第26話 陰キャぼっちと里島結女!
チンピラの大男と対峙したのも束の間
だった。
歩道橋の上で、俺を、苦笑いしながら
見つめてきた、チンピラ男は
「すいませんでしたー!!!!」
と言ってすぐに去って行ったのだ。
ゴーケン先生の知人というだけで
これだけの効力……。
おそるまじ…ゴーケン先生。
さて、紙探しを…と言いたいところでは
あるのだが……。
俺は、この場にいたもう一人の人物
に目を向けざるを得なかった。
「こ、腰、抜けたー。
立ち上がれない……。」
チンピラ大男が去った後、
そう言って里島は立ち上がれなくなってしまっていたからだ。
できれば、この場は見なかったことにして
立ち去りたいが…流石にそれは鬼畜だろう。
立ち上がれないでいる様子を見た
俺は、無言で右手を彼女に差し伸べた。
「あ、あんた、
一体、何者なのよ…。」
そう言って俺の手を取った彼女では
あるが、立ち上がった後に
こんな事を言ってきた。
「景谷…今回は助かった。
けど、私、貸しをつくるのが
大嫌いな人間なの!!!
だから、あんたに一個借りを返す。
それで手打ちね!
何でもいいから願いを言いなさい。
私にできる範囲ならなんでも
やってあげるわ。」
「いや、別にいいけど…。
実際、俺何にもやってないし…。」
「そういうことじゃない!!
どちらにしても、あの場に貴方が
来てくれなかったら、
私は、酷い目に遭わされてた。
だから、私は貴方に救われたの!」
確かに、俺がこの場に来たことで
奴が逃げていったのは間違いない事だ。
けど、、実際、俺は何もやってない。
やった事と言えば、今彼女に
手を差し伸べた事くらいだ。
そんな命の恩人です!!!
なんでも、願いを……!!
みたいに言われても、
俺としても困るわけだ。
どうしたものかな…。
困りかねている俺を見て
「あんたの貸し返すまで
私は帰らないから!!!」
と、潤んだ瞳で彼女は
俺に追い討ちをかけるかの様に
俺の制服の裾をがっちし
掴んできた。
うっ。これ帰してくれないパターンじゃん。
なんか、頼み事。
里島結女にやってもらいたい事……。
色々と思案し、
頭の中で出た最適解を俺は彼女にぶつけた。
「なら……紙を…探してくれないか??」
「紙???何のよ。」
「いや、特に重要って訳ではないんだけど
服とか、オシャレ品とか?
書かれてる紙なんだけど…。」
訝しんだ顔を向けた彼女ではあったが
俺が、紙についての内容を言うと
表情を一変させ、目を見開きこう言ってきた。
「何?景谷、あんた
デートでもするわけ?」
「いや、、、」
「誰?相手は???」
そう言い、顔を詰めてきた彼女に
俺は苦笑いしつつ、内心では
顔近い。香水、結構いい匂いだけども…。
デートだと断定して話を進めないでくれ。
まぁ、間違っちゃいないんだけど…。
「ねぇ、誰なの?誰?」
「…………………………。」
「答えてくれないなら
いいわ。もう聞かない。
でも、景谷は誰かとデートすると
思っていていいのね?」
「……………。」
否定出来なかったので
コクリと小さくうなずくと、
満足そうに、ニヤリと口元を緩ませ
彼女は、ある提案をしてきた。
「なら、その紙探す必要なんて
ないわ。
私が、貴方を極力イケメンに近づけて
見せるわ!!」
「は、はぁ。」
目の前の彼女からは
やる気と闘志で満ちあふれている様に感じた。
ビシッと人差し指で指差され
元気溢れる声でそう言われたら
俺は、
何か、変なスイッチを押しちゃったのかも
知れない。。
と思うのも無理はない。
完全に元気を取り戻した
彼女を見て、俺は下を向き大きなため息
をついていた。
顔を上げると、
目の前には、いつの間にか里島の顔があった。
うおっ。と驚き、素の声が出るが
そんなことは気にも止めず、
里島は、
「まず、その髪よ!髪!!
服装なんて後から!!
その目が隠れてる感じ!
それを無くさないと!」
と、言って、俺の前髪を
右手でかき上げてきた。。
俺の目と彼女の目が
ばっちし、合ってしまう…。
そこから、里島はメデューサでも見たか?
とでも言うくらいに固まっていたので、
俺の顔、そんなにやばかったのか…。
と少し、落胆してしまうが
数秒の沈黙の後、
彼女はゴクリと喉を鳴らし
恐る恐るといったかたちで
驚くべき事を口にする。
「何よ…あなた。
すっごいイケメンじゃない…。」と。
「え?」
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