第9・5話 神室美沙(改稿)

 私の名前は、神室美沙かむろみさ。男子を、これまで16年間好きになった事はない。気になる人も出来たことはない。


 恋愛漫画をよく見てヒロインの女の子を羨ましがる極普通の金持ち女子。そんな、私にも恋したという程の好感はないが、気になる男の子が今日できた。


 こんな事は初めてだった。


 怖い男の人にナンパされ、ビビっていた私を助けてくれた……地味な男子。その男子は大きくて暖かい手で私の手をとってくれ、私の事を励ましてくれた………。


 途中、物凄く怖いおじさんのとこへ連れて行かれた時は、失神しそうになり、どうしたものかと思ったが、普通にいい人でたすかった。


 帰り道、これが私が彼の事を深く知ろうとしたきっかけだろう。

 彼は、私が強く手を握ったのに嫌な顔ひとつせずに、こちらをチラチラと心配そうに何度か見てきた……。


 それも私を気遣ってか、歩みを私の歩幅に合わせてくれた。こんなに優しいなと感じた男子は…初めてだった。


 だから、私は彼について知りたくなった。

 彼が何年何組の誰なのか……。


 幸いにも、彼は同じ学校……。スーパーで出会った時には一年三組と言っていたがあれは

おそらく嘘だ。


 交友関係もあまりなく、情報網が少ない私ではあるが、一年三組は陽キャ集団クラスというのは知っていた。


 その陽キャ集団クラスに、地味な男子が一人。これは、絶対に有り得ない……。階が違うため、真偽は証明できないが。


 あの時、地味な男子に一年三組と言われた時私は———


『あっ。嘘つかれた。まぁいいや! 有象無象の男子だし!!』とか思って興味ないや、なんて言ったけ。所属するクラスで嘘をつかれたんだ……。名前も適当にはぐらかされるに決まってる。


 なら、無理にでも今日突き止めないと!


「一人じゃ帰れない……」

「貴方の家に連れていって」


 私は今日是が非にでも、彼の家に行こうと思ったのだ。今日別れたら、もう会えない可能性も考えられるからだ。


 せっかく気になる男子ができたんだもん!

私だって、恋愛してみたいんだもん!!!


♦︎♢♦︎


 実を言うと、私の家はこのスーパーから、

かなり近い……。

 もし、彼が私の家までついてきてくれると言ったなら、凄い遠い場所に家があると言って無理にでも、彼の家に行こうとしていた。。


 彼の家に行けば……彼の事を知れる……彼の家が分かれば、いつでも、彼の場所へ行ける……。


 そう。恋愛したい私は必死なのだ。初めてなんだよ、ほんとに……気になる人なんてできたの。


 ここから、私があなたを好きになるのか

はたまた…………。


 ふふっ。やっぱり貴方の事もっと知りたい。


 ———デレンデレンデレンデレン♪


 何だろう。スマホを見て、ゲッとした表情を、彼はしていた。


 すると、私が握っていた手を持ったまま彼はいきなり走り出した。。そして、私は今日一嬉しい言葉を聞く。


「わかった。家まで来てもいい」


 ふふっ。あー。楽しみで楽しみで仕方がない!!! あなたのクラス、名前その他諸々の情報をゲットして、あなたと、ある程度の繋がりを確立する!!!


 そうした時、私は恋する乙女になっているのだろうか。ふふっ。


彼の家、まだなのかな。はやく着くといいな。

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