第32話 試着室の中にて


今回は、少し短いです!

すいません……次回が長いので………。


♦︎♢♦︎


 里島………離れてくれ………。

 ほんと、頼む……から。


 俺は、里島に必死にそう懇願する。

 鼻腔をくすぐる柑橘類の甘い香りに、

 思わず目にいってしまう、ぷるんとした

妖艶な唇。そして、極めつきの胸からなる

大きな果実。


だ、駄目だ……刺激が強すぎる………。


 里島の体のあらゆるところに目がいってしまう俺は、視界に広がる光景に耐えきれず思いっきし、目を瞑る。


「もうちょっとだけ……我慢して……」


 弱々しい恥ずかしげのある声が耳元で囁かれる。里島は、俺と密着してるのが嫌なのか、体がぷるぷると小刻みに震えていた。


 うんうんと、俺は必死に首を振る。


事情はさっぱりだけど、何かしらの理由があるんだ……ろ……って、ちょい、おい。


 里島の抱きしめ具合が急に強くなる。

俺は思わず、んんっと声を漏らした。


 や、やめてくれ……こ、これ、以上は……。


俺が心の中でそう呟くと、何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。


みつる〜。お前に、絶対この服似合うって! ほら、だからさ。試着室いった、いった〜」


。ほ、本当だろうな

 っておい、背中押すんじゃねぇよ」


男子二人の何気ない会話が聞こえた瞬間、

俺の体がピクリと震えた。


 水壁と、充ってのは、カラオケの時いたやつか……。


なんで、こんなとこに………。


俺は目を瞑りながら、冷や汗をにじませる。


里島との密着がバレたら………。


 そう思うと、ゾッと身震いしてしまう。


なるほど……だからか。


 俺はこの時、里島が急に狭い試着室の中に乗り込んできた理由を悟った。


 水壁に見られたくなかったんだな……

俺と一緒にいるのを……。


 俺の胸に顔を今埋めている里島に、俺はうっすらと半目を開け、視線を向ける。


そして、里島の肩をツンツンと突いた。


里島は、俺が肩を突くと、一瞬こちらをチラッと見て、目が合うと俺の胸に顔を埋めてきた。


今にも涙が垂れそうな里島。

顔は真っ赤で、見られたくないのか、それっきし、俺が肩を叩いても何の反応も示さなかった。


 勘弁してくれ……里島……いや、委員長。

この手をどけてくれ……。


 ギュッと押さえつけられた自分の口元。

鼻は塞がれなかったので、呼吸はできていたが、なんだか不快感があった。


それと、胸も…………。


ほわわんと成熟しきった大きな果実に、

殆どの男子は癒されるというが、そんな男子諸君に俺は言ってやりたい。

癒されやしないぞ……。さっきから、顔が熱くて、なんなら鼻血が出そうだ………。


一体、これいつまで続くんだよ………。


俺は、小さな狭い試着室の天井を見て、

そう心の中で嘆くのだった。


 



 

 

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