第28話 陰キャぼっちと里島結女③


 「うんうん。

  やっぱり、私の見立て通りね。

  ふふっ。

  かなりのイケメンになったじゃない。」


そう言いまじまじと俺のことを見つめる

里島。

 実のところを言うと、里島だけじゃない。

さっきから、すれ違う度に色んな人から視線を向けられている。


  俺は、冷や汗をかきながら

  一人心の中でこう呟く。


   どうしてこうなった………。


  ・     ・     ・


 あの後、シャークスバーズに到着した

 俺と里島は、三階にある…

(水壁に紹介された)ジュハラムという

 店名の洋服店に来ていた。


 「これも…うん。ありね。

  これはどうかしら?」


 全く乗り気じゃない俺に対して、

 里島は俺の服選びに熱中していた。

 気づけば彼女の手には、何着もの

 (知らんけど)素人目から見ても

 高そうなブランドものがあった。


 俺……3000円とちょっとしか持ってないんだけど…。


   「あ、あのさ。

    俺今、3000…。」


 「まぁ、こんなとこかしらね。

  とりあえず、試着してきて。」


  「いや、ちょ、ちょっと。。」


 「いいから、いいから

  さっ、早く。

  あっ。

  それと、試着後はカツラとってね。」


そう言い、

俺の言うことを聞こうともしない

里島は俺の背中を両手で押しやり

俺を強引に試着室へと追いやった。


おいおい…。

人の話聞けよ。。。

はぁ…。

着るしかないのかよ。。


そう思って、とりあえず服を手に取るも

俺は思わず苦笑いをしてしまう。


服をよく見てみると1着1着が

いかにも水壁が着てそうな

爽やか系の服だったからだ。


ははっ。

これを…俺が…。

いやいや、似合う訳が…。

家ではジャージで過ごす事が多い

人間だぞ…。

不相応にも程があるだろ…。


と、そう思ったのだが………。。


  

    ガラガラガラ


「うん。どれもかしこも

 凄い似合うじゃない!!

 やっぱし、私の目に狂いは

 なかったのよ。」


試着後、カーテンを開け

里島に笑い者にされるはずが

彼女は、何故か

一人でガッツポーズを取り

俺のことをイケメン、イケメンと連呼

してきた。


何枚も何枚も渡された服を着てみるが

どれもこれもが高評価。。

はっきり言って意味不明だった。


これは…きっとあれだ。

錯覚だ。錯覚。

勘違いするなよ…俺。

俺がイケメンなんて、あり得る訳ないんだから。


そう思い、里島にイケメン、イケメンと言われ勘違いしそうになるのを

振り払うため、一人ブルブル首を振っていると


「よし。じゃあ

 これ全部買うわよ。」


と、里島が急にそんな事を言い出した。


 「い、いや……。」


 「どうしたのよ。

  お金足りないの??

  今いくらあるのよ。」


弱気な俺の発言に、訝しんだ視線を向け

里島は、そう言った。


そうだよ。。里島。

最初からそれを聞いてくれよ。


スゥーハーと一回深呼吸をし

はっきりとした口調で俺はこう言った。


 「3000円と少し…。」


 「は、はぁ?????????」


素っ頓狂な声を上げた里島に

店員やら、客やら…の視線が集まる。


おい。。

声でかすぎだろ…。


流石に本人もこの視線に気づいたのか

口元を手で押さえ、

俺に睨みをきかしてくると共に

顔を赤く染めあげた。


「ううぅ……………。」


小動物の鳴き声の様に

弱々しい声で俺を睨みつける彼女。

だが、全くもって怖くはなかった。


「……………………。」


「あ、あんたは

 ここで待ってなさい……。

 服、か、片付けてくるから……」


恥ずかし気に

あたふたと視線を泳がせていた彼女は、

弱々しい口調で無言でいた俺にそう言った。


その姿を見て俺は不覚にも

可愛いと思ってしまった。


『ギャップ萌え』とはよく言ったものだ。

まさしく今の彼女に当てはまる……。


こんな里島の姿を見たのは初めてだった。


クラスでは、委員長を務め、

しっかり者のイメージがあり

気が強い彼女。


だが、今の彼女はどうだろうかーーーー。


里島は、今

俺に試着させた服を一枚、一枚

あたふたとぎこちない様子で

元あった位置に服を戻している。


普段の彼女からは、決して見られない

一面。。


クラスメイトの中だと誰もこんな彼女の姿を

見たことないのではないか…。


いや…貝坂は、知っているのか??


なんて、疑問に思いながら

里島を遠目から見ていると

全ての服を片付け終わったのか。

里島は、俺のとこまで急速に駆け寄ってきた。


やばい…。なんか、される??

