第15話 陽キャ達とカラオケ①(改稿)

「まじで、安藤さんきてんじゃん! みずっちマジナイス」


「それだけじゃねぇぜ!! 女神の藍川さんも来てるぞ!!」


「ささっ。お二人さん!! こちらへ!」


「「えっ。あっ。ちょ、ちょっと!!」」


「あ……あのー」


「…………………」


「でさー。お二人さん!! 今日のカラオケは〜」


帰っていいか? 俺……。無事フェバリップに着けたのはいいんだが、

さっきから、おれの存在は完璧に無視されていた……。扱いひどすぎねぇか??


 皆が席につき、俺は蚊帳の外状態……。俺もどこか適当に座ろうとしたのだが

座ろうにも座る場所がなかった……。


 まじで、帰っていいよな?


 そう思いドアノブに手をかけると、仲間達とケラケラと話をしていた水壁から声がかかる。


「待ってくれ! 景谷くん……。君に帰られては困るんだ……」と。


「で、でも座る場所が、ないし」


俺がそう言うと、水壁は今も楽しく談笑している友達に声をかけた。


「みつる! もうちょっと寄ってくれないか?彼が座れないから」


「えぇー」


 充という男は、俺の方を嫌そうな目で見てきてそう言った。


 いや、お前……。初対面の相手にそりゃねぇだろ……。


「もう一人……美女……くるゴニョゴニョ」


「いいぞ! そこのお前!!! 今、席を用意してやる! よっこらしょっと」


 いやいやいや、さっきと対応変わりすぎでしょ……。何、親指を立てて

笑顔までしてきてんの?


水壁が耳打ちをした瞬間に、急に態度が豹変しやがった……。

一体何言ったんだ?? 水壁の奴。


「ほら! 氷野! 席詰めたから、お前もこっち寄れ!! あいつが

 座れんだろ?」


「ちょっと待って……。今、いいとこだから」


 氷野という女子……。俺も少し気になっていた人物ではあった。何故なら、皆が談笑してる中一人だけずっと読書をしていたからだ……。


誰でも気になるだろ?? そんな光景みてしまったら……。


 彼女を一目見た瞬間、何となくだが俺は悟った。彼女はこちら側の人間だと……。


 ただ、同じ陰キャは陰キャでも決定的に違うとこがあった。


 それは、顔である。藍川、そして安藤にも引けをとらない程の

美女なのだ。氷野という女子は。 


 可愛いという理由だけで……陽キャ達から手厚い待遇を受けているのだろう。


くそっ! やっぱ世の中不公平だ……。


そう思い、拳を強く握りしめていると


「ふぅ。なるほどそうきたか。ここから先は、家で読もうっと」


と、あくびをしてゆっくりと彼女は立ち上がり、席を詰めた……。


「氷野、お前マイペースすぎだ」 


 充がそう少女に睨みを切らしてゴホンと咳払いをする。


「ほ、ほれ。氷野の隣だ……。お前の席は」


「あぁ……」とだけ言って彼女の横へ座る。

 俺が座ったのを確認すると、二人の男から話しかけられていたのを流しつつチラチラとこちらを見てきていた、安藤玲そして、藍川真美が俺に笑顔を向けてきた。


恥ずかしくなってしまい、顔をそらしてしまう。。


 やばいやばいやばいやばいやばいやばい。心臓の鼓動が激しくなっていく。

 ドクドクドクドクと……。


 あんな、美少女二人から天使の様な笑顔を向けられたら、直視できるはずもない。


 俺には眩しすぎる、向こうを振り向けない。


 すると、隣にいた読書好き少女が、俺に小声で耳打ちしてきた。


「あのー。すいません。さっきから、顔を赤くしてこちらを見てますが。

 貴方のような意気地の無いヒョロヒョロした方は私の恋愛対象外なので……すいません」


と、告白したわけでも無いのに勝手に振られてしまった。


 いや、意味不明だわ。どうやったら……そんな解釈になるんだ。

どんだけ自信家なんだ! この子は!! 可愛いからか! くそったれめ。


 それと「はぁぁぁぁ???」と大声で飛び上がりそうになってしまったじゃない、か……。よく、抑えたぞ、俺。


 告白したわけでもないのに、振られたと言うのは少し嫌だったので俺は彼女がいった言葉を否定しようとした。


「君のことが」


「はーーーい!! 集まってくれた皆注目!!! 今日は、合計で11人集まる事になってるから! 一人は遅れてくるっぽい。だから先に歌、歌っちゃおう!!」


と、水壁がマイクを使ってそう言いだしたので俺の言葉は遮られる。


 くそっ。何でこんな時に。しかし、こんなにも人がいるのにあと一人来るんだな……。一体誰だろう……。


景谷守はこの時気づいていなかった。この場に、彼女がいないという事に。


♦︎♢♦︎


 やばいやばいやばい、やばいわ。遅刻しちゃう。景谷君が来るんだもん。

行かないって手はないの。いつも、私をどこかに行こうと誘ってきていた水壁というチャラ男。


 私の事が好きならまだしも……。水壁は、美少女手当たり次第に声をかけてるっぽい。噂だけど……ね。そんな奴、ロクでもない! そう思って今まで、誘いを断り続けていたのだけれど……今回は彼が来る。


 ふふっ、ほんと、楽しみ。


 はぁはぁはぁはぁはぁはぁ。息がきれてきた。

 けど、もうちょっとで着くから! 待っててね! 景谷くん!!!

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