第27話 陰キャぼっちと里島結女②

「 何よ…あなた、すっごい

 イケメンじゃない」


 「え?」


俺の聞き間違いか?

今、里島の口から、

イケメンという言葉が、

聞こえた気がするんだけど…。


俺がイケメン?

いやいやあり得ないだろ…。


そう思うも、

信じられない物を見たと

言わんばかりの

表情を里島は浮かべるので、

俺は一人でこう結論づけた。


あっ。これは、あれだ。

最初の顔(目が髪で隠れている)が

酷すぎたあまりに、、

今の顔(目元がはっきりと見える)が、

錯覚でも起こして、

イケメンにでも見えてるんだ。


うん。そうに違いない…。

ギャップ萌えとかいう言葉を

聞いたことがあるが、

ひょっとするとそれかも知れない。


とにもかくにも…だ。

俺がイケメンなんて事はぜっっっったいに

有り得ない。


あるはずがない………。


そんな風に一人で思いふけっていると


「あれ??

 景谷、これって…。」


と、そう言って、髪質に違和感が

あったのか

かきあげてきた髪の毛を彼女は突然いじくり始めた。


まずい…まずい。と思うも

時すでに遅し…。


「ふふっ。ふふふふっ。

 あんた、ふふっ。これ、

 カツラでしょ…。」


「……………。」


「ふふっ。

 カツラ被って、

あんた学校きてたの?wwww

そんな高校生見た事ないんだけどw」


俺はまだ何も返答してないのに、

彼女はカツラだと決めつけて

一人で腹を抱えて笑っている。


まぁ、間違っちゃいないよ。

カツラだよ????

なんか、文句あるかよ…。


「あー、面白。

 私ん家、両親共に

 美容師だから、小さい頃から

 "髪"に触れてきたのよ。

 地毛とカツラは、見ただけじゃ

 区別できないんだけど、

 触ってみさえすれば

 わかるものなのよ。」


そう言い、涙を人差し指で

拭う彼女の姿は

どこか優美に見えた。


いつも俺を嘲笑っていた笑みとは

違っていたからだ。

 

"からかい"を込めた笑みは、

どこか優しさのあるものだった。


里島…。俺を見る目が明らかに

変わってないか。。。


少し目をそばめて

里島を見ると、

彼女は、俺の手を取って

急に走り出した。


「こうしちゃ

 いられないわ。

 ふふっ。

 こんなにいい素材持ってんだから、

 活かさないと。。

 シャークスバーズに戻るわよ。」


そう張り切って言う彼女に対して

俺は、

「今お金、3000円しか…。」と言うも

彼女はそんな俺を無視して、

お構いなしに速度を上げていく。

俺の手を引っ張りながら。。


いや、、里島…。

人の話を聞けよ。。

何でお前がそんなに

テンション高くなるんだよ。

うぅ。それに、俺の手を

そんなに強く握り込まないでくれ…。


里島…。

お前も美女に入るんだから…。

自覚してくれ…。


手汗が止まらないだろ………。


♦︎♢♦︎


 早く。早く。

 シャークスバーズに。。

 クラスカースト最底辺の景谷…。

 あんたが、そんなイケメンなんて

 思いもしなかったわよ。


 この素顔を知ってるのは私だけなの

 かしら?


 だとしたら………。


 まぁ、水壁君には及ばないと思うけど

 景谷を本気で着飾れば。。。


 クラスで一番オシャレに力を

 入れてると自負する私。

 そして、

 クラス委員長で責任感のある私が

 本気で彼のファッションに気を使えば…。



 あぁ。やばい。

 なんか、私、楽しくなってきちゃった。


 景谷!!

 私があなたをイメチェンさせるわ!!!


 あっ。水壁君。

 安心してね。

 私の一番は貴方だから。

 ただちょっぴりだけ、

 景谷に興味を持っただけだから。


 ふふっ。早くつかないかしら。

 シャークスバーズに…‥‥。


♦︎♢♦︎


景谷守と里島結女が、

シャークスバーズに向かう中、

ただ、一人。

机に向かって、


「藍川真美。景谷から引き剥がす作戦。」


というのをニタニタと悪の笑みを浮かべながら、書き込んでいた男がいた。


景谷。。

僕…じゃなかった。

俺の作戦に穴はない。

女神と一部の男子から呼ばれる

藍川真美とのデートで

お前を確実に失望させる。


クッ。

明後日が楽しみでならんな…。


そう内心で思いながら

ガリガリとペンを走らせる男。


だが、

この男は、

知らなかった。。

自分の計画に誤算があったという事を。

そして、

景谷守と里島結女が繋がりを

持ってしまったということを

この時、この男は、

知らないでいた。。

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