そう思い俺は反射的に目を瞑る。

すると、彼女の口からこんな言葉が聞こえてきた。


「もう……許さないわ。

 景谷…。

 来なさい。」


い、嫌だ…。そう言いたかったが

否定の余地はなかった。

 何故なら、彼女はシャークスバーズに

来た時同様、俺の手をしっかりと握ってきたからだ。


 あまりの握る力の強さに、

俺は「痛っ」と声が漏れる


すると、、次の瞬間。


タタタタタタタタ


里島は、俺の手を握りしめたまま

早歩きでどこかへ駆け出した。


どこ行くんだよ……。と

俺が

そう思ったのも束の間だった。


何故なら、連れてこられた場所が

ジュハラム…という洋服店から

そこまで距離が離れてなかったからだ。


俺が彼女に連れてこられた場所…。

それは、三階にあるベンチだった。


こんなとこで…何すんだ?


ただの休息場に連れてこられた事に

俺は不思議でしかなかった。


訝しんだ視線を彼女に向けると

彼女から少し冷たい言葉で一言声がかかる。


 「そこに座りなさい。」

 「……………………。」


ここで否定する必要もなかったので

俺は無言でベンチに腰掛けるも

やはり謎。。


何する気だ????


そう思って

彼女に、視線を向けると

里島は、

俺が腰かけたのをみた途端に

ふぅと一つ息をつき

自分のバッグの中を探り始めた。


数秒の間、

「これじゃなくて…。」

「いや…これでも…。」と、

中々

探し物が見つからないのか、彼女は苦言を

漏らしていた。


俺はその様子を見て、

嫌な予感しかしなかったので、

心の中で、見つからなくていいです。

いや、見つかるな…家にでも

学校にでも…どちらでもいい。

忘れといてくれ。。。


そう懇願するも…虚しくその願いは砕け散る。


「あったわ。。」

目当ての物を発見し

自分の鞄から取り出すと、

彼女は俺のところまで急接近してきた。


彼女の手には、何やら緑色の小さな箱が

一つ。。


座っている俺に対し、彼女は少し前かがみ

の姿勢を取ってきた。


そして、、緑の箱の中から

何かを取り出し、俺の髪を弄り始めた。


「動かないでね。」と言われながら

髪をもみくちゃされるも、

俺は今、思考停止状態に陥っていた。


何故なら…………


目の前には大きく揺れ動く

俺にとっては未開拓の地があったからだ。


彼女が前かがみになったことで、

俺の視線は完全に胸へと追いやられた訳だ。


ボインボインと言わんばかりに揺れ動く

のを見て、俺は思わず目を思っきし瞑る。


さ、里島………。

今、俺の髪を触って何してるのか

知らんが……。早く終えてくれ…。

このままじゃ、俺がおかしくなっちゃいそうだ………。


目開けたらダメ。目開けたらダメ。


そう、何度も自分に言い聞かせていると


「はい…。終わったわよ。」


作業を終えた里島に

そういわれ、俺はゆっくりと目を開ける。


彼女と目が合うと、

里島はふふっと笑顔になり

俺にこう言ってきた。


「はぁ。すっきりしたわ。

 うんうん。

 私の見立て通りね。

 ふふっ。かなりのイケメンになったじゃない。」


  「…??????」


 疑問しか残らなかったが、目の前にいる

里島が、不機嫌じゃなくなったので

俺はホッと胸を撫で下ろした。


良かった。怒ってない…。

怒ってない。。

胸を少しガン見しちゃった事バレてない。


もはや髪の事なんてどうでも良くて

俺は、里島に胸のことを言及される事のみ

を恐れていた。


はぁぁ…。と

安堵感に俺は浸っていると

目の前にいた里島は、

デレンと連絡の入った

スマホを見るなり、

「景谷。私もう、帰らないと行けなくなったから。」と引きつった顔をして、

走り去っていった。


時刻は19時を回ったところだった。

門限に厳しい親なのかもしれないな。


ホッと一つ息をつき、

俺も買い物でもして帰るか……。



そう思って、一階にある

スーパーに行こうと

三階から二階へ

二階から一階へ…と向かったわけだが。

何故だろう……。


さっきから、すれ違う度に色んな人から

視線を感じるんだが……。。


 「「「ざわざわざわざわざわ」」」


俺の方を見ながら、コソコソ話す人…

主に女子が何人もいて、

俺は心の中でこう一人で呟く。。


どうしてこうなった……………。


♦︎♢♦︎


道ゆく人から

視線を向けられている景谷守は

気づいていなかった。。

目を向ける女子の中にこの人物がいたことに。


「えっ。何よ。

 あの男子すっごいイケメンなんだけど。

 あんなに、髪の整え方上手な人

 以外で初めてみた。

 それに、あの男子。

 うちの高校の生徒じゃない。

 ふふっ。話しかけてみよ❤️」


♦︎♢♦︎


さっきからすごい視線を感じる。

パパッと買い物済ませて、

早く家帰ろう………。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『あとがき』

学年末テストが近くなってきたので

投稿頻度が遅くなっています。

すいません。

ですが、その分面白い話を提供できればなと思っています。


それと、レビュー、評価の方を

お願いします🤲(自分のモチベーションに

繋がるので…)


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