第40話 陰キャぼっちのデート②
遊園地のゲートをくぐり抜けた俺たちは今
どのアトラクションに行こうかと思考を巡らせている。
始めは、メリーゴーラーンドあたりがいいだろうか。まぁジェットコースターは論外。
理由? それは、俺がノックダウンしそうだからだ。乗ったことないから分からんけども……。
と思い、「メリーゴーランドにでも」と俺は言おうとするも……
「ねぇ、まず手始めにあそこいかない?? あのジェットコースター!!」
彼女の元気な声でそれは遮られてしまった。それも、乗りたいのがジェットコースターときた。俺を殺したいのか、神の子よ。
「いや、遠慮しておきたいんだが………」
「私、乗りたいなぁ……」
「なら、一人で行ってくれ。俺、待ってるから」
「もう、分かってないなぁ……景谷君は。
こういうのは、二人で行くから意味があるの!」
「俺は素直に乗りたくないんだが………。
けど、二人でいくから意味がある……か。
ちなみにそれは、どうしてだ?」
「そ、それは………その、席の隣が景谷君でないと……どさくさに紛れてち、痴漢とかされそうだから………」
「分かった……今すぐ乗ろう」
「よ、良かった。乗ってくれるのね……」
ホッと胸を撫で下ろす藍川真美。
俺は、その彼女に見惚れそうになり首をブンブンと横に振る。
誇張でも何でもなく、ほんと藍川真美は神の子だ。化粧をしているからか、余計に美に磨きがかかっている。
その彼女の女神の様な美貌を見ると痴漢は確かに考えられそうだ……。
そう思い、俺はジェットコースターに乗ることを即決した。
彼女は、俺の手を引っ張ると、「楽しみだね」と言いながら、ジェットコースターのとこまで走っていく。
俺は、「あぁ……」と引きつった笑みを向けながらも、常に悲鳴が聞こえてくるジェットコースターに目を向けてこう思った。
ジェットコースターに乗るという俺の選択肢は、間違っていないだろうか? と。
結論を言おう。俺が間違っていた。
「だ、大丈夫??? 景谷くん!! 凄くフラフラしてるけど……」
「はは……うっ……I'll be back」
「って……ちょ、ちょっと……た、倒れちゃった…………」
藍川真美にもたれかかる様なかたちで俺の意識はそこで完全にシャットダウンした。
♦︎♢♦︎
「あれ? 景谷と藍川さんはどこ行った?」
ゲートの前で景谷のイケメン振りに困惑していた俺こと水壁忠政は、二人の姿を見失ってしまったため、今あたりを探し回っている。
服装がオシャレで顔も美形のイケメン。
何だよ……あれ。規格外すぎんだろ……。
周りの連中がぽかんと口開けてたの気づいてたかよ……景谷の奴。
「あぁ……もう、これじゃあ計画が台無しになりそうだ……早く見つけないと……」
ちなみに、俺は変装をしてきている。オタクみたいな格好にサングラスとマスクをしてきた。
故に、万が一知り合いがいてもバレることはない……。景谷と藍川さんにも、絶対にバレない。ククッ……だから、早く見つけて動向を探らねぇと。
様々な年齢層が賑わうナットパークで、俺は二人を探し回った。
すると、案外と早く見つけることが出来たので俺は胸をホッと撫で下ろす。
オーラがでまくってんだよ……藍川さん。
無意識にそのオーラだしてるのかは知らないが神々しすぎるな。
「って………」
俺は絶句してしまった。『何だ、あれは』と……。
その理由は………
「美女が膝枕してる……。彼氏の方もイケメンだぁ……尊すぎる……」
「おかあさん、あれやって〜」
「馬鹿みちゃっ……い、いくわよ……」
そう。道行く人々が言うようにあの藍川さんが景谷に膝枕をしていたのだ……。
それに、藍川さんは景谷の頭を時折り撫でてたりもしていた。
「………………ゆ、許せん」
俺は、その様子を見ると踵を返して彼らの動向を遠くから監視するのを決めた。
何で景谷の奴が……あそこまで待遇されなきゃならんのだ……。
神室美沙、安藤玲、そして藍川真美。
何故、イケメンであるこの俺の惚れた女子達が皆、かっさわれないといけないんだ、それもクラスカースト最底辺の景谷に……。
奥歯を噛み締めて、俺は決意した。
景谷……お前の顔を恐怖に染め上げ、藍川さんの目を覚ましてやる………。
最初は、躊躇った。けど、あの景谷と藍川さんのいちゃつきを見るとその躊躇いはどこかへと消え去ってしまった。
「覚悟しろよ……景谷」
俺はそうぼそっと呟いて、物陰へと姿を消していった……。
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あとがき
あと、3、4話あたりですかね。
それで1章は終わります。
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