第35話 憂鬱な陰キャぼっち

 水壁との話が終わり、俺と水壁は急ぎ足で

里島達のとこまで戻った。


 俺達が戻ってきた時の里島の輝いた顔は、

半端じゃなかった。


 充と何を二人で話したのかは分からないが

 聞かない方がいいのは確かだろう。


「ふぅ……もう時間も時間だし、そろそろ

 解散しない??」


 水壁は、手をパンと叩いて唐突に告げる。

 

 いやいや、待て……水壁。

 俺たちが、戻ってきた途端にそれ言うか

 よ……。


 そう。水壁は、俺と共にお手洗いから

 帰ってきて、席についた途端に「解散しよ

 う」と言い出したのだ。

 

 流石にこれには、里島も目を見開き驚いた表情を浮かべていた。


 充は………うん。里島ばっかり見て、頬が

 緩みっぱなしだった……。


「っということで、充。帰るよ」


「え? も、もう??」


「あぁ、ちょっとな。を頼みたい……」

 

 例の件?? 向こうの事情なのだろうけど

意味深なことを言う水壁。

 

「お、おう。分かった」


 充は水壁の言葉を聞くと、急に真顔になり、そっと席を立ち上がった。


何だよ……妙に気になるな………。

 さっきから、チラチラと水壁の視線を感じ

 るし………。


「それじゃあ、里島さんに景谷くん。

 僕たちは、ここで………」


 水壁は、俺たちにそう言ってウインクを決め込んで、充と共に去っていった。


一体何なんだ……。ほんと、水壁はよく分からん、嵐の様な奴だな………。


♦︎♢♦︎


 現在の時刻は14時30分。

 この後、またオシャレ品を買わされるんだ

ろうか……と思い、向かい合って座ってい

 る里島に視線を送ったんだが———


「ふふっ。水壁君が、私にウインクを………」


 駄目だ……。さっきからずっとこうなのだ。

 

 心の声が漏れっぱなしな里島に俺は「はぁ」と大きなため息しかつけない。


 一体どうしたもんかな。

 いっそのこと、このまま帰ってみようか。


 そう思った俺は席を立ち上がり、そっと

帰ろうとした、その時だった。


「ねぇ、帰ろうとした???」


 ガシッと俺の手首を掴み、里島は場が凍りつく様な声でそう言ってきたのだ。


 俺は里島の方を振り向けずに、ドクンと心臓が跳ねてしまう。


 おいおい、何でそんな冷たい声で言ってくるんだよ……さっきの甘い蕩けた様な「ふふっ」ってのはどこ言ったよ………。


 俺は、冷や汗を滲ませる………。

 な、何をさせられるかたまったもんじゃないからだ………。


「帰ろうとした? と、私は聞いてるんだけど」


「い、いやそんなことは………」


 震え声で俺はそう返す。


 すると、里島は俺の手首を強く引っ張ってきた。


 それにより、里島の方へと自然と顔が向けられてしまう。


 そして、里島はニコッと笑い一言。


「ふふっ………この後、私のしたいこと何か分かるわよね??」


「さ、さぁ………」


「そう………なら、ついて来なさい」


 嫌で嫌で仕方なかったのだが、どうしようもなかった。


  だって、強く手首を握られて拘束されて

 んだから………。


 か、勘弁してくださいよ……神様。


 毎度毎度、思わされることなのだが

何故俺は最近、平穏でゲーム三昧な日常が

送れなくなってしまっているんだろうか……。


 俺は、内心で今日1番大きなため息をつき、

里島の背中を見つめた……。

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