第10話 波乱!!(改稿)

 はぁはぁはぁはぁはぁ……きつすぎんだろ、あと、二分って……。


 俺こと景谷守は、現在全力疾走で、家へと向かっていた。妹から5分以内に家に帰れとの指示があったため、ダッシュせざるを得なかったわけだ。


 それにしても……これ間に合うか?


 やばいやばいやばいやばい………ゲームが………。


 間に合うか間に合わないかのギリギリのライン……。それぐらいの距離が今の場所から家まであった。


 それに……何故か俺の家まで来ようとするこの小さな女の子は、自宅に帰らなくて大丈夫なのか?? ってか、一人じゃ帰れないとか言っておきながら、さっからめっちゃピンピンしてないか?


まぁ、今はとにかく第一に家に早く帰ること

を優先しよう……。


 などと色々なことを思案しながら、全力疾走を継続する……。


 1分後………。


「や、やっと着いた……」

「えー?? このマンション? ちょっと期待外れだね……」


 うるせぇよ。やっぱし、元気になってんじゃねぇか。

    

 ———ダンダンダンダン


 と、少し古びた階段を急いで駆け上がり俺は302号室の前まで辿り着く。

 鍵を開け、ドアノブに手をかけ、急いで中に入る……。

  

 ま、間に合ったよな?


不安な俺とは裏腹に俺の手を未だに握っている小さな女の子は、「おじゃましまーす!!」と言って呑気な様子だった。俺、家の中に入れるとは言ってないんだが。はぁとため息をつき、視線を上に向けると


「ふぅーーん。クソ根暗兄貴は、幼女と遊んでたんだ。私がはよー帰って来いって言ったのを

無視して……。ふぅーーん……。まぁ、ギリギリだけど間に合ったから今回は許したげる……」


 顔が怖いですよ……亜弥さん。許したげるとか言っておきながら睨むのやめてくんない?……。まぁ、でも間に合ったんだな……。


「悪いけど、私は幼女じゃない!!」


「へぇ、そうなんだ。ごめんね。って!

 あんた、クソ根暗兄貴と手繋いでんじゃん!ははぁーん! なるほど……。ロリコンだったんだ……へぇ……ふぅーん!!」


「…………………」


「って! どうしたのよ!!

 いきなり、倒れんじゃないわよ!」


 やべぇ……意識が。間に合ったという、安堵感そして、今日一日の充実した? というか何というか……。波乱の展開の盛り合わせで、俺の体は、限界を迎えていたようだ。インドアのゲーマーにはちょいときついな。


 し、視界が………。



 それから、何分たったんだろう。いつの間にか、俺はソファの上にいた。まだ、ぼんやりとする視界の中で、声が聞こえる。


「〜〜って肉!!〜〜〜」

「〜〜〜〜守。〜〜〜〜三組!〜〜〜」


 亜弥は肉でも見てんのか?? 女の子は、よくわからんが何か見てるな。亜弥が、ソファまで俺を運んでくれたんだろう。なんだかんだ言っても、優しい一面はあるよな。


 ———ジュージュージュー


 何か、焼いている音がする……。肉のいい匂いだ。今日はほんと疲れたな。俺は今日起きた事を振り返ろうと、ゆっくりと目を瞑る。



「…………スピー。………スピー」


♦︎♢♦︎


「いつまで、寝てんのよ……クソ兄貴! 起きなさいよ!! ロリコン兄貴!」


「ん、んぅ。あ、亜弥か。もうちょっとだけ」


「アホなの?? 何時間寝れば気が済むの! 外見て見なさいよ!」


「そ、外??」


 寝ぼけ眼で、カーテンの方へ視線を向ける。


 ってあれ? なんか光差し込んでんだけど。嫌な予感がしてきた。


「あと、20分以内に行かないと遅刻よ!」


妹のこの台詞……。おかしいな……。俺は夢でも見ているんだろうか。もし、現実なら俺12時間位寝てることになるんだけど……。そんなに、寝た事生まれてこの方一度もないんだが……。


「ゆ、夢だよな」


そう、独り言を言うと亜弥が、目を覚まさせてあげると言ってきて、思いっきしのビンタをしてきた。


 パチンっと甲高い音が鳴り響く。


「いってぇわ!!!! 何すんだ!! 亜弥!!!」

 

「起こしてあげたんでしょ。むしろ、感謝しなさいよ。」

 

 マジで痛かったので、夢じゃないことが分かった。ってやばいな。学校の準備とかしないと、遅刻するぞ、ほんとに……。


 あれこれと頭の中を張り巡らせていると

不意に腹が鳴った。


        

「腹減ったな………」


「はぁ。昨日あんたが買ってきてくれた肉でハンバーグ作ったから……。それでも、食べてれば……。私はもう、学校行くから」 


「おう。わかった」


俺は妹が家を出た後、洗顔したり、シャワー浴びたり、まぁ、その他諸々を高速で済まし

今学校へと、走って向かっている。


 そんな中俺はずっと亜弥の奴ふざけんな。


 と思っていた。なぜかって? 強烈なビンタのせいでビンタの痕が顔についてしまったからだ。これ、学校でまた……なんて言われんだか。ため息がまた漏れる。

それに、髪は何とか乾かせたが、時間に追われ、飯は食えなかった。


 ハンバーグ……食いてぇ。


 頭の中でハンバーグを想起しながら、

俺は全力疾走。うおおおぉぉぉ。雑念を払うんだ!!!!!!


 その勢いのまま、曲がり角を曲がると

ドンと、誰かとぶつかってしまった。


「いってぇぇぇ」


額と額とがぶつかってしまった為俺は額を押さえつける。すると、ぶつかった相手だろうか。

誰かが声をかけてきた。


「いたたた。ごめんなさい」


「うん……こっちも悪かった……」


 そう言い、ぶつかった相手の方へ

視線を向ける。ぶつかった相手は女の子で、俺に飛ばされたのだろう。両手を床につき、股が開いていた。


 見えてるってパンツ……。


 それにしても、俺は呪われてんのか???

 そう、女の子を見た時思ってしまった。何故なら、この女の子は俺と同じ高校の制服を着ていたからである。


 なんか、嫌な予感すんだけど……。


 そう思いつつも、俺は飛ばしてしまった女子に、手を差しのべる。すると、その女の子は俺の手を取って立ち上がり、こう言ってきた。


「あの。ほんとにごめんなさい。

 それで、少しお尋ねしたい事があるのですけれど、華奈峯第一高校ってどこにあるのか

教えてくれませんか?? 私今日、その高校に

転入することになって、道が分からなくなってしまって」

  

 ははっ。なんか、そんな気はしてたんだ。だってさ……、この女の子、食パンをくわえてたんだぜ???


 ほんとに嫌な予感がしてきた。


「わかった。俺、その学校の生徒だから…… 道教えるよ」


「ほんとですか??? ありがとうございます!! 助かります!!!」


 そう言って女の子は俺の横へつき、一緒に走ることになった。


 なぁ。これ、何てギャルゲー?? そう心の中で思いつつ、そして嫌な予感を感じながら、俺は転入生と共に走り出すのだった。

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