第5話 陰キャぼっち呼び出し!(改稿)

 アンダーさんに裏切られたショックは相当でかく、俺は昨日ほとんど眠れなかった。


 さやねがくれたカツラをつけ、妹とは口も聞けないまま登校し、最悪な気分そして、謎の勘があってか体調も優れていないこの状態で俺は

教室の扉を開ける。


  ———ガラガラ


陽キャ達の冷ややかな目が俺に向けられる。

いつもの日常だ……。


「景谷のやつ今日はなんか特にキモくね?」


「あんな奴が同じクラスメイトって思うのが

 もうなんか嫌だよな!!」

 

 赤城、そして柊……。


 お前らの様に包み隠さず悪口言ってくれる方が清々しいよ。自然に笑みがこぼれた。


「えっ? 何! あいつ今俺らの方見てなんか笑わなかったか?」


「はぁ? 何それ。まじキモいんだけど」

 

 言ってろ、言ってろ……。俺は今眠すぎる。

 赤城や柊、その他の陽キャ集団からの俺に対する悪口を無視して俺は、一番奥の席つまり、俺の席へと足を運ぶ。


 ぐったりと体を机に倒し、眠りにつけそうな状態になったその時だった。


—————ガラガラ


「か、か、景谷くん!!!!!!」


 教室の扉が勢いよく開かれ、一年三組のクラスメイト達は一斉に声の主の方へと振り向く。


 声の主は周りからの声かけや視線を無視して、俺のところまでやってきた。


「な、何してんの? 玲?? そんな陰キャの席へどうして近づくの??」


「汚れるぜー!! 陰キャがうつってしまうぞ〜!」


「ほんと、どうしたよ? 安藤! そんな奴に構ってないで俺と話そうぜ!!」



 一気に教室中がうるさくなった。

 まぁ、俺に対する非難の声がほとんどなんだけど……。


 はぁ。嫌な予感ってのは見事的中したか。

 一番会いたくない、そしてもう関わりたくない人ランキング堂々の一位の安藤玲が、息を切らしながら俺の席の真横にたっている。


「貴方に聞きたいことがあるの!!! 今は時間がないから放課後に……。この紙にかいてある場所に来て!」


 受け取りたくなかったが……クラスメイト達全員の視線が集まっている中で、そんな愚行……。俺にはできなかった。仕方なしに、無言で紙を受け取り、制服のポケットの中に突っ込む。


「「ってえええええええええええええ!」」


「何なんだよ!! あのクソ陰キャに用事って!!」


「安藤? 何かの間違いだろ?」


「玲、本当にどうしちゃったの??」


 教室がより一層騒がしくなり、安藤玲にクラスの皆が言及している中。


 藍川真美。

 彼女だけは何故か俺の方へ視線を向け、目が合うとニッコリと笑ってきた。


 皆この表情でイチコロにされ、彼女の虜になってしまうんだろうな。だけど、今の俺にとってはただただ、気味が悪いなとしか思えなかった。


「おい!! 教えてくれよ! 安藤!! あいつになんかされたのか??」


「あの最低陰キャからなんかされたの?」


「「ビャービャービャー」」


「いや……そんなんじゃなくて。ちょっと聞きたいことがあって」


 ありゃ完全にマスコミに追われる有名人だな。安藤玲……。めっちゃ困ってんじゃん。俺に話しかけたりなんざするからだ……。


 チラッと藍川真美の方へ視線を向けるとまた、彼女と視線があった。今度は手を振ってきた。それも笑顔で。


 なんなんだよ! 一体。今までそんな対応された事ないぞ!!


 カオスな状態の教室は鬼の担任教師が現れるまで続いた。


「うるせぇんだよ! ガキがぁ。テメェら次その話題すんの禁止! もししたら、ぶっ殺す!」


 この鬼担任の一言で、一気に教室が静かになり、いつもの日常へと戻った……。


 ね、ねぇ。先生?


 毎回思うんだけど、俺の事についても怒鳴ってくれていいんだよ……あいつらに。まぁ、相談してない俺がいけないんだが。


 何気ない授業が始まり、俺は睡魔と闘い続けた……進学校であったのでこの学校は7限目まで授業があり、下校時間は基本的には5時で

短縮授業の日は4時になったりもする。


 今日は5時帰りの上に、さらに放課後は………。はぁ。


 あの紙については、すごく端的にかかれてあった。


『今日の放課後、屋上に来て! 普段利用禁止だけど、私は美化委員長だから屋上の鍵を持ってるの。とりあえず来て!!』


 ばっくれて帰ろうか…とも思ったが、そうしたら、次の日が……。考えただけでも恐ろしい。今日でさえあんなにカオスな雰囲気になったんだ。ばっくれたなんて事になったらどんちゃん騒ぎもいいとこになるだろう。面倒事は早く終わらせよう!!!


 7限目の授業を終えた俺は、人目がないのを確認し、コツコツと階段を上がり、屋上へと向かって行った。


 アンダーさん、いや安藤玲……。俺になんの用があるのかは分からないが……もう、彼女とはこれを持って最後にする。目頭が熱くなり、涙が出そうになるのを堪えながらも、屋上へと着々と近づいていった。


♦︎♢♦︎


「ふぅ。人を避けて、逃げてここまで来るのにほんとに苦労したなぁ。景谷くん……。私は……クレードを見つけ出しあなたを助ける!! だから、待ってて!!」


 安藤玲は屋上に一足先につき、これからの誓いを夕日に向かって宣言するのだった。


 だがしかし、屋上の陰に少女が一人いるのを安藤玲は知らない……。


「ふふっ。なんか、ほんとに面白い事になってるな〜玲ごめんね。覗き見なんて趣味が悪いと思うよ。けどね! 本当にこれは目が離せないんだ〜。だって〜私が大好きな

か・げ・た・に・君が関わってんだもん!」



「あれ? なんか悪寒が……。気のせいか」


 彼もまた知らない。今から向かう場に、

安藤玲以外の少女がいることを。


 そして。これからさき、自分の日常が変わっていくということも、この時の彼はそう知る余地もなかったのだ。

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