュッ



マーキスが槍を振る



キィン



ユートは短剣で槍をいなす


「ちっ!予想が外れたか!」


ユートは一旦距離を取る


「逃がさないぞ!」


マーキスはフレアブーストを使い離れるユートに追いつく


「その魔法は厄介だな!」


ユートはウィンドブーストを使い上空に飛ぶ

しかしマーキスも空を飛び、ユートを飛び越える


「マジかよ!!」


「多少なら飛べるんだよ!!」


そしてマーキスは盾を構え、ユートに向けて急降下する




ドン!



ドゴォン!



ユートはまともに当たり地面にぶつかる




「グハッ!!!!」




ユートはゆっくりと立ち上がる


「ゴホッ・・・ブースト使って防御してもこの威力か…」


ユートは体に当たる前にお腹辺りにブーストを集中させていた

しかし、威力は落ちたがそれでも大分威力があった


ドスン


「ほう!それを耐えるか!さすがだな!」


マーキスは降りてきながら驚いた様子で話す


「どうにか耐えられましたよ

全くダメージが無いわけではないですがね」


「それでダメージ無かったら俺は冒険者を辞めてるぞ!」


「そうですね。ではこちらから参ります!」


ユートはマーキスの手前の地面に向けてプロジオンを放つ



ドゴォン!



「目くらましか!」


マーキスの前には砂埃が舞う


ユートは続いてウィンドブラストを放つ


ガンガンガンガンガンガン


「今度は風の刃か!」


マーキスは盾を身を隠す


ユートは脚と腕にブーストを集中させ一瞬で距離を詰める


「読めてるわ!!」


マーキスは盾を構えながらフレアブーストを使い突進してくる





「俺も読んでましたよ」





ユートは足元に小さな爆発を起こし、マーキスの頭上を超えてマーキスの背後を取る


「しまった!」


慌てて後ろに盾を構え直す



「遅い!」



ユートは体を低くしマーキスの盾の下から剣を振る



ギィン!



「ぐっ!まだまだああああ!!」


マーキスは盾を弾き飛ばされながらも槍を突く



フォン!






しかし槍は空振りしマーキスの首筋には剣が当たっていた



「終わりです」


「また完敗か・・・」


「マーキスさんがフレアブーストを見せてくれたのが敗因ですね」


「やはりか…見せたのが失敗だったな

だがいい試合だった!またやろう!」


「はい!俺で良ければ!」


お互いに握手をすると周りから歓声が上がった








その後新人達を振り分け各々指導する

ユートの前には4人の冒険者がいた

その中の一人にリードも入っている


「私は短剣を使います!」


「僕は短剣の二本持ちです!」


「俺は長剣をメインに使ってます!」


次々に得意な武器を話していく


「俺は今長剣を使っていますが将来は刀を使いたいと思っています!」


そう話すリード


「なるほど。でも刀は難しいよ?」


「分かってます!でも昨日、ユートさんの刀を振る姿を見て俺は刀で冒険者を続けたいと思いました!」


リードは興奮しながら話す


「う〜ん、刀を使うのに反対はしないけど

誰かに毎回指導してもらわないと続かないよ?」


「なのでユートさんに教わりたいです!

これからは師匠と呼ばせて頂きます!」


「いやいや、俺はずっと王都にいる訳ではないからそれは難しいよ」


「では王都にいる時だけでも教えて下さい!師匠!」


「師匠って呼び方は変わらないのね・・・まあいる間だけならいいか」


「ありがとうございます師匠!!!!」


涙を流して喜ぶリード

周りからはずるい!私も!と声が上がる


「みんなにもそれぞれの武器の使い方を教えるから喧嘩しないように!」


「「「「はい!!」」」」


ユートはその後1体1の試合や1体4の集団戦をして各自の戦い方を直しながら指導していった







「「「「あっありがとうございました……」」」」


「はい!みんなお疲れ様」


指導が終わると各自、自分達のテントに戻っていった




ユートはテントに戻り食事の準備をしているとクリスも指導が終わりフラフラと戻ってきた


「ただいま〜あーボクはもう疲れたよ」


「クリスおかえり。もうすぐ出来るから待ってて」


「ありがと〜!!そういやユート君の指導は中々厳しいね」


「そうか?」


「だってみんなボロボロになってたじゃん!

だけどユート君は無傷で汗一つかいてないし!」


「あれくらいは子供の頃やってたからな」


「ユート君の師匠って鬼だね……」


「まあ確かに指導は厳しかったけどそのお陰で今の俺がいるからな

生きる為にはあれぐらいやらないと」


「にゃるほど〜ユート君の強さは昔からの積み重ねなんだね!」


「そうだ。その位やらないと生きて行けない環境だったからな……」


遠い目をするユート


「ううっなんて可哀想なユート君……」


「まあ昔の事だから気にすんな

とりあえずご飯が出来たから食べるぞ」


「よおし!今日は食べるぞー!」


ユートはクリスにスープを渡し、二人は食事を始めた



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