学園授業【戦闘学】

カーンカーン


学園中に鐘の音が鳴り響く

授業終わりの合図だ


「ふぅ…」


ユートは授業が終わり教科書をしまいながら息を吐く

中途入学の為、授業に追いつく様に学園から中途入学用の教材を渡されている

毎日予習復習はしていたが一から勉強を始めるには数が多かった


「ユート君なんか疲れてる?」


机の前からひょこっと顔だけを出しクリスが話し掛けてくる

ユートは事情を話すと「あ〜それはそれは」と納得したかの様にコクコクと頷く


「次の授業は戦闘学だから早く行こー!

冒険者の力を見せる時!だよ!」


クリスはにゅふふと怪しく笑いながらユートの腕を引っ張る


「わかったから無理やり引っ張るなって!服破けそうだから!」


クリスはぱっと手を離し「それじゃあ先に行ってるねー」と言ってピューと凄い勢いで走って行った

ユートは「やれやれ、クリスは元気だな」と呟きながらゆっくりとした足取りで練習施設に向かった

少し歩くと先生に怒られて涙目になっているクリスを横目に見ながら…







施設に着くと担任のブレナンが色々準備をしていた

学園の練習施設は大きいのが三つ、小さいのが五つあり各施設には防御用の魔法を展開してある

その為ある程度暴れても壊れる事はない

(ユートは既に一度破壊済み)

ユート達がいる場所は大きい施設

大きい施設はイベントがある時によく使うので観客席や待機室等色々な設備が付いている


ユートが周囲を見渡しているとフラフラ歩いてクリスが入ってきた


「うう…ユート君助けてくれなかった…」


「自業自得だからな。前もあの先生に怒られてなかったか?」


「うん…いつも捕まる…」


ユートは(またやるだろうな…)と思いながらため息を吐く


残りの生徒も次々と施設に入ってくる

全員集まるとブレナンが生徒を一列に並べ説明を始めた


「それでは授業を始めるぞ!

いつも通り自分の得意な武器を使って練習試合をしてもらう

魔法は使用禁止!純粋な技を競う事!

ユートは初めての授業だが実力はギルドで認めているのである程度の技量のある生徒と試合をしてもらうからな!

まずは身体をほぐす為に隣の生徒と軽く流しながら戦うように!名前を呼ばれた順に試合を始めるからな。以上!」


ブレナンの話が終わると生徒達は置いてある木でできた武器を取り練習を始める

ユートは木刀を取りクリスは木槍を取る


「じゃあ軽く流そうか!」


「ああ、よろしく頼む」


ユートとクリスはお互いに武器を構え練習を始めた

だが軽く流すと言っていたクリスは槍がユートに全く当たらなく、全て流されているのを見て少しずつ本気になっていった


「このこのー!」


「なぁなんか速くなってないか?軽く流すんじゃなかったか?」


「だって!まっっっったく当たんないんだもん!」


クリスが本気になってきたのを見てユートはクリスの放つ木槍の先端を刀で受け止める

受け止めた衝撃を流すのにユートは後ろに軽く飛ぶ

木刀を見ると受け止めた場所にヒビが入っていた


「はぁ…クリスが本気で放つから木刀使えなくなったぞ」


「ええええー!!ごっごめんごめん〜

つい冒険者の血が滾ったというかなんというか…」


ハッ!となりクリスはユートにぺこぺこ頭を下げる

ユートは仕方ないなと思いながら新しい木刀を取りにいった


その凄まじいやり合いを目の当たりにした周りの生徒は手を止め固唾を呑んでいた







「やっぱりユートは強いな。さすがAランク冒険者だ!」


ブレナンはニコニコしながらユートを褒めた

ユートは愛想笑いしながら新しい木刀を手に取り元の場所に戻る


「・・・魔法無しであれほど動けるなら学園長が警戒するのも頷ける

実力だけなら学園一位のアイツもユートなら手懐けられそうだな」


ブレナンはユートの背中を見ながら呟いた





時間が経ち練習試合を始める時間になった

生徒達は手を止め名前を呼ばれるのを待つ

最初に呼ばれたのはジュリアとエミリ

どちらも剣と盾を持つスタイルのようだ

数分お互いに打ち合うが中々決め手となる攻撃が出ない

ブレナンから止めの合図が出て試合が終わる


後からクリスに聞いたが二人は魔法の実力はあるものの、武器の使い方には慣れてないらしい


次がルースとメリナだ

ルースは長剣、メリナは大斧を使用

お互いにじりじりと少しずつ近寄っていく

先制したのはメリナだ

メリナの大きく振りかぶって繰り出した一撃により大きな音が施設内に響いた


どうやらメリナは田舎の村から来たらしい

田舎にいた頃家の手伝いで木こりの真似事をして木を伐採していた

その為攻撃=全力の一撃と考えている


だがしかし、メリナの一撃を避け懐に潜り込みメリナの脇腹に剣を振るうルース

メリナは咄嗟に斧を手放し横に動くがルースの追撃によりメリナの首元に剣を当てられ試合が終わる


ルースの家系は先祖から騎士団の団長を務めている侯爵家

現団長はルースの父親であるヴァーノン・ディ・ダンブル侯爵

正義感があり王国に仇なす者には容赦がない

そんな父親に憧れ将来は父親の騎士団に入団するそうだ

世界の英雄や有名な冒険者等に興味がありブランの英雄であるユートにも興味津々


次に呼ばれたのはクリスとクラリッサ

クリスは槍を使いクラリッサは長剣と短剣を使う

ブレナンの合図と同時に勢いよく飛び出したのが意外にもクラリッサの方だ

それを分かっていたようにクリスは後ろに下がりながら槍を放つ

クラリッサもそれに合わせ剣を振り槍をいなしながらクリスに迫る

ある程度距離が縮まるとクラリッサは長剣をクリスに向けて投げ出した

クリスはそれを槍で弾く動きをするとクラリッサはその間に距離を一気に縮めクリスに迫り短剣を突き出し突っ込む

しかしクリスは槍を地面に突き刺し上に軽く飛びクラリッサの突撃をかわした

スピードを殺せずそのままクラリッサは壁にぶつかり「むぅ…無念」と言いパタッと倒れ試合が終わる


クラリッサの身長は小さく同年代の女子から見ても更に小さい

その為筋力もそこまで高くはないが足の速さには自信があった

クラリッサは自分の背の小ささに加えこの足の速さがあれば戦えると考え自分なりに戦い方を試行錯誤し今のスタイルを作ったそうだ




女子生徒の試合が終わり次は男子生徒の試合になる

しかしブレナンから呼ばれたのは


「よし!次は男子の番だ!

しかしユートの力に合わせる生徒がここにはいない

仕方がないから今回はユート対ローグ、セオドア、ジェイス、ウィリーな!」


驚愕の一言だった



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