王城での話し合い


ユートが学園で過ごしている頃、王城のとある一室で話し合いがされていた


「・・・という事じゃ。国王様より話は伺っていたがあれ程とは思わんかったわい」


席に座りながらユートについて語る老人

そう、この老人はエルシュタット学園の学園長にして五帝の一人【土帝】ことランダンだ


ランダンは他の帝達に試験で起きた内容を話していた

帝達は最初は冗談半分で軽く話を聞いていたがランダンの特殊なゴーレムを簡単に倒したと聞いた辺りから皆、食い入るようにランダンを見つめる・・・ただ一人を除き


「マジかよ!あのゴーレムの硬さは俺も知ってるけどよ。あれ倒すのにそこそこ時間かかんぞ?」


興奮しながらランダンに話す炎帝

その話を聞いて他の帝達もコクコクと頷く


「ワタシその子に興味持っちゃったわ〜んふっ」


ガチムチな身体をクネクネさせながら立ち上がり話すこの男が無帝

布面積が少ない下着しか着けていない為、普通の人が見れば気持ち悪いがここに集まる者は見慣れているので気にもとめない


「無帝…その子を襲わないようにね」


「ねっ姉さん〜無帝さんもそこまで非常識じゃないですよぉ〜」


呆れた顔で無帝に釘を刺すのが姉の風帝

わたわたしながら話すのが妹の水帝


「お主はどう思う?天魔よ」


ランダンは部屋奥で腕を組みながら下を向く男、天魔に話を振る

天魔は話を聞いても微動だにせず下を向いていた


「・・・どうも思わん。ただ俺の敵なら容赦はしない」


そう言うと部屋中に殺気は放つ

土帝は冷や汗を流す

炎帝はブルっと身体を震わせる

無帝は頬を赤くし更に身体をクネクネさせる

風帝は息苦しくなり喉を押さえる

水帝は円卓の下に隠れガタガタしている


すると部屋のドアが開き入ってくる男がいた


「また天魔さんですか?そんな簡単に殺気を放たないで下さい

近くの兵士が気絶してますよ」


「ギリアムか…」


王都冒険者ギルドマスターギリアムがため息をつき、水帝の背中を擦りながら話す


「それで今回の話し合いの内容はなんですか?」


「国王様からの推薦で入学したユートについてじゃ」


ギリアムはなるほど。と小さく呟き壁に背もたれる

ギリアムはユートと一度顔を合わせて話している

更にブランからの報告やアレック、マーキスからも話を聞いている為ここにいる帝達よりユートに詳しい

ギリアムは帝達にユートの情報を知っている限り話した


「ふ〜む、なるほどのう。チルチ村から先の足取りが無い

あの先の山を越えると海しかないからの

・・・確かあの近くには神が創った生命樹があるミランジュ大森林があるの」


ランダンは顎の髭を触りながらギリアムに話す


「ええ、昔の資料にはこの世界を創世した際に最初に創られたとされていますね」


ギリアムがそう話すと天魔を除く他の者は皆頭を悩ませる


「まさか神様からの使者じゃないわよね?」


「「「「「・・・」」」」」


風帝の言葉を聞き一同は無言になる


「私から一度ユート君本人に尋ねてみましょう」


ギリアムがそう話すと一同は賛成し次々に部屋を後にする

ギリアムが部屋を出ていくと最後まで部屋に残っていた天魔がぼそっと呟く


「・・・もう田舎で余生過ごしたい…」


天魔は涙目になりながら身体をぷるぷる震わせていた








ユートは入学初日が終わりクリスと一緒にギルドに来ていた

いつも通り可愛く服を着飾っているユエルを引き取りにきたのだったが、ギルドマスターに呼ばれ部屋に案内される


「急に呼び出して申し訳ない」


深々と頭を下げるギリアム


「いえ、ユエルを引き取りに来ただけなので大丈夫です。それで話というのは?」


「話というのはね・・・」


ギリアムは会議で議題に上がった事

帝達がユートに興味がある事を話した


「それで君に一つ確認したい事がある・・・ユート君は神様の使いなのかな?」


ユートは少し驚いたが表情には出さず簡潔に話す


「いえ、俺は神様の使いではないです」


ギリアムはその回答ふむふむ、と考えながら部屋をうろうろする


「ではユート君は何処の出身?君を鍛えた師匠は?

何せ君の足取りがわからないと帝達が騒いでいてね

話せる範囲で構わないから話してくれないかな?」


ユートは少し考え、この国に来た経緯、そして自分の師である祖父の事について話した


「なるほど…ユート君は厳しい環境の中で鍛えられ、師匠が亡くなったのをきっかけに仲間と共にエルシュタット王国に来たと…

だが、途中見知らぬ魔物に襲われ仲間が散り散りになりミランジュ大森林に逃げ込んだ

これで間違いないかい?」


「はい。それで間違いないです

その魔物に襲われた際に頭を強く打ったのかあまり昔の事が思い出せないんです…」


ユートは少し悲しそうな目をしてギリアムに話すとギリアムはユートの肩を掴む


「辛い思いをしたんだね…思い出させて申し訳ない…」


「いえ…なので冒険者をしながら仲間を探してます」


ギリアムはうんうんと頷きながらユートの話しを聞く







「では何かあったら私に相談しなさい

いつでもユート君の力になるよ」


ユートはありがとうございますと返事をし部屋を後にする

ギリアムは部屋の中が静かになると椅子に座り呟く


「神様の使い【では】ないか・・・」

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