第14話 "陰キャぼっち"死地へ向かう(改稿)
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
終礼のチャイムが鳴り響き、今日一日の授業が全て終わりを告げた。
ふぅ……やっと終わったか……。今日はやけに長く感じたな。
昼休みからは特に変わったことはなかった。
転入生から食パンをもらったということ以外には……。
今俺は、ジト目で荷物の整理をして帰る支度をしている。何故、ジト目になっているのかって? 原因は俺の隣の席の転入生だ。
「〜カラオケ〜。〜カラオケ〜」
さっきから、ずっと鼻歌まじりでカラオケを連呼している……。それに、時折"景谷くん"というワードを発するのだからホントにやめてほしい。
「はぁ」と大きなため息がでる。頭を抱えると……
「どうしました? 景谷くん! 具合でも悪いんですか?? 今日のカラオケ行けないですか?」
と少女は迫ってきた。
グイグイ迫ってくるんじゃない………。だから、天然キャラは苦手なんだ……。
「あぁ」
「じゃあ、今日はカラオケに……」
「駄目だよ? 夏目さん。今日は君の歓迎会があるんだ。本人不在にするわけにはいかねぇだろ? だから、カラオケ行きたいならまた今度俺とでも一緒に行こうな!」
ナイスだ。ありがとな、柊。赤城グループの一員の柊が彼女の言葉を遮ってくれた。
その後すぐに、帰る支度をし終わったであろうクラスメイト達が続々と近づいてきた。
「よし! 行こうぜ。夏目さん!!」
「今日はパーティーよ!! 優奈ちゃん!!」
「たのしんでこうぜー!!」
「「「ビャービャービャー」」」
「え……わ、私は」
大勢に囲まれ、皆からあれやこれや言われていた彼女は今朝同様に、目がグルグル回っていた。
ご愁傷様です!(本日2回目)
俺は大勢のクラスメイト達に紛れすっと教室を抜け出す。
いやぁー助かった助かった……。ホッと一息つくが、少し妙だなとも思う。
教室には安藤玲、それから藍川真美、まぁ水壁はいいとして、一番の問題人物赤城がクラスにいなかったからだ。
まぁいいか。考えてもどうしょうもないことだし! とりあえずこの紙によるとフェバリップというカラオケ店に行けばいいんだよな?
そう思い、靴箱へと向かうため階段を降りようとしたわけだが……ふと誰かの話し声が聞こえてきた。
「なんでだよ!!! 真美ちゃん!! 来てくれよ! 頼むぜ。ほんとに。マジで!!」
「ごめんね。ちょっと用事が出来ちゃって! 玲と……ね。これ以上聞きたい??」
「うっ……チッ。分かったよ。真美ちゃん。それにしても、その上目遣い反則だぜ? わかってんのか?」
「何言ってるのか全然わからない」
「超棒読みじゃねぇかよ。。まぁ、わかった。今日の歓迎会、不参加者は水壁と藍川と安藤っと………」
「景谷くんがいるでしょ???」
「あいつは、論外だろ、あんな根暗は……」
「ふぅーん。そっか」
って何してんだよ……俺!!。ちゃっかり、階段で立ち止まって盗み聞きしてしまっていた……。けど、いい事が聞けたぞ。それは、
藍川真美が今日、安藤玲と用事を組んでいたという事である。
これは、つまりカラオケにこの二人が来ないという事を意味する……。
俺は心の中でガッツポーズを決め込み、水壁に謝罪する。
いやぁー。ほんとほんとに申し訳ないな。俺だけ利を得ることになってしまって。取引破棄はなしだったよな! いやぁ。ほんっっとうに申し訳ない(棒)
顔が自然とニヤついてしまった。
すると
「ッチ!!! マジでキメェ」
階段を上ってきた赤城と鉢合わせ俺と目が合うと、こいつはそう言ってきた。
背中に針を通されたかの様にビクッと背筋を伸ばしてしまった。はぁ、情けない。自分に嫌気がさした。
肩をガクッと落とし、テクテク階段を降りていき靴箱にたどり着くとそこには藍川真美がいてこれまた目が合ってしまった。
「あっ。景谷くん!! 早く靴に履き替えてね。玲は今校門で貴方と私を待ってると思うから」
んんんん? 俺を待ってるだって????
おい……ちょっと待て。なんか、悪寒がしてきたぞ……。
「わ、ヮヵッタ」
超ボソっとした小さな声でそう言ったのだが
彼女は、「待ってるから」と靴を履き替えながら言ってダッシュで走っていった。
俺も、超重い足取りの中靴を履き替え校門へと向かう……。
校門を出ると二人の美女がいた。そう。言われた通り……安藤玲それから、藍川真美がその場にいたのだ……。
「あっ。やっときた! 守君! 遅いよ全く!!! 早くカラオケ行きましょ!」
「ふふっ。ホント玲、今日1日ずっと景谷くんの事ばっかね。今は、優奈ちゃんの方に皆食いついてるけど、そのうち……どうするのよ玲?」
「どうもしないよ。もう上っ面な関係はなしにするって決めたから」
「そっか……強いんだね…玲は…
負けられないな……」
「ん? なんか最後の方聞こえかったよ?真美……。まぁ、今はそんなことよりフェバリップに向かはないとね。」
「え、ええ、できるだけ早く向かった方が良さそう。」
唖然としていた俺を置いてけぼりにして勝手に二人で話を展開させ、盛り上がらせた挙句、美女二人は俺を挟んできた。両手に花とはよく言ったものだ……。まさに、今の俺の状況があてはまる……。
こんな美女に挟まれて嬉しく無い男子なんていないだろうよ……。
けどな、俺の場合は話が違う……。
常に周りの視線を気にする様な陰キャのカースト最底辺にとっちゃぁ、嬉しいなんて事はないのさ……。むしろ、皆のヘイト要素を倍増させそうで不安でしか無い……。
「ふふっ。景谷くん。両手に花だね。
今心臓バクバクし・て・る?」
あぁ、してるさ。冷や汗が止まらないほ
どだからな……。
景谷守と美女二人は、着々と目的地へと進んでいくのだった。。
♦︎♢♦︎
早く、早く来てくれよ景谷……。
こっちはもう、準備ができている……。
チャラ男な少年は、すでに、カラオケに到着しているメンバーを見ながらそう思うのだった。
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